米ドル/円がマーケットを撹乱。今年前半の市場のテーマであった「円売り」は沈静化
みなさん、こんにちは。
8月5日(月)の日経平均の大暴落を経験した主要通貨は不安定に推移しています。
主要通貨の中で、もっとも不安定に推移しているのが米ドル/円です。
新NISAによる円売りやデジタル赤字などを材料に、今年(2024年)の米ドル/円は年初から急騰。
一時20円以上暴騰し162.00円近くまで駆け上がりましたが、政府・日銀の介入をきっかけに今週(9月9日~)、140円台後半まで急落しています。
今年の米ドル/円のオープニングは140.92円。昨晩の米ドル/円は一時140.70円まで急落していますので、年初からの上昇をすべて失った形で急失速。
(出所:TradingView)
今年の前半、マーケットのテーマは「円売り」でした。
通常、米ドル/円という通貨ペアをトレードしない市場参加者も、米ドル/円相場に次々と参戦。
4月末、米ドル/円が160円台に到達した局面では、「円弱体化」や「沈みゆくかつての先進国」などと日本経済の弱体化を指摘する報道にも煽られ、155~160円という円安レベルで多くの参加者が円を売りまくる展開となり、まさに「円売り」というのは相場のテーマとなっていました。
その後、政府・日銀のサプライズ介入に加え、日米金利差の急速な縮小も予想され、あっさり年初のレベルに戻ってしまった米ドル/円相場。
この先はさらなる日米金利差の縮小が予想されているため、今年の前半、マーケットを席巻した「円売り」というテーマは、マーケットの主流から遠ざかりそう。
ユーロ/米ドルはドイツ自動車産業の失速で上値が重い。米連続利下げが予想されているのに反落していることに注目
では、次のマーケットのテーマはなにか?
今月(9月)に入り、ドイツの自動車産業の失速の報道が目立ってきました。
まず、フォルクスワーゲン(VW)。
ドイツ自動車メーカーの危機が深まっている。フォルクスワーゲン(VW)はコスト削減の取り組みの一環として、国内労働者向けの雇用保障協定を破棄する。
VWは、2029年までの雇用を保障していた30年来の協定に関連するいくつかの合意を取り消したと明らかにした。雇用保障は事実上、来年半ばまでに打ち切られることになる。ドイツの高い技術力の代名詞とも評される同社での雇用保障打ち切りは、欧州最大の経済大国である同国の競争力がいかに失われているかを浮き彫りにする。
(出所:Bloomberg)
一方、BMWも通期業績予想の下方修正を強いられています。
報道によれば、自動車部品メーカーのコンチネンタルが供給したブレーキシステムの欠陥で、約150万台がリコールや納車停止を余儀なくされたとされています。
こうしたドイツの失速も影響して、今月になってユーロ/米ドルの上値が重い展開。
来週、9月18日(水)からいよいよ、FRB(米連邦準備制度理事会)
の連続利下げが予定されているにもかかわらず、ユーロ/米ドルでは米ドル売りでなく、じりじりと米ドル買いが進んで、1.1000ドルまで値を下げています。
ユーロ/米ドルはまだまだ1.1000~1.1200ドルの狭いレンジでの推移が続いているだけともいえますが、FRBの連続利下げが予想されているにもかかわらず、反落していることに注目しています。
(出所:TradingView)
米連続利下げは米ドル/円の売り材料。欧連続利下げとドイツ経済失速はユーロ/米ドルの上値を抑え、ユーロ/円の下値余地拡大に注目
米ドル/円は162.00円レベルから20円以上急落している展開のなか、ユーロ/米ドルも上値が重いため、ユーロ/円はじわじわ値を下げる展開。
FRBは10年債利回りをコントロールできませんが、2年債利回りなど短期金利は政策金利である程度コントロールできます。
米短期金利が下がれば、連動性の高い米ドル/円は下落傾向。
米10年債利回りがあまり下がらないことに加え、ECBの連続利下げが予定されているため、ユーロ/米ドルも重い。
このような状況下、マーケットの注目は、米ドル/円からユーロ/円へと移行してきています。
ユーロ/円は7月の高値である175.43円から、わずか2カ月で約20円急落しているため、短期ではショートカバーで幾分値を上げる公算が高まっています。
ただ、9月18日(水)からいよいよ始まるFRBの連続利下げは米ドル/円の売り材料。
そして、本日、9月12日(木)から予定されているECB(欧州中央銀行)の連続利下げは、ユーロ/米ドルの上値を抑えます。
前述のように、ドイツ経済が失速気味なのも懸念され、ユーロ/円の下値余地が拡大していることに注目です。
(出所:TradingView)
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