トランプ米大統領がウクライナ停戦に向けてプーチン大統領と電話会談したと伝わり、投資家心理が改善
西原宏一(以下、トレーダー西原) 叶内文子(以下、MC叶内)みなさん、こんにちは。
トレーダー西原 昨年末(2024年末)から、トランプ2.0というのは「暗号通貨高、株高、米ドル高、原油安」と言われていました。
当然、マーケットのコンセンサスは、ユーロ/米ドルではパリティ(1ユーロ=1.00ドル)割れ。 ゴールドマン・サックスのユーロ/米ドルの予測は0.97ドルに変わってきました。
ところが、主要通貨に対して年初からじわじわと米ドル安が進んでいます。
今週(2月17日~)はこのあたりにフォーカスしようと考えています。
ではまず、先週(2月10日~)の株式市場を振り返りましょうか?
MC叶内 米国株、S&P500は前週末比1.5%上昇し、最高値圏で終えました。
メタが20日続伸、アップルが5日続伸するなどハイテク株が強く、ナスダック総合指数は2.6%高、ナスダック100は最高値更新です。一方、NYダウは0.5%高にとどまっています。
米国のCPI(消費者物価指数)、PPI(卸売物価指数)ともに予想比で上振れした一方、小売売上高が予想外の減少、トランプ米大統領が相互関税を発表するなど、株式市場にとって悪い材料も多かったのですが、パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長の議会証言は無難に通過した印象でしょうか。
西原さん、利下げの織り込み度はいかがですか?
トレーダー西原 金利スワップ市場でのFRBの利下げ織り込み度は、9月ごろまでに1回の利下げという程度に下がってきました。
あと1回程度の利下げしか織り込んでいなければ、米金利は高止まりとなり、米ドル高に寄与するはずですが…この点については後で取り上げますね。
MC叶内 はい、わかりました。
一方、相場を支えたのは決算銘柄への評価です。また、PPIの中身は悪くない、関税発動はすぐではなかったなど、良いところ探しのような動きもありました。
日経平均は前週末比362円(0.9%)高の3万9149円と、3週ぶりに上昇しました。
引き続きトランプ政権の関税政策に対する警戒感がありますが、円安方向に振れたことで先物に買いが入ったような雰囲気もあり、SQ(特別清算指数)に向けて買われ、3万9500円台をつける場面もありました。
また、トランプ米大統領がウクライナ停戦に向けてプーチン大統領と電話会談したと伝わり、投資家心理が改善しました。週末は反落しましたが、週間では前週末比プラスを維持しました。
なお、ミュンヘン安全保障会議がドイツで始まり、米国とウクライナはそれぞれの主張を繰り広げています。バンス米副大統領は、異例の欧州批判を行い「脅威はロシアではない」と主張しました。
為替市場はいかがでしたか。
米ドル/円は150〜155円、ユーロ/米ドルは1.01〜1.06ドルのレンジで神経質に乱高下。トレードするには難しい相場
トレーダー西原 先週の為替市場も神経質に乱高下する展開で、マーケットはちょっと疲弊気味。
まず、マーケットのテーマを確認してみましょう。
マーケットの最大のテーマはトランプ2.0。トランプ政権は公約どおり、関税もウクライナ停戦も進めているのですが、関税にサインはするも延長という予期せぬ報道が飛び出し、いきなりマーケットは混乱。
つまり、現時点の為替は乱高下するばかりで、方向性が定まらず難しい。
先週はベッセント米財務長官が「トランプ政権下では10年債利回りが低下傾向をたどる」とコメント。これは米ドル安要因。
ただ、ベッセント米財務長官は、米国はトランプ米大統領の下でも「強い米ドル」政策を続けると表明。
「強い米ドル政策はトランプ大統領によって完全に維持されている」「われわれは米ドルが強いことを望んでいる。われわれが望まないのは他の国が自国の通貨を弱くすることや、貿易を操作することだ」とBloombergのインタビューでコメントしています。
これで、トランプ2.0の通貨政策に対する見方は分かれてきています。
一方、前述のように、米金利は高止まり。これは米ドル/円にとってポジティブ。
同時に日銀の早期利上げ観測も台頭。これは円高要因なので、 米ドル/円もレンジ内で神経質に乱高下しているのみ。
さらには相互関税の話もでており、これが為替に及ぼす影響も各国でばらばら。
こうした状況下で主要通貨ペア、例えば米ドル/円は150〜155円でのレンジ。ユーロ/米ドルは1.01〜1.06ドルのレンジで神経質に乱高下しています。
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(出所:TradingView)
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(出所:TradingView)
こうしたレンジ相場の解説は簡単なのですが、トレードするには難しい相場となっています。
ユーロ/米ドルや米ドル/円での米ドルの押し目を辛抱強く待つことがポイントに
MC叶内 トランプ2.0は「暗号通貨高、株高、米ドル高、原油安」。その米ドル高はどうなってしまったのでしょうか?
トレーダー西原 以下は、年初来の主要通貨の対米ドルの騰落率ですが、年初来の米ドルは主要通貨に対して、小幅ですが下落しています.
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つまり、米ドル安。これはトランプ2.0において期待された米ドル高の流れになっていません。
その要因はユーロ/米ドルにあります。2025年のユーロ/米ドルはパリティを割り込んでいくというマーケットのコンセンサスで始まりました。
ただ、トランプ政権はウクライナ紛争を停戦させるとも宣言しています。
実際にウクライナが停戦になれば、ユーロ/スイスフランは大きく値を上げるでしょうから、ユーロ/米ドルもいったん上昇せざるを得ない。
先週は、ウクライナ侵攻の終結に向けてプーチン大統領と電話会談したなどの報道を受けて、一時ユーロ/スイスフランが上昇しています。
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(出所:TradingView)
ユーロ/米ドルにもポジティブ要因となり、小幅に米ドル安に推移しています。
現在のユーロ圏を取り巻く環境は以下の課題を抱えており、中期的にはユーロ/米ドルはパリティに向かうというトレンドは変わらないと考えています。
★ユーロ圏を取り巻く環境の課題
①ドイツを中心とした経済減速
②地政学的リスクの継続
③ECBによる追加金融緩和の可能性
短期的には、ウクライナ停戦の可能性が「②地政学的リスクの継続」という悪材料が後退することになり、ユーロ/米ドルはもう一段、値を上げる可能性があると考えています。
結果、メイントレンドの米ドル高は変りませんが、ウクライナ停戦の可能性や、関税の実施や延長など不確定要素が多いため、再び米ドル高トレンドに戻るのはもう少し時間がかかりそうです。
調整を狙って、ユーロ/米ドルや米ドル/円での米ドルの押し目を辛抱強く待つことがポイントになりそうです。
ユーロクロス(ユーロと米ドル以外の通貨との通貨ペア)ではウクライナ停戦の可能性がさらに高まるようだと、ユーロスイスの動向に注目です。
トレーダー西原 MC叶内 では、今週(2月17日~)も株式と為替のトレーディングを楽しんで参りましょう。
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