先週末の海外市場でドル円は、欧州市場序盤に一時153.67円と日通し高値を付けたものの、1月米消費者物価指数(CPI)が予想を下回ったことが分かると、152.60円まで弱含んだ。ユーロドルは1.18ドル半ばから後半の狭いレンジ内で上下する展開となった。
本日の東京時間のドル円は、依然として「高市トレード」による円売りバイアスが意識されるが、自民党圧勝を受けて財政規律が維持されるとの見方も浮上しており、思惑は一枚岩ではない。加えて、米国離れの潮流を背景としたドル売り圧力も根強く、戻り局面では上値の重さが意識される展開が続きそうだ。
先週序盤は、衆議院選挙での自民党圧勝を受け、「高市トレード」再加速との見方が支配的だった。実際、9日のオセアニア市場では円安が先行した。しかし、その後は流れが一変。円の買い戻しが優勢となり、ドル円は5日続落となった。足元では、自民党の圧勝により高市首相が野党の要求に配慮する必要が薄れ、結果として財政規律が維持されるとの見方が浮上。これが円買いの背景と説明されている。もっとも、週初にはそうした解釈はほぼ聞かれず、後講釈の色彩も否めない。材料が乏しい中で円買いが進み、後から理屈が整えられている側面もある。ただし、理由はどうあれ、円ショートの巻き戻し圧力が強まっているのは事実だ。再び「高市トレード」による円売りが本格化するかどうかは、今週18日から始まる臨時国会の議論や政策スタンスの具体化次第。相場は次の確信材料を待っている。
その臨時国会を巡っては、メディアの間で、自民党が圧勝したことを背景に予算委員会における野党の質問時間を削減する案が浮上していると報じられている。仮に十分な審議を経ずに予算案や関連法案が通過するような展開となれば、高市政権が掲げる積極財政の具体的な財源や持続性について、市場が納得できる説明がなされないまま進む可能性もある。とりわけ、飲食料品に対する消費減税を含む政策の全体像は、6月に予定される国民会議の中間取りまとめ、あるいは8月に示される見通しの「骨太の方針」まで明確にならない可能性が高い。政策の輪郭が見えるまで時間を要するとなれば、円相場は思惑主導の振れやすい展開が続くことになりそうだ。
一方、本日は米国市場が休場となる中でも、ワシントン発の政治リスクには目を向けておく必要がある。足元で意識されているのは、トランプ米大統領の共和党内における求心力の低下だ。先週は下院共和党議員6人が対カナダ関税撤回に賛成票を投じ、政権方針に公然と異を唱えた。さらに一部の共和党上院議員は、パウエルFRB議長に関する捜査が終わるまでは、FRBの独立性を守る観点から、新FRB議長に指名されたウォーシュ氏の信認を保留する姿勢を示している。
加えて、ラトニック商務長官やボンディ司法長官らが公聴会で虚偽発言を行ったとの指摘もあり、政権内部の混迷も深まりつつある。エプスタイン事件を巡っては、英国政権が窮地に立たされているほか、米大手金融機関の幹部やドバイDPワールドのCEOが辞任に追い込まれるなど、関与が疑われる要人の「退場」が相次ぐ。波紋はなお広がっており、トランプ政権にとっても看過できない状況となりつつある。こうした中で政権運営の軌道修正がなされなければ、米国内の分断は一段と深刻化し、政治的不確実性は長期化しかねない。結果として、対米エクスポージャーを縮小する動きが強まり、「米国離れ」がドルの重石として意識される展開も想定されよう。
本日は本邦10−12月期実質GDP・速報値が公表される。前年比は前回の▲2.3%から+1.6%へと持ち直す見通しで、景気の底入れを確認できるかが焦点となる。先週には、高市首相の経済ブレーンの一人である本田元内閣官房参与が「次の利上げ前に昨年12月の利上げ効果を検証すべきで、3月など早期の追加利上げは考えにくい」との見解を示した。もっとも、本日のGDP、そして今週20日に発表される1月全国CPIの結果次第では、日銀の政策パスに対する市場の織り込みが修正される可能性もある。
加えて、本日夕刻には高市早苗首相と植田和男日銀総裁の会談が予定されている。日銀の金融政策は近年、政治との距離感がより意識される局面が増えている。圧勝した高市政権が日銀にどのようなスタンスを求めるのか、そのヒントは、会談後の発言やニュアンスから読み解く必要がありそうだ。
一方、外部環境にも注意が必要だ。本日から中国は春節で休場、米国はプレジデンツデー、カナダもファミリーデーで休場となる。欧州時間後半以降は主要市場がほぼ不在となり、流動性は通常以上に低下する公算が大きい。薄商いの中では、思わぬ値振れにも警戒が必要だ。
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