先週末の海外市場でドル円は、原油先物価格が下落するにつれて売られる場面もあったが、ウォラー米連邦準備理事会(FRB)理事が「利下げバイアスの完全な撤廃を支持」などと発言すると159.23円まで上昇した。ユーロドルはウォラーFRB理事のタカ派発言で米長期金利が上昇すると一時1.1588ドルと日通し安値を付けたが、原油安の影響もあり1.16ドル台まで戻した。
本日早朝のオセアニア市場では、米・イラン協議の進展期待が高まっていることで、これまで進んでいたドル買いの巻き戻しが優勢になっている。本日の東京市場でも、両国の交渉の行方を見定めながらの展開になるだろう。また、本日は香港市場が仏誕節の振替休日となるほか、英国がスプリング・バンク・ホリデー、米国市場もメモリアルデーで休場ということもあり、市場流動性の低下が予想される。そのため、突発的に値幅を伴った動きとなる可能性にも警戒が必要だ。更に、円安が進行した場合には、市場流動性の薄さを背景に政府・日銀による介入効果が高まりやすくなることで、為替介入への警戒感も強まりそうだ。
週末23日にトランプ米大統領が、「イランとの合意に向けた交渉がほぼ終わり、最終段階にある」とSNSで発表したことは、否が応でも協議進展への期待感を高める内容だった。しかしながら、24日(日本時間25日未明)には、トランプ大統領はイランとの戦争終結やホルムズ海峡の再開に向けた協議は進展していると述べた一方で、交渉チームに対し、性急な合意に踏み切らないよう促している。これまでもトランプ大統領の発言は、実態を伴わないケースが少なくなく、具体的な交渉内容もほとんど伝わっていない。また、イラン側から目立った反応が見られていないことを踏まえると、突然これまでの発言を覆し、再びイランへの攻撃姿勢を強めるリスクがあることも念頭に置いておきたい。
また、先週はWTI原油先物価格の上値が抑えられたものの、全米自動車協会(AAA) が公表している米国内のレギュラーガソリン価格平均値は、先週末時点でも1ガロン=4.5ドルを超える高水準が続いている。一般的に、同水準は米消費者の負担感が強まる高水準とされており、今回の交渉進展発言についても、原油価格の高騰やインフレ期待の上昇を抑え込むことを意識したスムージング的な発言だった可能性もあるだろう。
更に、合意に向けた内容についても、米国とイランの間では濃縮ウラン備蓄やホルムズ海峡の通行料といった大枠の問題から、一方的な攻撃に対する補償問題まで、依然として大きな隔たりが存在している。最終合意に至るまでにはなお時間を要する可能性が高く、一筋縄ではいかないだろう。なお、皮肉なことに、昨年5月のメモリアルデー前後にも、トランプ大統領はイランとの核交渉について「非常に良い話し合いができた」と述べていた。
為替介入に関しては、4月後半に実施された今年1回目の円買い介入から、1カ月もたたないうちに効果がほぼ薄れてきている。高市政権の補正予算による財政拡大路線が意識される中では、投機筋が円を積極的に買い進める材料は限られ、ファンダメンタルズに沿った円売り圧力が続くことはある程度避けがたい状況だ。しかし、4月後半に実施された介入効果が短期間で打ち消されたことは、為替当局としても避けたいところだろう。本日は香港、英国、米国市場が休場となることで、市場流動性の悪化が見込まれる。そのため、このタイミングを狙って円買い介入を実施すれば、通常以上に円買い効果が高まる可能性もあり、東京市場の動向が注目される。
また、円安基調が続く中で、次の焦点として注目されるのは、6月の金融政策決定会合に向けた日銀の動向だ。6月利上げ観測が高まる中、先週行われた高市首相と植田日銀総裁の会談にも市場の関心が集まっている。
実際、高市・植田体制発足後、昨年11月中旬に行われた初会談については、市場では12月利上げに向けた環境整備につながったとの見方が広がり、その後、日銀は12月に利上げを実施した。一方、今年2月中旬の会談時には、同日に10−12月期GDP速報値が発表されたことで景気や追加利上げ観測が市場テーマとなっていた。しかし、その後は「高市首相が追加利上げに難色を示した」との報道や分析が市場で広がり、結果的に3月利上げは見送られた。
そして、先週22日に行われた直近の会談では、高市首相は「物価高対策や成長投資を理解した上で、日銀として適切な政策を実行してほしい」と要請したと伝わっている。もっとも、政府側の本音や意向については、今後の日銀関係者の発言などを通じて徐々に表面化していくことになるだろう。
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