昨日の海外相場では、株価が多少の反転を示した。まあ、大きな下げの後の自律反発といったところだろう。株価上昇のきっかけになったのは、イタリアの短期債の入札であった。いつものパターンで入札が無事に終了すれば、それで資金繰りは何とかなったということで、安心感からユーロが買われて、次いでリスクテークに進むというものだ。私はユーロドルの1.35台や1.36台ではとてもブルになれず、欧州時間ではまったく手が出なかった。どうせならばニューヨーク市場まで待ってみようという感じだ。
しかし欧州の情勢はかなり厳しそうだ。無事に通過したということで反発のきっかけになったイタリアの1年ものの短期債だが、落札された利回りが6.087%であった。ECBが前回に利下げを行ったなかで6%越えをいうのもすごいが、前回の入札の時は3%台であったことと比較すると、その上昇の激しさは一目瞭然だ。単に入札が済んだからといって、そこからリスクテークに励んでいってもよいという情勢にはないというのも明らかだと思う。
そもそもまだユーロドルをショートにしたくなる理由は山ほどもある。まずは直近のECBのアクションだが、インフレの傾向が見えないことを理由にしているが、なんといっても景気重視型の利下げであったことは言うまでもない。ユーロ圏は大幅に来年度の成長率も下方修正している。ともかくこれで当面の利上げ期待は完全に払しょくされてしまい、金利の方面からはユーロの買いの魅力は減退した。
第二に日銀のドル買い介入である。これは直接にはユーロドルには介在していないが、マーケットからドルがその分だけ吸い上げられたことには変わりがない。そのドル不足が回りまわってユーロドルにも間接的な影響を与えていると言わねばならない。これは介入のあった当日にいきなりユーロドルが下落を始めたことからも確かめられる。
そしてテクニカル面だ。10月31日の介入以降のユーロドルの下げはすでに700ポイント以上に及んでおり、この間に買ってしまった、もしくは買わされてしまったポジションの整理は一朝一夕にはいかないだろう。たとえそれがオプションのようなデルタヘッジの場合でも同様で、次回に相場がラリーしていっても、目先の相場を重くする要因になることには変わりがない。
そして最後にユーロが安くなると、どうしてもクロス円も下落してしまう、マーケット全体がリスク回避に向かうということである。株安が進めば、その分だけさらにユーロ売りを誘ってしまう形となる。
そういうわけでユーロの戻りを期待してニューヨーク相場を迎えたのだが、欧州の信用不安が薄くなったということを材料にリスクテークが進んで、株高とユーロ買いが進んでいった。ユーロドルも1.36台のミドルまで上がってきたが、まだ身体が夏時間モードになっているせいか、とても眠い。ポジションを作れずに翌朝を迎えてしまった。ユーロドルは1.35台に逆戻りしていた。
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