■ドル高、円高に対する修正局面はまだ終っていないとみる
次にユーロ/米ドルに関しては、以下のチャートをご覧いただきたい。
要するに、2012年1月安値から2月高値までの上昇幅は約900pipsだったから、その1.382倍(※)に相当する下げ幅をもって、ユーロは2月高値を起点とした下落変動を一服させる公算が高かった。
(※編集部注:「1.382倍」とは先ほど出てきた「フィボナッチ・リトレースメント」の38.2%に100%を足した数字)
(出所:米国FXCM)
ましてや、CFTC(全米先物取引委員会)統計によるIMM(国際通貨先物市場)のユーロショートポジション(ユーロ売りポジション)が史上最高レベルの20万枚を超えていた状況では、いくらギリシャ、スペイン危機が深刻だといっても、スピード調整なしで下げ続けるのは難しかったと思う。
その他の外貨(豪ドル、英ポンド)も基本的には同じ構造下にあり、米ドル/円の底打ちと相まって、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)相場全体の切り返しも当然の結果となっている。
そして、これらの動きが、米国株式市場が落ち着きを取り戻すのに先行していたことも見逃せないポイントだ。
では、これからはどうなるだろう?
6月7日(木)にバーナンキ議長がQE3の可能性を示唆しなかったことを受け、足元では再び米ドル高、円高トレンドに戻っているように見えるが、それは「スピード調整に対するスピード調整」なのではないかと思う。
つまり、米ドル高、円高に対する修正局面はまだ終わっていないのではないだろうか。
■リーマンショック以上の大惨事は起こらないと考える理由
豪ドルを例にして見ると、5月29日(火)まで、IMMにおけるネットショートポジションは3万5527枚に増加していた。
その中の取り組み、つまりロングポジション(買いポジション)とショートポジション(売りポジション)をそれぞれ見ると、ロング1万4788枚に対してショートは5万315枚だった。
注意していただきたいのは、豪ドルのロングポジションが2万枚規模を下回ったのは、あの「100年に一度の危機」と言われたリーマンショック後の2009年初頭以来ということだ。
(詳しくはこちら → 経済指標/金利:シカゴIMM通貨先物ポジションの推移)
確かにギリシャ問題は深刻で、スペインの銀行も破綻するかもしれない。
が、リーマンショックとの違いも鮮明だ。まず、リーマンショックは真のショックである一方、ギリシャをはじめとしたEU(欧州連合)のソブリン危機はダラダラと続いており、ショックではないこと。
次に、リーマンショックは発生済で、ギリシャのEU離脱およびスペインの崩壊は現時点ではまだ確認されていないこと。
となると、「相場が行きすぎた」のか、これから「リーマンショック以上の大惨事が起こる」のか、そのどちらかということだろう。
歴史を振り返ると、普通に予想されて、市場センチメントのとおりに発生する大惨事は実に少ないから、今回も相場の行きすぎではないかと思う。ゆえに、スピード調整はまだ完了されていないとみる。
ちなみに、今回社用で北京を訪れ、政府のお偉い方の話もうかがったが、景気の先行きについては、総じて報道されているほど悲観的ではなかった。
今回もしっかり利下げを実施したが、おそらく次の手も考えていると思われる。
そして、中国だけでなく、欧米も同様で、一時しのぎにすぎないとはいえ、結局は量的緩和策に踏み切るのではないかと思う。このあたりの話はまた次回に。
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