したがって、FOMC議事録のリリースでドルインデックスが反落したのではなく、反落途中に同材料があって、さらに下落を加速させたにすぎない。材料は常にトレンドの後を追って発生するものだ。
ここで注目しておきたいのは、7月24日(火)高値からの反落は、その前に構築されたRSIとMACDが示す弱気ダイバージェンス(2)といったシグナルが効いているわけだが、その前に2012年1月高値を境に形成された弱気ダイバージェンス(1)があり、その後の値動きが今回非常に参考になるわけだ。
(出所:米国FXCM)
実際、(1)のダイバージェンスの指示作用で、ドルインデックスは2012年1月高値から2月末まで調整が続き、2011年10月安値を起点とした全上昇幅の半値押しである78.25を下回っていた。
同様に推測すれば、今回も38.2%押しになる公算が大きく、2012年2月末安値を起点とした全上昇幅の半値押しは81.09前後に位置するから、これからドルインデックスの調整はまず81の節目割れを目指すだろうと思われる。
■ユーロ/米ドルは1.2764ドルを上回る可能性あり
同じロジックが、逆相関のユーロ/米ドルにおいてもそのまま応用できる。ユーロ/米ドルの内部構造は以下のとおりである。
(出所:米国FXCM)
同様に推測すると、値動きとオシレーター系指標のダイバージェンスの1つ目は、2011年10月高値から2012年1月安値(x~a)までの全下げ幅の半値戻しを打診したから、足元2つ目のダイバージェンスも同じく半値戻しとなるなら、2月高値を起点とした全下落幅の半値戻しである1.2764ドルを一時上回ってもおかしくない。
もっとも、筆者が重ねて指摘しているように、ユーロは売られすぎで、ベアトレンドをいつ修正してもおかしくないから、前述のターゲットに関してはかなり前から想定していた。
とはいえ、本日(8月24日)だからこそ、このターゲットは何となく視野に入ってくるが、いわゆるスペイン危機が深まる中では、なかなか現実味を持たなかったことも確かであった。
米QE3観測の高まりでユーロの買戻しが行なわれたといった俗論は、必ずしも的を射ていると思わない。
なぜなら、本コラムでは何回も取り上げ、説明してきたように、ユーロクロスの反騰はFOMC議事録前からはっきり表れてきており、ユーロ全体で売られすぎに対する修正ニーズがあった。
一番遅れていたユーロ/加ドルを反発させたのはFOMC議事録ではなく、その前に構築されたチャート上の強気ダイバージェンスだ。
【参考記事】
●米雇用統計が良かったのに、なぜ米ドルは売られたのか? その隠れた理由とは?(8月10日、陳満咲杜)
●エリオット波動論から浮上してきたドル/円が力強く上昇していく可能性とは?(8月17日、陳満咲杜)
このように、相場の内部構造は常に材料より先に進んでおり、材料はきっかけにすぎないから、ユーロの反発は当然の成り行きだ。
■QE3が実施されたら、米ドル円/は上昇する可能性あり
では、米ドル/円はどうなるか。
結論から申し上げると、以下の2点が非常に重要だと思う。
まず1点目は、これからのユーロ/円の値動きがカギとなる。
ユーロ/円がブルトレンドを保てば、米ドル/円の下値余地は限定的である。
2点目は、仮に9月に米QE3があれば、ユーロなど外貨をさらに押し上げることは可能だとしても、円を押し上げる効果は限定的であるということだ。
それどころか、FRB(米連邦準備制度理事会)がQE3に踏み切ったら、それはむしろ米ドル/円を押し上げる可能性さえある。
詳しくはまた次回に。
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