■「円のクーデター」とも言える大波乱
今週は週明け、2月25日(月)から、マーケットは大波乱となった。
米ドル/円がなんと、いきなり94.72円という2010年5月以来の高値をつけた同じ日に、一転急落し90.86円の安値をつけた。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足)
米ドル/円の急落は、2月25日(月)のNY取引時間帯に起こり、これは東京時間の2月26日(火)未明にあたるから、為替市場の「2.26事件」とも言える。
円安トレンドに対する修正が早晩行われるだろうと予測されていたとはいえ、その激しさからしてまさに「円のクーデター」に近いものだった。
皮肉にも、前回コラムにおける筆者の見解と懸念事項の両方が、同じ日に実現された。
【参考記事】
●キーウーマンの発言に翻弄されたドル/円、今後の動きは英ポンド/円を見て予測?(2013年2月22日、陳満咲杜)
すなわち、「1時間足における『トライアングル』の上放れによる高値更新」と、「円安トレンドがいったんトップアウトする可能性」の両方が現実となったのである。
ただし、「円のクーデター」に翻弄され、うまくポジションを転換できなかった方が多いのではないかと推測できる。
■「トレンドの後に材料」という相場の本質を再確認したい
日銀総裁人事やイタリア選挙事情といった材料に翻弄され、今回は「天井波乱」に関するケーススタディの好例になったと言えるのではないかと思うが、これは本質的には、マーケットの習性をもって説明できるのではないかと思う。
すなわち、相場とはいつも大衆の意表を突くものであり、我々が過去を学習し、うまく市場の行動パターンを観察し、相場の成り行きやそのプロセスをある程度予測できたとしても、相場は同じことを繰り返さず、必ずどこかが違った結果とプロセスを見せてくれる、ということだ。
二度と同じ川には足を踏み込めないように、まったく同じ相場がないことも、自明の理だ。
この意味で、ファンダメンタルズ上の材料は大した意味を持たない。
イタリア政局にしろ、米歳出強制削減にしろ、本当にマイナス材料であれば、米NYダウ指数が史上最高値に迫るような強気トレンドはとても維持できないだろう。
トレンドの後に材料がついてくるものと悟れば、トレンドフォローに専念できる。
■ダマシは最強のシグナル!? しばらく調整続くか
では、米ドル/円の今後はどうなるか。前回と同様、まず1時間足におけるフォーメーションをチェックしてきたい。
【参考記事】
●キーウーマンの発言に翻弄されたドル/円、今後の動きは英ポンド/円を見て予測?(2013年2月22日、陳満咲杜)
(出所:米国FXCM)
前回のコラムで指摘したとおり、米ドル/円が一時「トライアングル」を上放れしたものの、同日一転して急落、同トライアングルを完全に否定したので、典型的な「ダマシ」であったことが確認できる。
そして、「ダマシは最強のシグナル」といった相場の教えから考えると、これから米ドル/円は切り返しを果たすよりも、さらにしばらく調整の余地があるのではないかと思う。
シンプル・イズ・ザ・ベスト、簡潔なロジックだからこそよく効く場合が多いから、目先あれこれと悩まなくてもいいのではないかと思うわけだ。
■2時間足の200MAがサポートからレジスタンスに転換か
次にややユニークだが、米ドル/円の2時間足をもって分析してみよう。引かれた移動平均線は期間200の移動平均線(200MA)である。
(出所:米国FXCM)
「なぜ2時間足に200MAを取るのか」という質問が聞こえてきそうだが、理由はシンプル。これが今のトレンドを測る上で、一番効くからだ。
言い換えれば、移動平均線の本質は売買コストだから、あらかじめ決めた周期よりも、一定の期間における最も有効な平均線を抽出し、フォローしていく方がより効果的である。
上のチャートをよく見ると、200MAが2時間足において、2012年11月後半(アベノミクス効果の始点)から先週(2013年2月18日~)まで、一貫して米ドル/円の下値の節目を支えてきたことがわかる。
したがって、今回の「2.26事件」で米ドル/円が大きく同移動平均線を割り込んだので、しばらく調整波動に留まることが容易に推測できる。
これだけではなく、テクニカルアナリシスの原則では、重要なサポートをいったん割り込むと、今度はそれがレジスタンスとなる場合が多いとされるので、同200MAが今度は抵抗ゾーンとして意識される。
現時点では、同200MAは93.16円を示していることを覚えておいていただきたい。
■さまざまな分析の結果、いずれも円安一服の公算大
また日足では、下のチャートに記しているように、2011年10月安値を起点とした上昇波動を、エリオット波動論に照らして、5波構造とみなした場合、2012年9月安値を起点とした上昇波動はもっとも強い上昇3波に当たり、今週(2月25日~)の高値をもって第1波(11年10月安値~12年3月高値)値幅の2倍程度で一服した公算も大きい。
(出所:米国FXCM)
最後に、週足においては、以前このコラムでも取り上げたように、RSIが示す過熱感は相当なものだったので、今回の反落をもって解消を図るのであれば、短期に終わってしまうことはやや想定しにくい。
【参考記事】
●日欧の「総裁ショック」で波乱の展開!円安トレンドは本物だがスピード調整か(2013年2月8日、陳満咲杜)
2010年5月高値の94.98円を超えられずにいる米ドル/円は、週足ではリバーサルのシグナルが点灯し、より深い調整幅につながると思われる。
したがって、アベノミクスによる円安効果がすでに一服した公算が大きい以上、しばらく円安トレンドに対する調整が行われる公算が大きい。
米ドル/円に関しては、90円の節目割れをもって、さらなる調整の余地がある状態になるだろう。市況はいかに。
(3月1日 PM 3:00執筆)
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