■日本株の調整余地は一段と広がるだろう
そもそも、たびたび指摘してきたように、日銀政策に対する期待は過大で、それを織り込むように相場が先走りしてきた側面が強い。この過大な期待が剥落するまで、米ドル/円にしても、日経平均にしても続落の余地があると推測できる。
その上、米国株の買われすぎに対する修正がこれからであれば、日本株の調整余地も一段と広がるだろう。
なお高い相関性を保つ米ドル/円と日経平均の連動で、円の買い戻しが一段と強くならない方が、むしろサプライズではないかとみる。
■買われすぎだった米ドルもポジション調整
同じ視点で、ドルインデックスの軟調も説明できる。
同じくIMMの1月14日(火)の統計では、ドルインデックスの買い越しは21万枚超にあったから、ポジション調整の結果として英ポンド/米ドルの高値再更新、そして、ユーロ/米ドルの切り返しを理解することができる。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/米ドル 4時間足)
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 4時間足)
ただし、ドルインデックスの買い越しは、おもに米ドル/円の買い越しに集中していたこととリンクする側面が強く、ユーロや英ポンドの売り越しは、円ほどではないので、おのずと上昇余地が限られるのではないかと思う。
■クロス円の中で一番反落しやすいのはユーロ/円
この見方が正しければ、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)の切り返し余地も限定的で、また反落してくる公算が大きいのではないかと思う。もちろん、通貨同士の差は金融政策の違いで一段と広がるから、クロス円とはいえ、まちまちのパフォーマンスとなろう。
一般論では、スイス当局は金融引き締め政策に転換しており、英国も早期利上げの圧力にさらされるから、緩和政策を継続するユーロに対して、相対的な優位性を維持できるだろう。
豪州に関しては、中国要素に翻弄されるが、CPI(消費者物価指数)の上昇で、当面緩和策をさらに拡大する環境にないから、対ユーロの底打ちが想定される。
諸主要通貨のうち、ユーロと円サイドの事情は一番弱いが、すでに指摘してきたように、円は大幅安をもって緩和政策を織り込んできたことに対して、ユーロはまったく織り込んでおらず、それはこれからレートに反映されるだろう。
ゆえに、ユーロ/円はクロス円の中で、一番反落しやすいものとみる。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/円 日足)
■安倍総理の自画自賛は良いシグナルではない
最後に、アベノミクス成功への憧憬が最近かなり浸透してきたせいか、
お偉いさんから庶民まで、なんとなく株高・円安の継続、また、景気回復
にたっぷり自信を持つようになってきた。
マインドの改善は良いことだが、デフレを完全克服するまでは油断できず、また慢心できないことも自明の理だ。
ポスト・アベノミクスの現段階では、金融、財政のみでなく、構造改革の結果が検証されるので、むしろ厳しさが増しているのではないかと思う。
この意味では、一時自ら「アベノミクス」という単語を口に出さなかった安倍総理が、最近自画自賛に変わってきたこと自体、あまり良いシグナルとは思っていない。
果たしてそれは、杞憂であろうか。市況はいかに。
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