■ECB追加緩和、キーポイントは「QE」
先週、6月5日(木)に注目のECB(欧州中央銀行)理事会が開催されました。そして、大方の予想どおり、マイナス金利などの追加緩和が導入されました。
(詳しくはこちら → 経済指標/金利:各国政策金利の推移)
ECBは4つの非標準的措置の導入を実施/検討すると発表。
(1)資金供給手段として、固定金利で無制限の資金供給の継続
(2)SMP(証券買い入れプログラム)不胎化の停止
(3)長期LTRO(『対象を絞った』4年物流動性供給オペ)の再導入 ⇒ 規模は4000億ユーロ、満期2018年
(4)ABS(資産担保証券)をターゲットとしたQE(量的緩和)策導入の準備
ここでのキーポイントは「QE」。
「QE策を導入する準備」という表現を用いながらも、ECBは「できればQEは避けたい」というのがマーケットの認識。
そのため、ユーロ/米ドルの下落も限定的でしたが、マイナス金利の導入はこの時点でのマーケットに対する満額回答でもあるため、ユーロは徐々にファンディング通貨(※)に移行してきています。
(※編集部注:「ファンディング通貨」とは資金調達通貨のことで、金利の低い通貨で資金を調達し、金利の高い通貨に交換し、高金利で運用することで利ざやを稼ぐキャリートレードで用いられる)
(出所:米国FXCM)
■ユーロ/米ドルの動きが鈍い理由とは?
ただ、そのユーロキャリートレードの対象通貨は現時点では米ドルではないようです
5月15日(木)のコラムにもあるように、ユーロ/米ドルの1.4000ドル水準では、フランス当局からのコメントも増えてくるため、上値は限定的。
【参考記事】
●今回は「口だけドラギ」でなさそう!? 仏当局の言動怪しく、ユーロ下落に注意!(5月15日、西原宏一)
ただし、ユーロ/米ドルは実需のユーロ買いが根強く、なかなかダウンサイドに加速してきません。
レンジが限定的になっているため、要所要所にオプションが控えており、それがユーロ/米ドルの動きを鈍くしています。
たとえば、本日、2014年6月12日(木)は1.3550ドルに1.5ビリオン(Billion)、1.3600ドルに5ヤード(yards)といった満期を迎えるオプションが大量に控えており、こうしたオプションがユーロ/米ドルのボラティリティをさらに下げる要因となっています。
(出所:米国FXCM)
■ユーロキャリートレードの対象として豪ドルに注目集まる
このような低ボラティリティの環境下、ヘッジファンド勢が注目したのがユーロ/豪ドル。
前述のようにECBがマイナス金利を導入し、今後はQE導入の可能性もあるなかで、ユーロは主要通貨の中で「ファンディング通貨」として認識されつつあります。
その対象通貨ですが、対米ドルであるユーロ/米ドルは低ボラティリティの中、あまり妙味がありません。
そこで注目されているのがユーロ/豪ドルなのです。
インフレ懸念が出てきたオーストラリアでは、昨年、2013年後半にみられたようなRBA(オーストラリア準備銀行[豪州の中央銀行])のスティーブンス総裁の通貨高抑制コメントは目立たなくなりました。
そのため、豪ドル/米ドルはじわじわと値を上げる展開。
今週(6月9日~)に入って某米系証券からは、2014年末の豪ドル/米ドルはパリティ(1豪ドル=1米ドル)に向かうというレポートも出された模様。
(出所:米国FXCM)
豪ドル/米ドルは0.9200ドルが極めて底堅く、じわじわと0.9500ドルに向けて上昇している展開です。
そこでユーロキャリートレードの対象通貨として、ヘッジファンドが現時点で選好したのが豪ドル。
実際、今週(6月9日~)に入り、主要通貨の値動きが緩慢になっている中、ユーロ/豪ドルは250pips弱の急落となっています。節目の1.4400ドルで下げ渋っていますが、ユーロ/豪ドルは2011年後半同様、徐々に市場参加者からの注目を集めています。
【参考記事】
●【2012年相場見通し】ユーロクロスに注目!ヘッジファンドの関心はユーロオージーに!!(2011年12月22日、西原宏一)
(出所:米国FXCM)
主要通貨のボラティリティが低下する中、動意づいてきたユーロ/豪ドルの行方に注目です。
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