■ウワサのヘリコプターマネーは実現するのか?
先週末、7月10日(日)の参議院選挙の与党大勝を受け、日本の当局はすばやく動きます。
選挙明けの11日(月)に、FRB(米連邦準備制度理事会)のバーナンキ前議長が来日し、黒田日銀総裁と会談。そして、バーナンキ氏は7月12日(火)に安倍首相とも会談しています。
【参考記事】
●参院選後のアノマリー崩れ円安・株高に! バーナンキ来日でヘリコプターマネー予測も(7月12日、西原宏一&大橋ひろこ)
会談冒頭で安倍首相は「デフレからの脱出速度を加速したい」とコメント。
このコメントが「ヘリコプターマネー」(※)実施の憶測を呼び、米ドル/円は一気に反転。
(※執筆者&編集部注:「ヘリコプターマネー」とは、中央銀行や政府が大量の貨幣を供給する政策のこと。「ヘリマネ」と略されることもある)
Brexitのあと、一時、99.00円まで急落していた米ドル/円はあっという間に105.00円レベルまで、6円急騰。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)
今年(2016年)前半、一方的に敗色濃厚だった米ドル/円相場を底入れさせることに成功しています。
しかし、金融政策を担う中央銀行と財政政策を担う政府が一体となって行なうヘリコプターマネーについては、「法的枠組みと矛盾する」と黒田さんは記者会見で毎回のようにきっぱり否定していますので、実現性は極めて低い状態。
■米ドル/円の本格反転は107円を超えるかがカギに
本稿執筆時点では、安倍政権の大規模経済対策への期待を背景に、米ドル/円は105円台を維持していますが、105円からは売り遅れていた本邦輸出企業の米ドル売りが並んでいます。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)
多くの本邦企業の米ドル/円社内レートは110円(前回のコラム参照)。
【参考記事】
●英中銀が利下げ予告! 英不動産ファンドの解約増でポンド/円は120円への下落過程(7月7日、西原宏一)
それが、Brexit後の一時的な混乱の中とはいえ、ひさしぶりに米ドル/円が2桁台まで急落したことから、米ドル/円が反発する局面では彼らからの米ドル売りが米ドル/円の上値を抑える展開。
このような背景から、米ドル/円の戻しは107円までと、限定的となる公算が高いと言えます。
■円高トレンド反転を困難にさせている2つの要因とは?
今回の円高トレンドを反転させるのを困難にさせている要因のひとつが、他国の反応。
昨年(2015年)来から、英ポンドに対し約60円、米ドルに対し20円も円が急騰していることに対し、日本以外はこの円急騰を問題視していないことが、この円高トレンドを反転させることの難しさを物語っています。
米財務長官に至っては「為替介入、避けるべき」と、日本の為替介入を牽制するコメントを繰り返しています。
そして、もうひとつが英ポンドの行方。
既報のように、BOE(イングランド銀行[英国の中央銀行])は利下げを行うことを示唆しています(前回のコラム参照)。
【参考記事】
●英中銀が利下げ予告! 英不動産ファンドの解約増でポンド/円は120円への下落過程(7月7日、西原宏一)
また、本日(7月14日)のMPC(イングランド銀行金融政策委員会)では、0.25%の利下げがマーケットのコンセンサスとなっています。
【参考記事】
●参院選後のアノマリー崩れ円安・株高に! バーナンキ来日でヘリコプターマネー予測も(7月12日、西原宏一&大橋ひろこ)
英国政策金利は7月14日(木)20時の発表
(詳しくはこちら → 経済指標/金利: 各国政策金利の推移)
そして今年(2016年)中に、もう一段利下げする可能性が高まっており、英ポンドもゼロ金利への道を歩んでいます。
これは、英ポンド/円のさらなる下落を示唆しており、米ドル/円の上値を抑えることになります。
今回の局面では、アベノミクス相場の50%戻しである100.60円近辺でなんとか踏みとどまった米ドル/円相場。
ただ、売り遅れた本邦企業の米ドル売りにより、今回の米ドル/円の戻りが107円レベルで抑えられると仮定するなら、次の下落局面では100円を明確に割り込む可能性が濃厚。
安倍政権の大規模経済対策やヘリコプターマネーの議論まで飛び出し、反撃に出た「日本円」。
この動きが本格化するかどうかは、107円のレジスタンスを上抜けるかどうかにかかっています。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)
しかし、安倍政権の大規模経済対策への期待や、米国株の上昇を追い風にしても、この107円のレジスタンスを上抜けられなければ、次の米ドル/円の下落は、二桁が明確にイメージされてしまいます。
今年(2016年)に入って「通貨安戦争」で負け組に落ち込んでいた、日本円の反撃に注目です。
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