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西原宏一の「ヘッジファンドの思惑」

日銀決定はテーパリングへの道?それとも
ヘリマネ? 米ドル/円は底固め後、反発へ

2016年09月29日(木)17:31公開 (2016年09月29日(木)17:31更新)
西原宏一

FXトレーダー・羊飼いに聞く、初心者におすすめのFX口座の選び方とは?

■日銀会合での決定はテーパリングへの道なのか?

 みなさん、こんにちは。

 全世界の注目を集めた日銀の新たな緩和策について、ここで確認します。

 今回の緩和策の名称は「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」

 決定を要約すると、

(1)2%目標実現へ、これを安定的に持続するために必要時点まで継続
(2)マネタリーベースは安定的に物価上昇率が2%超まで拡大
(3)金融市場調節方針は、長短金利の操作について方針示す
(4)長短金利の操作を行うイールドカーブコントロールを導入
(5)平均残存期間の定めは廃止する-長期国債買い入れ

 まず、2%の「物価安定目標」の実現時期を明記することをやめて、「できるだけ早期に実現する」という表現に変更。

 次にイールドカーブコントロールの導入が入っており、金融機関への配慮を示しています。

【参考記事】
日銀会合への市場の評価は真っ二つ! 米ドル/円はこのまま反発しそうな感じも…(9月26日、西原宏一&大橋ひろこ)
マイナス金利の深堀りはなく相場乱高下! 日銀は金融政策の何を変更したのか?

 この決定に対して、日本の市場参加者の大多数は、明らかに「テーパリング(※)への道である」と認識しています。

 大多数の意見をまとめると、今回の枠組みが日銀版テーパリングへの道を開くものであり、現時点ではマーケットがそれを十分に理解していない。その理解が浸透するにつれて、円高圧力は強まり、米ドル/円の100円割れはもちろん、さらなる円高は避けられないといったところ

(※編集部注:「テーパリング」とは、量的緩和政策により、進められてきた資産買い取りを徐々に減少し、最終的に購入額をゼロにしていこうとすること)

米ドル/円 日足
米ドル/円 日足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足

世界の通貨VS円 日足
世界の通貨VS円 日足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 日足

 これまでの日銀のQQE(量的・質的金融緩和)に対して、市場参加者はラフにいってしまえば、「量の拡大=円売り」と反応していたわけですので、今回の決定が「量の縮小」であれば、マーケットの最初のリアクションは「円高」に振れても当然といったところ。

 加えて、ドイツ銀行株急落の悪影響もあり、米ドル/円の100円割れは必至で、95円へと急落するというのがコンセンサスになりつつあります。

ドイツ銀行株価 日足
ドイツ銀行株価 日足

(出所:CQG)

米ドル/円 週足
米ドル/円 週足

(出所:CQG)

 しかし、これは本当に、多くの市場参加者が指摘するような「テーパリングへの道を開いた?」ことだと言えるのか?

■バーナンキ氏は日銀政策を「ヘリマネに似ている」と評価

 一方、今回、日銀が導入した策に対して肯定的な意見もみられます。

 前FRB(米連邦準備制度理事会)議長のバーナンキ氏は、日銀の政策を「ヘリマネに似ている」との見方を示していると報じられています(9月26日(月)公開の「FX&コモディティ(商品) 今週の作戦会議」を参照)。

【参考記事】
日銀会合への市場の評価は真っ二つ! 米ドル/円はこのまま反発しそうな感じも…(9月26日、西原宏一&大橋ひろこ)

日銀政策「ヘリマネに似ている」 前FRB議長が指摘

日本銀行が新たに導入した長期金利を「0%程度」とする目標について、米連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ前議長がブログで、政府の借金を中央銀行が直接引き受ける「ヘリコプターマネー政策」に似ているとの見方を示した。

バーナンキ氏は、日銀の新たな金融政策の枠組みについて「市場の反応はまちまちだった」としたが、「デフレを終える目標への新たな決意が含まれており、おおむねいいニュース」と評価した。

出所:朝日新聞

 バーナンキ氏の主張が正しければ、米ドル/円相場は早晩、底打ちし、反発に転じる可能性が高まっていることになります。

米ドル/円 日足
米ドル/円 日足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足

■英ポンド/円の行方と本邦当局の介入の可能性に注目

 前述のように「日銀の緩和策はテーパリングへの道」ではないとする意見も散見されます。

 米ドル/円のマーケットを振り返ってみれば、今年(2016年)最大のリスクと言われた「Brexit」(英国のEU離脱)時の安値が99.02円。

今回の黒田日銀の決定が「Brexit」を超えるショックをマーケットに与え、さらなる円高のトリガーを引くという相場展開は個人的には想像しづらいところ。

米ドル/円 週足
米ドル/円 週足

(出所:CQG)

 そしてマーケットが注目しているのが英ポンド/円の行方と、本邦当局の介入の可能性。

以前、当コラムでも触れましたが、昨年(2015年)の高値から英ポンド/円は67円もの暴落を演じています。

【参考記事】
Brexitの影響により1年で約67円暴落したポンド/円が反発! 米ドル/円への影響は?(9月8日、西原宏一)

 日銀のマイナス金利の導入や、上海合意のウワサが今年(2016年)の米ドル/円の急落を誘引しているわけですが、この英ポンド/円の暴落が米ドル/円の下落を加速させた要因にもなっています。

【参考記事】
日銀のマイナス金利の効果は賛否両論。円安・株高は中長期マネーがカギを握る(2月4日、西原宏一)
安倍首相が米国に「介入しない」と宣言!? 上海合意で、米ドル/円は100円も視野に!(4月7日、西原宏一)

 その点は本邦当局も懸念しており、仮に英ポンド/円が前回安値を割り込んで、再び急落を演じるような展開になれば、本邦当局の米ドル/円での介入の可能性が高まるというウワサもマーケットに流れており、このウワサも米ドル/円の下支えとなっています。

■米ドル/円は重要サポート維持なら反発の可能性も

 ここで米ドル/円の動向をテクニカル分析で確認します。

注目は75日移動平均線。今年(2016年)の米ドル/円は、この75日移動平均線がずっと上値を抑えて続落。

 しかし、「円高派」が大多数を占める環境の中、99~100円レベルで米ドル/円が当面サポートされ続ければ、次第にこのラインをブレイクする可能性も高まります。

米ドル/円 日足
米ドル/円 日足

(出所:CQG)

 加えて、次が一目均衡表。今年(2016年)は、日足・一目均衡表の雲がずっと米ドル/円の上値を抑えてきましたが、こちらも当面、99~100円のサポートが保たれるのであれば、再び雲の中に突入し、反発の可能性を示唆しています。

米ドル/円 日足
米ドル/円 日足

(出所:CQG)

■減産暫定合意で原油上昇、米ドル/円は101円台回復

 今週(9月26日~)は本邦企業の半期末。

 半期末の米ドル/円のレートが2桁に突入するのを避けるためなのか、つまり、今週(9月26日~)いっぱいは、100.00円レベルに本邦からの厚い米ドル買い注文が控えており、米ドル/円のサポートとなっています。

 加えて、9月28日(水)には、アルジェリアで開催された会合でOPEC(石油輸出国機構)が8年ぶりとなる減産で暫定合意(正式合意は11月末のOPEC総会へ持ち越し)。

 これは、サウジアラビアが譲歩したことによるものなのですが、その理由は、サウジアラビア経済の悪化です。

 これを受けて、原油価格は6%強上昇、NYダウは0.6%高の18339.24ドル。

WTI原油先物 1時間足
WTI原油先物 1時間足

(出所:CQG)

 マーケット環境は好転し、本邦執筆時点での米ドル/円は101円台を回復。

米ドル/円 4時間足
米ドル/円 4時間足

(出所:CQG)

 今回日銀が導入した「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」に対し、圧倒的に否定的な意見が多い中、99~100円のサポートを前に下げ渋っている米ドル/円。

悪材料満載にも関わらず、下げ渋っている米ドル/円の反発に注目です。


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