■英ポンド/円の行方と本邦当局の介入の可能性に注目
前述のように「日銀の緩和策はテーパリングへの道」ではないとする意見も散見されます。
米ドル/円のマーケットを振り返ってみれば、今年(2016年)最大のリスクと言われた「Brexit」(英国のEU離脱)時の安値が99.02円。
今回の黒田日銀の決定が「Brexit」を超えるショックをマーケットに与え、さらなる円高のトリガーを引くという相場展開は個人的には想像しづらいところ。
(出所:CQG)
そしてマーケットが注目しているのが英ポンド/円の行方と、本邦当局の介入の可能性。
以前、当コラムでも触れましたが、昨年(2015年)の高値から英ポンド/円は67円もの暴落を演じています。
【参考記事】
●Brexitの影響により1年で約67円暴落したポンド/円が反発! 米ドル/円への影響は?(9月8日、西原宏一)
日銀のマイナス金利の導入や、上海合意のウワサが今年(2016年)の米ドル/円の急落を誘引しているわけですが、この英ポンド/円の暴落が米ドル/円の下落を加速させた要因にもなっています。
【参考記事】
●日銀のマイナス金利の効果は賛否両論。円安・株高は中長期マネーがカギを握る(2月4日、西原宏一)
●安倍首相が米国に「介入しない」と宣言!? 上海合意で、米ドル/円は100円も視野に!(4月7日、西原宏一)
その点は本邦当局も懸念しており、仮に英ポンド/円が前回安値を割り込んで、再び急落を演じるような展開になれば、本邦当局の米ドル/円での介入の可能性が高まるというウワサもマーケットに流れており、このウワサも米ドル/円の下支えとなっています。
■米ドル/円は重要サポート維持なら反発の可能性も
ここで米ドル/円の動向をテクニカル分析で確認します。
注目は75日移動平均線。今年(2016年)の米ドル/円は、この75日移動平均線がずっと上値を抑えて続落。
しかし、「円高派」が大多数を占める環境の中、99~100円レベルで米ドル/円が当面サポートされ続ければ、次第にこのラインをブレイクする可能性も高まります。
(出所:CQG)
加えて、次が一目均衡表。今年(2016年)は、日足・一目均衡表の雲がずっと米ドル/円の上値を抑えてきましたが、こちらも当面、99~100円のサポートが保たれるのであれば、再び雲の中に突入し、反発の可能性を示唆しています。
(出所:CQG)
■減産暫定合意で原油上昇、米ドル/円は101円台回復
今週(9月26日~)は本邦企業の半期末。
半期末の米ドル/円のレートが2桁に突入するのを避けるためなのか、つまり、今週(9月26日~)いっぱいは、100.00円レベルに本邦からの厚い米ドル買い注文が控えており、米ドル/円のサポートとなっています。
加えて、9月28日(水)には、アルジェリアで開催された会合でOPEC(石油輸出国機構)が8年ぶりとなる減産で暫定合意(正式合意は11月末のOPEC総会へ持ち越し)。
これは、サウジアラビアが譲歩したことによるものなのですが、その理由は、サウジアラビア経済の悪化です。
これを受けて、原油価格は6%強上昇、NYダウは0.6%高の18339.24ドル。
(出所:CQG)
マーケット環境は好転し、本邦執筆時点での米ドル/円は101円台を回復。
(出所:CQG)
今回日銀が導入した「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」に対し、圧倒的に否定的な意見が多い中、99~100円のサポートを前に下げ渋っている米ドル/円。
悪材料満載にも関わらず、下げ渋っている米ドル/円の反発に注目です。
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