■過去の米大統領選挙は為替相場で材料視されず
みなさん、こんにちは。
今回の米大統領選挙のテレビ討論会は、あまり興味深いものではありませんでした。
それは、「政策」よりも「個人攻撃」に終始する討論が繰り広げられたからです。
このような「テレビ討論」を見せられる米国民は次期米大統領にどのような希望をもつのか?と個人的に危惧するほどの個人攻撃の応酬でした。

ヒラリー氏とトランプ氏のテレビ討論会は、「政策」ではなく、「個人攻撃」の応酬だった
(C)Steve Pope/Getty Images
ただ結果として、ヒラリー氏優位に進んできました。
もともと米大統領選挙が為替相場に直接的な影響を及ぼしたという記憶はありません。
たとえば、2008年に「オバマ大統領」が選出された時の米ドル/円は、暴落を演じていますが、これは「リーマンショック」によるもので、オバマ大統領の勝利によるものではありませんでした。

(出所:CQG)
■米大統領選挙の注目度を高めた2つの理由とは?
このように、もともとは為替相場に直接的な影響を与えるわけではない「米大統領選挙」が、今回、マーケットの注目度を高めた理由は2つあります。
まずひとつは「トランプ氏」の存在。
トランプ氏の過激なコメントはメディアの注目を集めますが、彼が米大統領になることはまず考えにくいというのがマーケットのコンセンサス。
ただ、マーケットが警戒しているのは、ポピュリズムの台頭。
現在の米国では、中間層の不満が高まっています。
彼らの人生プランはこれまで順調に進んできましたが、それがいつの間にか入り込んできた、インドなどからの外国人技能労働者に職を奪われ、結果、没落している現状があります。
こうした環境下では、「現在の政治では、自分たちの生活はよくならないのではないか?」という不満が増大します。
そこに現れたのがトランプ氏。
彼は、外国人技能労働者に規制をかけると主張。
こうした彼の主張は、不満が高まる中間層への十分なアピールとなります。

外国人技能者に規制をかけるといったトランプ氏の主張は、不満が高まる中間層への十分なアピールになる (C)Chip Somodevilla/Getty Images
米国の報道などによると、全米の選挙人の数から考えれば、ヒラリー氏の圧倒的優位は変わらず。
それにも関わらず、トランプ氏が巻き返してきたという報道だけで警戒感からヘッジ売りが持ち込まれるのは、わずか数カ月前にマーケットが経験したBrexit(英国のEU離脱)が記憶に新しいため。
このBrexitが今回の米大統領選挙の注目度を高めた2つめの要因となっています。
■Brexitを経験したマーケットは「トランプリスク」を警戒
数カ月前に、マーケットは驚愕のBrexitを経験しました。
マーケットのコンセンサスはBremain(英国のEU残留)でした。
ただ、結果は驚きのBrexit。
【参考記事】
●EU離脱ショックで英ポンド暴落! 米7月利下げ観測も浮上! ドル/円、次は95円へ(6月24日、西原宏一)
この英国国民投票と、米国でのトランプ旋風は共通点を多く抱えています。
どちらも偉大な英国や米国を取り戻そうと主張。
そして、移民に否定的な見解。
加えて、貧富の差の拡大による社会の閉塞感に訴えている点。
前述のように、ヒラリー氏優位は揺るがないのですが、わずかな可能性とはいえ、トランプリスクが顕在化する可能性があれば、投資家の一部はヘッジをかけざるを得ません。
実際に米国のサイレントマジョリティ(物言わぬ多数派)の票が、どれほどトランプ氏に流れるのかがわからないからです。
今週(10月31日~)に入り、「もしものトランプリスク」を警戒した、一部の参加者が株のヘッジを始めています。
日経平均であれば、1万7000円や1万6500円といったプット(売る権利)の購入を断続的にマーケットに持ち込みます。これにより、1万7500円のバリアオプションの手前で上げ渋っていた日経平均が急反落しています。

(出所:株マップ.com)
呼応して、一時105.50円まで上昇していた米ドル/円相場ですが、株の急落を横目に102.55円まで反落。
米ドル/円の上昇をサポートしていたのが、日足の雲と、75日移動平均線のブレイクでした(過去のコラム参照)。
【参考記事】
●なぜ、日本株と米ドル/円はじりじり上昇? カギ握る中東マネー。ドル/円は109円台も(10月27日、西原宏一)

(出所:CQG)
上のチャートのように、トランプ氏の巻き返しという報道による「株安」に呼応し、米ドル/円も日足の雲の中に再び突入。
ただ、もうひとつのサポート要因である75日移動平均線は102.55円に位置しており、かろうじてサポートされている状況です。
■トランプリスクを乗り切れば、ドル/円上昇の流れは不変
マーケットが注目すべきは、原油価格の動向や、米国の利上げなど多岐に渡っているので、これまでどおり、米国の大統領選挙は直接的な影響はありません。
したがって他の材料に焦点を移したいのですが、Brexitを経験したマーケットはわずかであれ「トランプリスク」が残っていれば、ヘッジせざるを得ない状況にあるわけです。
このトランプリスクさえマーケットが乗り切れば、100円でボトムアウトした米ドル/円上昇の流れは変わらないと考えています。
【参考記事】
●原油上昇と金反落が米ドル/円をサポート。105円突破すれば109円台へ上昇濃厚!(10月13日、西原宏一)
●なぜ、日本株と米ドル/円はじりじり上昇? カギ握る中東マネー。ドル/円は109円台も(10月27日、西原宏一)

(出所:CQG)
2016年年末から2017年の米ドル/円の行方に大きな影響を及ぼす可能性のある「米大統領選挙」に注目です。
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