■2016年6月23日は市場関係者に語り継がれる歴史的1日
ところで、米ドル全体の値動きはモメンタムに欠けているものの、対英ポンドの値動きを見ると、話は別だと思われる。
英ポンド/米ドルは、5月高値からすでに大きく反落してきているが、同下落トレンドはこれから一段と加速していく可能性が大きいので、米ドル高の可能性に賭けるなら、英ポンド売り・米ドル買いのストラテジーが一番有効かと思う。
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本日(6月23日)はごく普通の取引日であるが、昨年(2016年)の本日は歴史に残る1日だった。
昨年の6月23日(木)、英国はEU離脱に関する国民投票を行い、投票後24時間以内に英ポンドは10%の急落を演じ、30年ぶりの新安値を更新したことは、記憶に新しい。世界の株式市場もこのサプライズを受けて急落、2016年の「ブラックスワン」として市場関係者に語り継がれたわけだ。
【参考記事】
●緊急特集:EU離脱・英国国民投票まとめ。まさかのEU離脱で世界に激震
■英ポンド/米ドルの下落余地はかなり大きい!
その後も英ポンドは下落を続け、2016年10月安値1.2025ドルを記録してからやっと反騰してきたが、2017年5月高値の1.3046ドルをみると、2016年6月安値の1.3120ドルを回復していないことがわかる。
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言ってみれば、英ポンドは時間をかけてだいぶ回復してきたが、今なお昨年(2016年)の「ブラックスワン」の影につつまれ、ブル(上昇)基調への復帰といった状況にはほど遠い。
その上、6月9日(金)の英国総選挙で与党が大敗、メイ首相はすでに信用力、指導力を失っている以上、英国内の政治リスクがこれから高まる公算が大きい。EU離脱を巡る混乱が続き、2017年内に再度総選挙の可能性もささやかれる中、英景気回復、また、英利上げの現実味はかなり薄いとみる。
6月9日(金)英国総選挙で与党は大敗、メイ首相はすでに信用力、指導力を失っている
(C)Matt Cardy/Getty Images News
言ってみれば、現在の値動きを2016年EU離脱後の一環と見なした場合、昨年(2016年)10月安値を起点とした切り返しは、英ポンドの大型ベア(下落)トレンドにおけるスピード調整にすぎず、また、同スピード調整はすでに5月高値をもって頭打ちが図られたから、5月高値1.3046ドルからすでに下落波に復帰してきた公算が大きい。
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そうなると、英ポンドの下落余地はかなり大きく、目先の値動きはまだ初歩段階にあるといった位置づけもできるだろう。
■しばらく英ポンドを支える材料は出にくいと思われる
カーニー英中銀総裁は利上げ、また、バランスシート縮小の可能性を否定している一方、英中銀チーフエコノミストのホールデン氏は2017年年内利上げを示唆するという矛盾したメッセージが出され、これが英ポンド相場に上下動をもたらしているが、英ポンドの下落構造がしっかり構築されている以上、マーケットは先見性をもって、これからのファンダメンタルズや金融政策を予言しているといえる。
つまり、これからしばらく英ポンドを支える材料は出にくいと思われ、2017年内の英利上げの可能性はないと思った方がよいだろう。さらに、英ポンドが下落トレンドへすでに復帰してきた以上、政治リスクが一段と高まること、また、英国から「ブラックスワン」が再度飛び出すことを警戒しておきたい。
■一転、英ポンド/円には下落回避の可能性が!
最後に、英ポンド/米ドルについて弱気の見方をだいぶ述べてきたが、英ポンド/円は別の視点でフォローすべきだと思う。
英ポンド/円、当面の焦点は200日移動平均線維持の有無にあり、維持できれば、ベアトレンドへ転換することを回避できる可能性が大きい。
(出所:Bloomberg)
言うまでもないが、仮にこのような見通しが正しいのであれば、それはほかならぬ、米ドル/円の上昇が効いてくるわけだから、英ポンド/円の底割れ回避が米ドル/円の上昇トレンドの継続を意味しよう。
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