■米ドル高が進まないのはなぜ?
米国では、6月14日(水)のFOMC(米連邦公開市場委員会)で予定どおり利上げが実施され、その後の見通しがわりと強気だったので、米ドルが少し上昇する展開が数日続きました。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 4時間足)
しかし、その後の状況があまり良くありません。私も、米ドルのロングポジション保有をいったん全部やめて、様子を見ることにしました。
【参考記事】
●タカ派印象のFOMCなのに…ドル高ならず! 金利頼みの米ドル/円は、動きにくくなるか(6月15日、今井雅人)
その1番の理由は米国の長期金利です。本日、6月22日(木)現在、米国の10年物国債の利回りは2.15%程度で推移しています。
今年(2017年)に入ってからの、米国の10年物国債の利回りの推移を見てみると、2.45%近辺で始まり、3月中旬にはいったん2.6%を超える水準まで上昇しました。
しかし、そこをピークに長期金利は低下傾向に入りました。5月の頭には、いったん2.4%程度まで回復する局面もありました。しかし、その後はだらだらと、ほぼ一方的に下がり続け、現在は年初来の最低水準にまで低下してきています。

(出所:Bloomberg)
今年(2017年)は3月と6月に政策金利を2度上げたため、短期金利は上昇傾向になるにもかかわらず、長期金利は低下していくという、非常に不思議な構図になっています。
■雇用環境が改善しても上がらない物価
では、ここまで長期金利が上昇していかないのは、なぜなのでしょうか? 私は、2つのことが原因になっていると思っています。
まず1点目は、米国の物価が思ったように上昇していかないことです。

※米労働省のデータをもとにザイFX!編集部が作成
米国の雇用環境はリーマンショック以来、改善し続けてきて、直近の失業率は4.3%まで低下してきています。
この水準はかつて、超低金利政策が行われる以前の、米国が健全な経済環境にあったときの水準です。
その当時は、政策金利も4~5%程度はあった時代です。通常、雇用環境が改善してくれば賃金に上昇圧力がかかり、物価も上昇傾向に入るのが一般的です。
しかし、現在の米国は、どうもそういう傾向になっていきません。理由ははっきりしないのですが、それが現実です。
■2%以上は、先進国では米国債だけ。魅力的な投資先に
2点目は、世界中でだぶついている資金が、米国の国債市場に流れ込んでいることです。
ご存知のとおり、現在は世界中が歴史的な低金利の水準にあります。その影響から、世界中で投資資金がだぶついています。
米国の国債市場は、世界でもっとも規模が大きく、流動性が高い市場です。そのうえ、低金利とはいえ、10年物国債でも2%以上の利回りがある国債は、先進国では米国だけです。

(出所:Bloomberg)
世界の大手機関投資家が、米国の国債に投資したくなるのは当然でしょう。そうした買いが、国債の価格を維持しているために、金利が上昇しないという面もあるのではないでしょうか。
■今はレンジ相場か。米ドル高は当面先になりそう…
個人的な見解としては、いずれ米ドル高になるチャンスはまだあると感じています。しかし、金利環境からみると、それもかなり先になるのかもしれないと思っています。
【参考記事】
●タカ派FOMCと円安でドル/円に上昇余地! ユーロ/ドルは下抜け見据えて売りで回転(6月20日、バカラ村)
●サイクル的に米ドル/円はいったん底打ち? 要人発言注目だが深く考えず押し目は買い(6月19日、西原宏一&大橋ひろこ)
●為替相場にトランプ・ラリー再来!? 米ドル続伸のサイン点灯、米国株もまだ崩壊しない!(6月16日、陳満咲杜)
当面、トレンドが出るような状況ではないということなので、引き続きレンジ相場が続くという認識でいたいと思います。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 週足)
こういう環境では、決して、追いかけ買いや、追いかけ売りをしないよう心がけることが大切です。
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