■米ドル/円は今年の最小値幅に
先週(6月19日~)の米ドル/円はボラティリティの小さな相場が続きました。6月23日(金)にいたってはわずか28銭の値幅。
今年(2017年)の最小値幅となりました。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)
日経平均も6月23日(金)の値幅は63円。4日連続で100円以下の値幅となるのは2016年9月以来だそうです。
(出所:Bloomberg)
これだけマーケットが動かないと、オプション市場では売り手、つまり、相場が動かないほうに賭けるプレイヤーが増えてきます。
上下にオプションが増えれば、それがまたマーケットを膠着させる要因となり、ますます動きにくくなる。
ただ、膠着が永遠に続くわけではありません。今週(6月26日~)かどうかはわかりませんが、ある日突然、大きく動き出す。その動きにはついていきたいですね。
■ラマダン明け、原油相場が動くか
今週(6月26日~)の予定を見ると、日本時間6月20日(火)の深夜に、FRB(米連邦準備制度理事会)のイエレン議長の講演が控えています。
アメリカの経済指標は強弱がまだら模様になってきましたが、FOMC(米連邦公開市場委員会)でタカ派だったイエレンがいきなりハト派になることは考えづらいですよね。
それから3月に下院での採決が話題となった「オバマケア代替法案」ですが、今週(6月26日~)にも上院での採決をめざすとの報道が伝わっています。
3月のときには「法案が通過すれば税制改革やインフラ投資などの公約実現に着手する」との見通しから米ドル高材料にもなりましたよね。
マーケットは「可決は難しい、法案修正に時間がかかる」と思っているのか、まだ、さほど話題にはなっていませんね。
ただ、気をつけておきたいのは、突然のボラティリティの高まり。先々週(6月12日~)はFOMCが注目されていましたが、その直前の経済指標で大きく動きました。
【参考記事】
●サイクル的に米ドル/円はいったん底打ち? 要人発言注目だが深く考えず押し目は買い(6月19日、西原宏一&大橋ひろこ)
予定されたイベントよりも、突発的なイベントや注目度の低いイベントでのサプライズでマーケットに負荷がかかると大きく動く。注意しておきたいですね。
イスラム圏では、6月24日(土)にラマダンが終了しました。「ラマダン中は原油が下落しやすい」とのアノマリーがあり、先週(6月19日~)はWTI原油が42ドル台まで急落。
短期的に考えると上がりそうな材料はラマダンが明けたことくらいしかなく、投機筋は40ドル割れを仕掛けたいでしょうね。
(出所:Bloomberg)
サウジアラビアでは皇太子の交代がありましたよね。その影響は?
ひろこ 以前にザイFX!の記事でも解説しましたが、新皇太子のムハンマド・ビン・サルマン氏(MBS)は大規模な改革「ビジョン2030」を進めており、来年(2018年)の上場が予定されているサウジアラムコを統括する最高評議会の議長でもあります。
【参考記事】
●住友商事・高井裕之氏に聞く原油相場(3) 驚きのサウジ大改革を進める「MBS」とは?
新皇太子のムハンマド・ビン・サルマン氏は、大規模な改革「ビジョン2030」を進めており、2018年の上場が予定されているサウジアラムコを統括する最高評議会の議長でもある (C)Anadolu Agency
外交的にはタカ派姿勢なので、中長期的には原油価格に追い風となりそうです。
■日経平均と米ドル/円では大きな差がついてしまった
今週(6月26日~)で2017年も半分が終わりますね。
北朝鮮やフランス大統領選挙などリスクオフイベントが多かった年前半ですが、それでも米ドル/円は底堅い。
【参考記事】
●地政学リスクはシリアから東アジアへ! 北朝鮮有事は円高要因か? 円安要因か?(4月13日、西原宏一)
●仏大統領選を無事通過してリスクオン再開。米ドル/円は115円に向けて反発する公算大(4月27日、西原宏一)
米ドル/円は下がれば買いが湧いてくる感じです。
ただ、以前からお伝えしているように日経平均と為替の相関が切れています。
2015年に日経平均が2万952円をつけたときは1ドル=125円付近。今、日経平均は2万円に乗せてきたのに111円台。14円もの差があります。
【参考記事】
●米国株と米国債、米経済はどちらを反映? レイ・ダリオ氏の警告。米ドル急落に警戒!(6月8日、西原宏一)
(出所:Bloomberg)
米ドル/円上昇へのもうひとつの頼みの綱である米金利はというと、イエレン議長がタカ派的な姿勢を見せているのに上がってきません。
(出所:Bloomberg)
■NZドルの利上げは2019年後半へ先送り
米ドル/円がこれだけ動かないとNZドルや豪ドル、加ドルなどに注目が集まりますね。
IMM(国際通貨先物市場)を見ると先週(6月19日~)、NZドルはロングが急増、為替レートも堅調です。
【参考記事】
●オセアニア祭り!を機に考える。NZドルは強いのに豪ドルはなぜそんなに強くない?
(詳しくはこちら → 経済指標/金利:シカゴIMM通貨先物ポジションの推移)
RBNZ(ニュージーランド準備銀行[ニュージーランドの中央銀行])のウィーラー総裁は先週、6月22日(木)の会合で、2019年の遅い時期まで利上げを開始しないことを示唆し、予想以上にハト派的な姿勢を見せました。
一方で、通貨高への牽制発言を控えたために買われたのかもしれませんが、これだけ利上げが遠のくと、すんなり上昇していくのは難しそうです。
(出所:Bloomberg)
■英ポンド/NZドルなどのクロス通貨ペアにも注目を
豪ドルはというと先週、6月19日(月)にムーディーズがオーストラリアの銀行12行を格下げ、CRB指数(コモディティ全体の動向を示す代表的なインデックス)も壊滅的に弱かったのに為替への影響は軽微でした。
(出所:Bloomberg)
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:豪ドル/米ドル 日足)
これだけの材料が出ているのに底堅いのなら、コモディティが戻してきたら豪ドルは上がりやすいのかなとも思いますが、もう少し動向を見極めたいですね。
そう考えると今週(6月26日~)の戦略は難しい……。
ユーロ/米ドルも1.13ドルがどうしても超えられないですしね。
米ドル/円は押し目買いを継続したいですが、同時に英ポンド/NZドルのようなクロスの通貨ペアにも着目したいと思います。
【参考記事】
●サイクル的に米ドル/円はいったん底打ち? 要人発言注目だが深く考えず押し目は買い
(出所:Bloomberg)
英ポンドは前回の英MPC(金融政策委員会)で予想以上に利上げ票が多く、NZドルは先ほど述べたとおりの状況。
ドルストレートやクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)にこだわらず、こうしたクロスの通貨ペアにチャンスがあるかもしれません。
(構成/ミドルマン・高城泰)
【ザイFX!編集部からのお知らせ】
ザイFX!で人気の西原宏一さんと、ザイFX!編集部がお届けする有料メルマガ、それが「トレード戦略指令!(月額:6600円・税込)」です。
「トレード戦略指令!」は登録後10日間無料解約可能なので、初心者にもわかりやすいタイムリーな為替予想をはじめ、実践的な売買アドバイスやチャートによる相場分析などを、ぜひ体験してください。
株主:株式会社ダイヤモンド社(100%)
加入協会:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)