■地政学リスクは東アジアへ、米ドル/円は110円決壊
みなさん、こんにちは。
先週(4月6日)のコラムを配信してから多くの報道が飛び出したので、まずそちらから。
【参考記事】
●ドル/円の上値重いが節目110円も割れず。話題の「忖度」と米ドル買いに関係が…!?(4月6日、西原宏一)
日本時間4月7日(金)午前10時過ぎ、米軍がシリアに対して巡航ミサイルによる攻撃を行った模様。
これを受けて一時、円は全面高となり、米ドル/円相場は一気に110円前半まで急落しました。
【参考記事】
●ミサイル攻撃でも崩れなかった米ドル/円、マジノ線死守で市場の雰囲気変わるかも?(4月10日、西原宏一&大橋ひろこ)
ただ、シリアの報道を受けても110円台前半の米ドル買い需要は引かず、米ドル/円は反発。結局、先週(4月3日~)の米ドル/円は「シリア情勢とは関係なく」反発し、111円台で引けています。
ところが今週(4月10日~)、地政学リスクがシリアから東アジアに移行します。
4月5日(水)に実施された北朝鮮のミサイル発射を受けて、米国は対北朝鮮への姿勢を徐々に硬化。

北朝鮮のミサイル発射を受けて、米国の姿勢は徐々に硬化。写真は急遽、朝鮮半島付近に展開することになった米国の原子力空母「カール・ビンソン」 (C)U.S. Navy/Getty Images
北朝鮮がシリアに続き標的となったとの報道が増えるに連れ、円高圧力が増し、本邦機関投資家の米ドル買い需要でせき止めていた、米ドル/円の110.00円が決壊し、さらなる円高の余地が拡大しました。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足)
■東アジアでの有事は本当に円高要因なのか?
ここでよく話題になる件ですが、東アジアでの有事は本当に円高要因なのかという問題。
マーケットがリスクオフに直面すると、「株安・円高」になると言われています。
この理由が円は「安全資産だから」と言われているのですが、そうではありません。
地政学リスクが発生した場合、本邦投資家が、海外資産を売却して円に戻すため、つまり、レパトリが起こるため円が買われるわけです。
そして問題は、「考えたくありませんが」日本が紛争に巻き込まれた場合も、本当にレパトリが起き、当事国の通貨である円は買われるのか?ということ。
これにはいろんな意見が入り乱れていますが、円高派のほうが優勢になっています。
【とんでもない有事に関する参考記事】
●1ドル=167円! ゴジラ上陸なら円安襲来!? でも、なぜ「有事の円高」にならないのか?
その理由は、2011年3月の東日本大震災時の円高。
あれだけの災害を受けたのですが、通貨は安くなるどころか、円は急騰しました。
対米ドルで円は一時8%も急騰しました。
【参考記事】
●米ドル/円が76.25円まで暴落! パニック相場の終息は当局の対応しだいか(2011年3月17日、西原宏一)

(出所:Bloomberg)
■東アジアの緊張が続く間、米ドル/円の反発は難しそう…
東アジアでの緊張は下記のように続きます。
・4月15日(土)には北朝鮮の故・金日成国家主席の生誕105周年
・4月25日(火)が北朝鮮軍創建85周年
東アジアで現実的に紛争が起きる、起きないに関わらず、緊張が高まると、どうしても円高に傾斜しやすくなります。
特に今週(4月10日~)は海外勢がイースター休暇に入ることで、流動性も悪化します。
シリア情勢とは関係なく、東アジアでの緊張が高まっている間は、米ドル/円の反発は難しそうです。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足)
■米ドル/円は108円台半ばにサポートが集中
110.00円をブレイクしたあとのポイントですが、以下の米ドル/円の日足チャートをご覧ください。

(出所:Bloomberg)
10年に一度のサプライズと言われた、昨年(2016年)6月のBrexit(英国のEU離脱)のときの安値から、同年12月の高値の50%戻しが108.84円。
200日移動平均線が108.75円。

(出所:Bloomberg)
そして、4月3日(月)に発表された日銀短観で、2017年度の想定為替レートは1ドル=108.43円。
このように108円台ミドルはサポートが集中しています。
前述の想定為替レートから考えれば、108円台ミドルがサポートとなり、反発してほしいところですが、東アジア情勢が緊迫を増すと、このレベルも割り込んでいく可能性も考慮したほうがいいかもしれません。
地政学リスクはシリアから東アジアに移行し、この緊迫が増すとさらなる円高圧力がかかることになります。
緊迫する東アジア情勢と、リスクオフによるさらなる円高に警戒です。
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