■フランス大統領選前、ユーロ/円暴落への警戒感が高まる
みなさん、こんにちは。
前回のコラムでご紹介させていただいたように、4月18日(火)に、英国のメイ首相が総選挙を6月8日(木)に前倒しして実施すると発表したことから、英ポンドクロス(英ポンドと米ドル以外の通貨との通貨ペア)は急伸。
【参考記事】
●メイ英首相の決断がゲームチェンジャーに? 英ポンドは対豪ドルやNZドルの動きに注目(4月20日、西原宏一)
英ポンド/NZドルは一気に1.87NZドル近くまで急騰しました。

(出所:Bloomberg)
英ポンド/円も大きく値を伸ばしましたが、対円での動きはまだ限定的でした。
それは、2017年最大の政治リスクと言われていた、フランス大統領選挙を4月23日(日)に控えていたため。
フランス大統領選での混乱は、昨年(2016年)6月のBrexit(英国のEU離脱)同様、通貨であるユーロの急落に加え、株の急落も引き起こすため、多くの投資家は、ユーロ/円でのヘッジに走ります。
オプションマーケットではユーロ/円の1カ月物のリスク・リバーサルが、マイナス6.7%まで急低下(※)。
(※編集部注:「リスク・リバーサル」とはざっくり言うと、ある一定の同一条件でオプションのコール(買う権利)とプット(売る権利)を同時に反対売買する取引のこと。理論的にはこのときのコールとプットの価格は同一になるが、市場参加者の相場観によって実際には同一にならない。このとき、その差の数値が市場参加者のリスク認識を示す指標として使われ、この指標も「リスク・リバーサル」と呼ばれている(以下のグラフ)。この数値がマイナスになっている場合、市場参加者のリスク認識が売り方向に優勢であることを示している)

(出所:Bloomberg)
簡単にいってしまえば、多少コストを払っても、ユーロ/円の暴落に備えざるを得なかったというほど、オプション市場ではユーロ/円急落に対する警戒感が高まっていたのでした。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/円 日足)
■フランス大統領選挙を無事通過し、リスクオン再開
しかし、1回目の投票結果はマーケットが一番好感する「マクロンVSルペン」という結末に。
この組み合わせですと、5月7日(日)に実施される決戦投票でもマクロンが勝利する可能性が極めて高く、メディアによっては早くも「マクロン新大統領」という表現も見られるようになります。
そして、この結果を受けて、マーケットは即座にリスクオンに。
まさかの事態に備えていたユーロ/円のヘッジはオプションも含めて、価値が急速に下がりますので、オプションのカバーに加え、ユーロ/円の急速な買い戻しが進み急騰。

(出所:Bloomberg)

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/円 日足)
先週(4月17日~)、急騰していた英ポンド/円も、レジスタンスだった140円台を回復し、一時143円台ミドルまで急上昇しました。
そして、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)の急騰に加え、東アジアにおけるリスクが一段落したため、米ドル/円も上昇開始。
リスクを嫌って待機していた投資資金もいっせいにマーケットに戻ってきており、米国株も日本株も急上昇。日経平均は1万9200円台をあっさり回復しました。

(出所:Bloomberg)
米ドル/円も一時、111円台ミドルまで反発。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足)
■本邦勢から英ポンド/円と米ドル/円に断続的な買い
昨年(2016年)同様、今年(2017年)も多くのリスク要因が指摘されています。
投資資金にとっては、前述のフランス大統領選や北朝鮮問題が注目されている時は株を筆頭としたリスクアセットになかなか資金を投入できません。
しかし、先週(4月17日~)、メイ英首相が決断したあと、本邦投資家から断続的に英ポンド/円と米ドル/円の買いがマーケットへ投入されたこと。加えて、今回のフランス大統領選を無事に通過したと同時に、彼らからユーロ/円と米ドル/円の執拗な買いがマーケットに投入されたことから判断すると、マーケットの不安要素がひとつずつ消えていくにしたがって、待機している投資資金がいっせいにマーケットに戻ってきたようです。
【参考記事】
●メイ英首相の決断がゲームチェンジャーに? 英ポンドは対豪ドルやNZドルの動きに注目(4月20日、西原宏一)
■リスクオンで米ドル/円は115円に向けて反発する公算
そして、昨年(2016年)から、英ポンド/円の動向が米ドル/円を牽引する傾向があります。その英ポンド/円は先週(4月17日~)から約8円急騰しました。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/円 4時間足)
以下は米ドル/円の日足チャートです。

(出所:Bloomberg)
このチャートから読み取れることは、
(1)200日移動平均線が108.99円に位置しており、終値ベースではこのサポートラインをキープしたこと
(2)Brexit時の安値(99.02円)と昨年(2016年)12月のFOMC(米連邦公開市場委員会)時の高値(118.66円)の50%が108.84円であり、終値ベースではこのラインをキープしたこと
(3)TDコンボ(※1)はセットアップとカウントダウンを終了し、ボトムアウトを示唆していること
(4)MACDプレディクター(※2)も上昇にクロスしており、反発を示唆していること
(※(3)と(4)については、著作権の関係で表示していません)
(※1 編集部注:「TDコンボ」とは、トーマス・R・デマーク氏が開発したテクニカル指標の1つ)
(※2 編集部注:「MACDプレディクター」とは、ジョー・ディナポリ氏が開発したテクニカル指標の1つ。MACDをローソク足の上に表示したもの)
フランス大統領選を無事通過した今週(4月24日~)のマーケットでは、日本の生保がヘッジはずしで、かなりの米ドルを購入したというウワサも流れてきています。
Brexitに続く最大の危機とまでウワサされたフランス大統領選を無事終えたことで、マーケットはリスクオンに回帰。
英ポンド/円の反発に先導され、米ドル/円は115円に向けて反発する公算が高まっています。
108円台でボトムアウトした米ドル/円の動向に注目です。
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