■ビットコインが急落して、すぐに急反発!
7月14日(金)~16日(日)にかけてビットコイン価格が急落し、その後、17日(月)には急反発しています。
まったく、なんてめちゃくちゃな値動きなんだ…!
1週間ほど前まで30万円付近で推移していたビットコイン/円は、一時20万円台にまで下落し、その後、25万円付近まで上昇。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ビットコイン/円 4時間足)
ビットコイン/米ドルは、一時1800ドル台まで急落し、その後、2200ドル台まで上昇しています。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ビットコイン/米ドル 4時間足)
ちなみに、この動きにつられて? イーサリアムなどのアルトコインも急落と急反発を見せているようです。
(出所:kraken)
■スケーラビリティ問題をめぐる一連のイザコザが原因?
これまでにも時々、仮想通貨リテラシー低めの記者には、なんだかよくわからない理由で暴落したり、暴騰したりしてきたビットコインですが、今回の激しい動きの原因はいったい何だったのか…?
情報が錯そうしている感もありつつ…ではありますが、ネット上で見つけたそれっぽい情報をかき集めて、原因などについて、ざっとお伝えしてみたいと思います。
100%正確な情報ではない可能性がありますので、その点はご了承ください。
今回のビットコインの激しい動きの原因は、おそらくスケーラビリティ問題をめぐる一連のイザコザ…。この問題への不安感の高まりからビットコインは急落し、不安感が後退したことで急反発したものと思われます。
■取引量の増加で、1ブロック=1MBじゃ足りない!
スケーラビリティ問題は、以前ザイFX!で公開した以下の【参考記事】でも少し触れた件ではありますが、改めてこの問題の概要を確認しておきましょう。
【参考記事】
●なぜ、ビットコインは急上昇してきたのか? 8月1日は運命の日! 暴落の可能性も!?
ビットコインは、ブロックチェーンと呼ばれる分散台帳システムのようなもので成り立っているのですが、このブロックチェーンのブロックにはビットコインの取引記録が書き込まれています。ただし、1つのブロックのサイズは1MBと決まっており、それ以上のデータを1つのブロックに書き込むことはできません。
【参考記事】
●ビットコインの衝撃(1) マネパでビットコインが買えるように!? そもそもビットコインとは?
以前は現状のサイズで特に問題なかったようですが、ここ数年でビットコインの取引量が急激に増加し、このままでは1ブロック=1MBのサイズ感では増加した取引量の処理が追いつかず、容量不足になるという事態に直面…(送金の遅延とかが起こるらしい)。なんとかして、解決策を施さなければ! ということになったワケです。これが、スケーラビリティ問題と呼ばれるもの。
■「SegWit2x」が優勢? 注目は7月21日と8月1日?
問題が何なのかがわかっているなら、誰だかわかんないけど(きっと世界中に点在するすんごい賢い人たち)、解決策をさっさと考えて対応してくださいよ…お願いしますよ……と、いちビットコインユーザーとしては思わないでもないのですが、問題はそんなに単純ではなかったようで…。
お伝えしたスケーラビリティ問題をどうやって解決するのか? という方法論でいくつかの勢力が対立する状況になってしまったのです。
今現状、残っている有力っぽい各勢力の案はこんな感じ。
ビットコインをハードフォークさせようとする勢力の案「UAHF(User Activated Hard Fork)」、ソフトフォークさせようとする勢力の案「UASF(User Activated Soft Fork)」、さらに、その真ん中?っぽい勢力の案「SegWit2x」。
<スケーラビリティ問題の解決案>
・ ハードフォークさせようとする勢力:「UAHF」
・ ソフトフォークさせようとする勢力:「UASF」
・ 真ん中?っぽい勢力:「SegWit2x」
ちなみにハードフォークとは、旧ルールと新ルールの互換性をなくし、旧ルールは一切つかえなくなるアップデートのことで、これは完全にビットコインが分裂することを意味します。
一方、ソフトフォークは、新ルールと旧ルールに互換性を持たせて、旧ルールも使えるようにしておくアップデートのことで、うまくいけば、従来のビットコインが分裂することなく、バージョンアップされたような形になり、うまくいかなければ、結局、ビットコインが分裂してしまう可能性があります。
以前、当コーナーでこれに関連する記事を取り上げた際には、スケーラビリティ問題の「解決手段として有望視されているのが「SegWit」(セグウィット)。ブロックに記述する『署名』(Witness)を、『隔離』(Segragated)することで1ブロックの容量を実質的に拡大させる方法」とお伝えしましたが、これは、3つの勢力のうち、ソフトフォークさせようとする勢力の案、「UASF」のことです。
【参考記事】
●なぜ、ビットコインは急上昇してきたのか? 8月1日は運命の日! 暴落の可能性も!?
「UASF」を支持する勢力は、「ユーザー主導で8月1日(火)からSegWitを導入しよう」と動いているということで、SegWit導入後、それがうまくいかず、結果的に、かつてイーサリアムが「ETH」と「ETC」の2つに分裂したようなハードフォークが起こってしまう懸念も高まっている…と、上の【参考記事】のタイトルも「8月1日は運命の日!」としたワケですが、ここへ来て、どうやら注目すべき日は7月21日(金)に早まっているみたい…?
■7月21日に「SegWit2x」は、世に放たれるらしい…
いったいどうしてなのか?
なぜなら、7月21日(金)に、真ん中?っぽい勢力の案、「SegWit2x」がソフトウェアをリリース、つまり解決案を世に放とうとしているからです。
専門用語度外視のイメージ先行な説明ではありますが、「SegWit2x」は、ソフトフォークさせようとする勢力の案、「UASF」をアレンジしたような感じで、SegWitの導入条件を本家「UASF」よりも少しやさしくし、かつ、一定期間経過後にハードフォークさせることが盛り込まれた案らしい。
7月18日(火)現在、世界中のマイナー(ビットコインを採掘する人)は、「SegWit2x」をもっとも支持しているそうで、7月21日(金)に「SegWit2x」が導入されるのは、ほぼ確実みたいな書き込みもウェブ上には散見されます。
どうやら、8月1日(火)を待たずに、注目日は訪れるらしい…。とりあえず、7月21日(金)は重要な日となりそうです。
■すぐにハードフォークはなさそう…。安心感で反発?
こうしたスケーラビリティ問題をめぐる一連のイザコザを振り返ってみると、ビットコイン相場は、「UASF」でSegWit導入後に、もしかしたらビットコインのハードフォークが起こってしまうのでは? との懸念を背景に6月以降ジリジリ下げていたものが、先週末からドバっと急落。
一部で、ビットコインのハードフォーク懸念を受けて、事前に円や米ドルなどの法定通貨に換金したり、イーサリアムやRipple(リップル)など別のアルトコインに退避させるみたいな動きも出ていたようですし、ビットコインのリスク材料は、たんまりとあった中での急落だったワケです。
もともと、アホみたいな急ピッチで上昇を続けてきていましたから、相場的には、いつ調整してもおかしくないでしょう…という感じでしたが…。
しかし、このままグダグダに崩れていくかと思いきや、「SegWit2x」優勢の報を受け、とりあえず、すぐにビットコインがハードフォークされることはなさそう…という安心感を得て、なんとか反発したように見えます。意外と底堅い…ビットコイン。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ビットコイン/円 日足)
とはいえ、「SegWit2x」は、一定期間経過後にハードフォークさせることが盛り込まれた案らしいので、いつかは必ずハードフォークの問題にブチ当たるんじゃない? みたいな気がしないでもない…。
「UASF」だって8月1日(火)に「SegWit」を導入するって言ってるワケで、これと「SegWit2x」の関係性はどうなるの? とかも気になりますし…(いろいろ見てみましたが、はっきりしたことが判明せず…)。
とりあえず、7月21日(金)の「SegWit2x」リリースや、もともと言われていた運命の8月1日(火)を経てビットコインがどうなるのか? 注目するほかありません。
ビットコインを保有するいちユーザーが混乱に巻き込まれないためにできることは、先ほども、ちらっと出てきましたが、事前に円や米ドルなどの法定通貨に換金したり、イーサリアムやRipple(リップル)など別のアルトコインに退避させるみたいなことが考えられます。
情報が錯そうしている中ではありますが、仮想通貨取引所などから出される情報をチェックし、騒動の最新情報を確認しておくとともに、もしもビットコインがハードフォークされてしまった場合などの混乱に備える準備も怠らないようにしておいてください。
■仮想通貨事業者協会、ビットコインの受入れと引出し停止へ
ちなみに、以前、ザイFX!でも取り上げた「日本仮想通貨事業者協会(JCBA)」(※)は、7月18日(火)夕方、「8月1日に予期されるビットコイン分岐危機に向けた対応について」とするお知らせを公開しました。
(※「日本仮想通貨事業者協会」とは、もともと銀行や証券会社、FX会社などの金融機関が日本国内で仮想通貨ビジネスを行うにあたり、必要な情報の調査・研究、情報交換などをすることを目的として、2016年4月に設立された一般社団法人。自主規制団体を目指している)
【参考記事】
●噂の仮想通貨勉強会にザイFX!が潜入。ビットコインETFは認可されず一時暴落!
同協会のお知らせによると、「UASF」がSegWitを導入する8月1日(火)、「ビットコイン・プロトコルの分岐が発生する可能性が高いと予想されております」とのこと。
これに伴い、日本仮想通貨事業者協会に加盟する仮想通貨交換業者13社は、「一時的にビットコインの受け入れ及び引出受付を停止することを決定」したそうです。
<ビットコインの受入れと引出しの受付停止日程>
受付停止 : 2017年8月1日(火)00:00
受付再開 : 未定
※状況に応じて、会員の判断により受付停止日時を繰り上げる場合がある
※8月4日(金)16:00までにビットコインの受入れおよび引出しの再開メドに関する更新を行う予定
この対応を取り入れる仮想通貨交換業者は、以下のとおり。
<ビットコインの受入れと引出しの受付停止を行う業者>
ビットバンク株式会社
株式会社ビットポイントジャパン
QUOINE株式会社
株式会社フィスコ仮想通貨取引所
コインチェック株式会社
BTCボックス株式会社
テックビューロ株式会社
GMO-Z.comコイン株式会社
株式会社CAMPFIRE
ビットトレード株式会社
バイクリメンツ株式会社
株式会社東京ビットコイン取引所
みんなのビットコイン株式会社
ここに、国内最大手の仮想通貨取引所・bitFlyer(ビットフライヤー)の名前はありません…。実は、ビットフライヤーは日本仮想通貨事業者協会の会員でもありませんので、独自に対応する感じでしょうか…。
また、Kraken(クラケン)は、協会の会員でもある大手仮想通貨取引所であり、ザイFX!でも同社からレート提供を受け、ビットコインチャートを掲載していますが、上記「ビットコインの受入れと引出しの受付停止を行う業者」13社の中には入っていません。協会員であったとしても、全社が全社、完全に足並みを揃えて対応するというワケではないようです…。
それにしても、ビットコインの受入れと引出しの受付再開日が未定って…。もしかしたら、とんでもない混乱に陥る可能性があるってことかも? 不安になります…。
ということで、何やら難しい話でチンプンカンプンという感じも受けますが、ひとまず、ビットコインを取引している人は、各仮想通貨取引所などから出される情報をチェックし、騒動の最新情報を確認しつつ、ビットコイン関連の混乱に備える準備も怠らないようにしておいてくださいね。
また、まだ自主規制団体としてお上に認められたワケではありませんが、その最有力候補っぽい日本仮想通貨事業者協会からのお知らせもチェックしておいた方が良さそうです。先ほどお伝えしたビットフライヤーを除けば、主要な仮想通貨取引所はだいたい加盟しています。最新情報は、協会のウェブサイトなどでチェックするようにしてくださいね。
本件、続報が入りましたら、また、お伝えしたいと思います。
本記事公開後のビットコイン相場とビットコインの分裂問題については、以下の記事もご覧ください。
【参考記事】
●BIP91っていったい何? 7月23日(日)が注目なワケは? どうなるビットコイン!?(2017年7月21日)
(ザイFX!編集部・向井友代)
株主:株式会社ダイヤモンド社(100%)
加入協会:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)