■ドラギ講演への期待剥落でユーロは調整入りか
今週(8月21日~)の注目は24日(木)から始まるジャクソンホール・シンポジウム。
3年ぶりに講演する、ECB(欧州中央銀行)のドラギ総裁からテーパリング(※)についてのヒントが出るのでは…というのが先々週(8月7日~)までのテーマでした。
(※編集部注:「テーパリング」とは、量的緩和政策により、進められてきた資産買い取りを徐々に減少し、最終的に購入額をゼロにしていこうとすること)
ところが先週(8月14日~)、「関係筋」のコメントとしてドラギさんは「金融政策に関する新たなメッセージは打ち出さない」と報じられたことで期待が収束していますね。
【参考記事】
●ジャクソンホールを前にドラギECB総裁講演への期待後退。ユーロ/円は調整局面入り(8月17日、西原宏一)
フランス大統領選のあった4月から17円近く上昇してきたユーロ/円ですが、この報道で水を差された格好に。
先週、8月17日(木)に発表された7月開催分のECB議事録では、ユーロ高に対する懸念の声もあがっていました。
ユーロ高のスピードがECBの想定よりも早すぎた、ということでしょう。IMM(国際通貨先物市場)を見てもユーロのロングがまだ積み上がったままですし、ユーロは調整局面入りと考えています。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/円 週足)
(詳しくはこちら → 経済指標/金利:シカゴIMM通貨先物ポジションの推移)
■イエレン講演とドタバタ続くトランプ政権
ジャクソンホールではFRB(米連邦準備制度理事会)のイエレン議長も講演しますね(日本時間25日23時)。
NY連銀のダドリー総裁が先週(8月14日~)、改めて年内利上げを支持しました。
足もとでは年内利上げの織り込み度の低下から米ドル安が進行しています。
でも、イエレン議長により利上げ継続の方針が改めて確認され、年内利上げの思惑が再浮上すれば、米ドルの買い戻しが進むということはないでしょうか?
ただ、トランプ政権ではドタバタ続き。先週(8月14日~)はゲイリー・コーン国家経済会議委員長の辞任観測が流れましたが結局、辞めたのはスティーブ・バノン上級顧問でした。
白人至上主義者とのつながりも深い「オルタナ右翼」であるバノンの辞任を、市場はポジティブに受け止めたようですが、トランプ政権の政策遂行能力に対する疑念は高まる一方です。
バノン辞任の報道を受けて、米国株は下げ幅を縮小しましたが、戻りきらないようだと、もう一段の調整が入りそうですね。
(出所:Bloomberg)
世界を見渡すとバルセロナでのテロ事件があり、フランスではマクロン大統領の支持率が就任直後の64%から36%まで急落。
北朝鮮の有事リスクも高まったままですし、今週(8月21日~)からは朝鮮半島有事を想定した米韓の合同軍事演習が始まりました。
9月5日(火)から再開される米議会での債務上限問題も悪材料ですよね。
■金は注目の1300ドルへタッチするも反落
トランプ政権だけでなく、世界的にバッドニュースが多く、市場は積極的にリスクをとっていくムードではありません。
日経平均も75日移動平均線を割り込んでおり、チャートの形状が悪化。メルマガ「FXトレード戦略指令!」ではすでにお伝えしたとおり、日経平均のショートポジションを作っています。
(出所:Bloomberg)
米ドル/円でも円高予想が増えてきましたよね。年内105円の声がチラホラと。
ただ、先週(8月14日)もお伝えした米ドルと逆相関にある金(ゴールド)は先週(8月14日~)、レンジ上限の1300ドルで跳ね返された格好。
一度は1300ドルを上抜けたのですが上ヒゲとなっています。もしも1300ドルを超えていくのなら米ドル/円は105円方向への動きとなりそうです。
【参考記事】
●「円高の極」終了ならドル/円は上昇へ。金と米ドル/円の相関性に注目すると…!?(8月14日、西原宏一&大橋ひろこ)
(出所:Bloomberg)
(出所:Bloomberg)
金の1300ドル超えも警戒しないといけないですし、マーケット全体がフラジャイル(脆弱)になっており、いつグラっときてもおかしくない。
市場を安心させるようなニュースが聞こえてこないし、どんなニュースなら市場が安心するのか、イメージもわきません。
ジャクソンホールをきっかけにセンチメントが好転する可能性はありますよね。
イエレン議長の講演で年内利上げが示されれば、米金利も上昇するのでしょうし。
たしかに例年、8月は金利が底打ちしやすい時期。米金利の上昇は米ドル/円の上昇に直結しますが、それも下支え材料程度かもしれません。
節目である112.50円を超えるほどの材料となるには米10年債利回りが2%台後半まで上がらないと難しい。
やはり、8月末に向けてリスクオフ方向への警戒を強めておきたいですね。
(出所:Bloomberg)
■リスクオフ警戒でユーロ/円のショートを継続
今週(8月21日~)の戦略はどう考えますか?
ユーロ/円のショート継続ですね。IMMではユーロのロングだけでなく、円のショートもたまっています。
そのため、ユーロの調整狙いなら対円がよいだろうと考えています。
(詳しくはこちら → 経済指標/金利:シカゴIMM通貨先物ポジションの推移)
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/円 日足)
ターゲットはどのくらいを見ていますか?
最初のターゲットとしては、4月からの上昇で引いたフィボナッチ・リトレースメントの38.2%である125円でしょうか。
(出所:Bloomberg)
(構成/ミドルマン・高城泰)
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