■完全に「ブレイク待ち」、先入観を持たない方が無難だが…
となると、足元の相場は完全にと言っていいほど、「ブレイク待ち」の状態だ。材料次第でどちらへでも動けるから、先入観を持たない方が無難であろう。
ユーロ/米ドルの1.2ドル大台の直接打診や1.16ドル節目割れのシナリオが両方あり得るように、状況は流動的である。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 日足)
しかし、やはり気になるのは市場の内部構造、またはポジションのバランスだ。足元、米ドルに対して弱気な見方が圧倒的ななか、果たして米ドル安が続くとしても、どれぐらいの余地があるだろうか。
CFTC(米商品先物取引委員会)の統計では、ヘッジファンドなど投機筋が持つ米ドルのネットショートポジションは積み上げられ、その規模はすでに2013年1月以来の最高水準に達した模様だ。となると、ショートポジションが偏っているだけに、米ドル安のトレンドが続いても、逆に下値余地は限定的では…といった思惑も出てくる。
実際、トランプ政権のゴタゴタに北朝鮮をはじめとした地政学リスクの圧迫もあって、2017年年初来、米ドルは対ユーロですでに11%の下げを記録、また、対円でも6.2%程度の下落を果たしている。米ドル安はすでにマイナスの材料を織り込み、また、行きすぎているのではないかという見方も少なくないようだ。
だから、今回のジャクソンホールをきっかけに、相場が反転してくるのでは…と一部の市場関係者は考えているようだ。何しろ、イエレン女史の発言が「意外」にタカ派基調になる可能性を排除できないから、ドラギ氏がユーロ高を牽制してくれば、両方セットで米ドルを押し上げる効果を発揮する可能性があるからだ。
もちろん、これらの予測はその他の見方と同様、「憶測」にすぎないが、現実味がないとは言い切れない。
■相場は、イベントの内容にかかわらず内部構造に従うことも
相場の歴史に照らして考えてみれば、トレンドの転換は往々にして何らかの材料をもって図られるが、その材料の出現自体がむしろトレンド転換の「ニーズ」に応えてくれた、といった経験や感触を得られる事例が多いことがわかる。言ってみれば、米ドル安の行きすぎがすでに確認されている以上、大きなイベントであるジャクソンホールはきっかけになる確率も高いわけだ。
驚くなかれ、時には重要なイベントの内容を問わず、相場は規定した内部構造に沿った形でトレンドを形成したり、また、トレンドを転換させたりしてきた。
最近の好例として、昨年(2016年)1月29日(金)に日銀が「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」を決定したあとの米ドル/円の値動きが記憶に新しい。イベントの内容自体は米ドル高・円安を示すものだったが、実際には大きな米ドル安・円高トレンドをもたらす結果となった。
これについて、事後的な解釈がいろいろ行われてきたが、今からみても不思議な感覚があるほどだから、内容に関わらず、大きなイベント自体が転換の節目になる可能性はやはり軽視できない。
■あえて言うなら、米ドル安一服に賭けてみたい!
最後に、冒頭で申し上げたとおり、相場はブレイク待ちの状態なので、どちらへのブレイクがあってもおかしくなく、必ずしも米ドルの反転があるとは言っていないことを強調しておきたい。
ただし、あえて言うなら、どちらの確率が高いと言えば、今回のジャクソンホールを機に、米ドル安が一服してくる可能性に賭けてみたい、というところではないか。
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(14:00執筆)
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