■ジャクソンホール待ちで市場は総じて保ち合い
夏バテというか、ジャクソンホール会議(年次経済シンポジウム)待ちなので、マーケットは総じて保ち合いの基調を保ち、静かな値動きを繰り返している。
ユーロ/米ドルは高値圏、米ドル/円は安値圏をそれぞれキープしており、イエレンFRB(米連邦準備制度理事会)議長やドラギECB(欧州中央銀行)総裁の講演待ち、という気配を市場関係者なら誰でも無視できないから、事前に無闇な仕掛けもなさそうだ。
(※編集部注:ジャクソンホール会議でのイエレンFRB議長の講演は日本時間で8月25日(金)23時から、ドラギECB総裁の講演は日本時間で8月26日(土)早朝4時からある)
■ドラギECB総裁の3年ぶりの参加に大注目の理由は?
ドラギECB総裁の講演がより注目される。
なにしろ、ECBの政策転換(正常化)に関する示唆の有無が市場の関心事である上、氏は3年ぶりのジャクソンホール経済シンポジウム参加であり、また、講演時間はイエレン氏の倍を予定(イエレン女史は30分程度、ドラギ氏は1時間の予定)しているだけに、何か大きな示唆を与えてくれるのでは…と市場関係者たちは固唾をのんで見守っている状態だ。
というのも、2014年にドラギ氏は同じくジャクソンホールにてQE(量的緩和)政策を示唆し、翌年(2015年)、ECBが量的緩和を開始した経緯があった。だから、QE政策終了の発表があるならば、今回のジャクソンホールがぴったりの場所では…と思われるのだ。
もちろん、「3年ぶり」ということは、前回の参加が2014年ということを意味する。ドラギ総裁のジャクソンホール訪問はただの講演で終わらない、という思惑があるのもそこがミソである。
前回(2014年)参加時に、QE政策を示唆したドラギECB総裁。そこから今回のジャクソンホール訪問は、ただの講演で終わらないのでは…という思惑を持たれている (C)Bloomberg/Getty Images
■イエレン・ドラギ両氏の行動に対する予測は3パターン
実際、WSJ(ウォール・ストリート・ジャーナル)紙はこのようなロジックを展開して、ドラギ氏の講演を重視し、ドラギ氏による政策正常化宣言を予想している。
反面、ロイターはイエレン氏もドラギ氏も大したヒントをくれず、平穏な講演を予想しているから、どちらもあり得る。
ところで、最近第三の見方も浮上してきた。すなわち、ドラギ氏は慎重に政策を推進していくから、政策転換について言わず、ユーロ高を牽制してくる可能性がある。逆にイエレン氏の任期は来年(2018年)1月までなので、大胆な発言ができるのでは…といった予想だ。
任期が来年(2018年)1月までのイエレンFRB総裁は、大胆な発言ができるのではないかといった予想も出ている (C) Bloomberg/Getty Images
イエレン氏の大胆な発言とは何か?と聞かれれば、利上げを正常化する発言になる可能性が高いから、それは米ドルを押し上げる材料になりそうだという。
いずれにせよ、以上の見方はすべて推測、あるいは思惑にすぎないから、FRBやECBトップの話を聞かないとわからない、というのが実情だ。
ちなみに今回、黒田日銀総裁もジャクソンホール会議に参加するが、講演の予定がないので、心配の余地はない上、仮に講演の予定があっても従来の主張を繰り返すと予想されやすいから、サプライズにはならないだろう。
となると、足元の相場は完全にと言っていいほど…
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