■ジャクソンホールを通過、次の焦点は米債務上限問題へ
注目されていたジャクソンホールですが、FRB(米連邦準備制度理事会)のイエレン議長からもECB(欧州中央銀行)のドラギ総裁からも核心を突くような発言は出ませんでした。
基本的には無風のはずですが、ユーロ高、米ドル安となっていますね。
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ジャクソンホールを控えて、いったんポジションを落としていた投資家が無事に通過したのを確認して買い戻したのでしょう。
マーケットは、ユーロを買いたくてしょうがなかった印象ですね。
マーケットが次に気にしているのがアメリカの債務上限問題。毎年のように騒がれる問題ですが、今回は大統領がトランプということで不安視する声が増えています。
いっそトランプ大統領が辞職するようなことがあれば、一瞬は急落してもペンス副大統領の昇格による政治の安定を期待して米ドル高が進みそうなのですが……。
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夏休みに入っている米議会ですが、再開は9月5日(火)。そろそろ議会関係者の発言も活発化しそうですね。
■危うい位置にいる米国株の急落はあるのか
最終的には今回も無事に通過するのでしょうが、途中、不安感の高まる局面も出てくるでしょう。
そのとき危ういのが米国株。世界最大規模のヘッジファンドの創業者であるレイ・ダリオが米国株に対して弱気に転じていますし、ヒンデンブルグ・オーメン(※)も点灯中でチャートの形状も悪い。
(※編集部注:「ヒンデンブルグ・オーメン」とは、米国株暴落の予兆とされるテクニカル的なシグナル。このシグナルは30営業日有効とされており、80%程度の確率で5%以上の下落が起きると言われている)
【参考記事】
●衝撃のバノン解任。ヒンデンブルグ・オーメン点灯で米株急落、ドル/円は108円下抜けも!?(8月24日、西原宏一)
(出所:Bloomberg)
NYダウの日足チャートを見ると、高値をうかがおうとしても上ヒゲで終わってしまう足が3本続いています。それにフィンランド最大の民間年金基金が米国株のウェイトを下げる、なんてニュースも出てきました。
運用規模6兆円弱の基金なので、そう大きなインパクトはないとは思いますが……。
(出所:Bloomberg)
ひとつが動くと他の年金も追随する可能性があるので、ちょっとイヤなニュースですね。もともと9月は株式市場が下げやすいアノマリーがあります。
今年(2017年)はアメリカの債務上限問題もあり、チャートの形状も悪く、レイ・ダリオが弱気に転換、年金基金も動き始めた。米国株の下落を示唆する材料が増えています。
米国株が下げれば、米国債が買われ米金利が低下するという経路をたどって、米ドル/円の下落材料となります。
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■ドイツとユーロ圏のCPIが注目
株安はクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)の下落圧力にもなりますよね。
ただ、クロス円の売りには選別が必要。ユーロ/円は強いでしょうし、豪ドル/円も意外と強いかもしれない。
今週(8月28日~)は、9月1日(金)に米雇用統計がありますし、注目したいのは8月30日(水)に発表されるドイツの消費者物価指数(CPI)と、31日(木)のユーロ圏消費者物価指数。
来週(9月4日~)、7日(木)にはECB理事会が控えていて、ドイツやユーロ圏のCPIで強い数字が出てくると、ユーロ買いが強まる可能性がありそう。
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ユーロについては中長期的には上昇するだろうと見ていますが、今年(2017年)1月3日(火)に1.03ドルの安値をつけて、1.20ドル手前まで上がってきました。
過熱気味ですし、1.20ドルにはバリアオプションもあります。短期的には反落に注意したい場面ですね。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 週足)
■米ドル/円は戻り売り目線で
年内のどこかでは「米ドルの逆襲」がありそうな感じもするのですが、もう少し先になるのかもしれませんね。
米ドルと逆相関にある金(ゴールド)を見ると、1300ドル近辺で高止まり…。いかにも「上抜けをうかがっています」という形になっています。
【参考記事】
●「円高の極」終了ならドル/円は上昇へ。金と米ドル/円の相関性に注目すると…!?(8月14日、西原宏一&大橋ひろこ)
(出所:Bloomberg)
上抜けに成功すれば米ドル安、反落すれば米ドル高になっているということですが、それを見極めるのが9月でしょうか。
9月は注目度の高いECB理事会やFOMC(米連邦公開市場委員会)の会合に加え、ドイツの総選挙や中国の共産党大会など政治イベントも多いので大きな動きとなりそう。
今週(8月28日~)はユーロ圏のCPIもありますが、個人的に注目したいのはアメリカの債務上限問題の行方と米国株の動向。
米国株が急落するようだと、これまでサポートされてきた米ドル/円の108円を割れるリスクもあります。米ドル/円の戻り売りを狙っていきたいですね。
(構成/ミドルマン・高城泰)
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