■ドラギ総裁会見はハト派。ユーロ/米ドルはサポート下抜け
10月26日(木)に、ECB(欧州中央銀行)理事会がありました。
政策金利を据え置き、月間の資産買い入れ額を現在の600億ユーロから300億ユーロに縮小し、買い入れ期間を9カ月延長することが決定されました。これは、市場のコンセンサスどおりの内容でした。
【参考記事】
●次期FRB議長は誰か? パウエル理事ならややドル売り、テイラー教授ならドル高に(10月24日、バカラ村)
しかし、ドラギECB総裁の会見では、今回の決定は「テーパリング(※)ではなく、債券の購入規模縮小」との発言があり、状況によっては「資産買い入れを増額する可能性」が示唆され、ハト派な内容となりました。
(※編集部注:「テーパリング」とは、量的緩和政策により、進められてきた資産買い取りを徐々に減少し、最終的に購入額をゼロにしていこうとすること)
これを受けてユーロは下落し、ユーロ/米ドルは長くサポートされ続けていた1.1660ドルを下抜けました。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 日足)
■ユーロ/米ドル、短期的には調整示唆も戻り売りへ
テクニカル的にユーロ/米ドルはもみ合いを下抜けたこともあり、まずは節目の1.1500ドルを目指す動きが予想されます。
短期的には下落スピードが速かったこともあり、4時間足チャートでは調整を示唆していますが、1.1670ドルや1.1725ドルにはレジスタンスができており、そのあたりでは上値が抑えられるのではないかと考えています。
(出所:Bloomberg)
基本的に、ユーロ/米ドルは戻り売りの展開が続くのではないでしょうか。
■米税制改革への期待後退。法人税は段階的引き下げ!?
10月30日(月)の海外時間は、昨年(2016年)の米大統領選でトランプ陣営の選対会長を務めた人物らが起訴されたと伝わり、ロシアゲート疑惑が材料となりました。
さらに、米共和党下院の税制改革案が11月1日(火)に発表される予定の中、「法人税を2022年まで段階的に引き下げることを検討している」と報じられました。
市場が期待していた税制改革よりも弱い内容となるため、これを受けて米国株が軟調に推移し、円買いの動きとなりました。
【参考記事】
●米大型減税の行方がマーケットの関心事。米ドル/円118円上昇のカギを握るのは…!?(10月19日、西原宏一)
(出所:Bloomberg)
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 30分足)
米ドル/円は一時、113.02円まで下がりました(※)。
(※編集部注:本記事の寄稿後、10月31日(火)の東京時間に米ドル/円は一時、112.98円付近まで下落した)
■米ドル/円は下がれば買われるけど上昇厳しい…
米ドル/円は、生保(生命保険会社)などの買いが控えていることから急落リスクは低いものの、株式市場が調整の動きとなり始めたことや、114円~115円のレジスタンスで上昇を止められたこと、さらに、IMM(国際通貨先物市場)における投機筋の米ドルに対する円の売り越しが約11.7万枚まで積み上がっていることなどから、上昇するには厳しい状況となっています。
(出所:Bloomberg)
(詳しくはこちら → 経済指標/金利:シカゴIMM通貨先物ポジションの推移)
引き続き、114円台に上昇すれば、利食いの売りが上値を抑える展開は続きそうです。
また、後述しますが、今週(10月30日~)の週末からはトランプ大統領のアジア歴訪が予定されており、北朝鮮の地政学リスクが高まります。
【参考記事】
●衆院選後の株価上昇は長くは続かない!? 米ドル/円は114円台半ばにレジスタンス(10月25日、松田哲)
●テイラー氏がFRB議長でもドル高は一時的!? 米大統領の訪日迫る。ポジション整理へ!(10月27日、今井雅人)
したがって、来週(11月6日~)からはさらに、米ドル/円の上値は抑えられやすいことになります。
下がれば買いが出てくるものの、上昇するのも厳しい状況だといえます。
■利下げがあってもなくても英ポンドは下落か
今週(10月30日~)はイベントが多く、本日31日(火)は日銀金融政策決定会合、11月1日(水)はFOMC(米連邦公開市場委員会)、2日(木)には英MPC(金融政策委員会)が予定されています。
さらに、FRB(米連邦準備制度理事会)新議長の発表も予定されています。また、3日(金)には米雇用統計があり、週末からはトランプ大統領のアジア歴訪が始まります。
FOMCは、経済・物価見通しの公表やイエレンFRB議長の会見がないため、声明文に注目が集まりますが、こちらは無風通過の可能性が高いです。
英MPCに関しては、利上げが予想されています。しかし、Brexit(英国のEU離脱)による英国の景気鈍化から連続利上げは難しいことを踏まえると、利上げをしてもしなくても、英ポンドは売られるのではないかと考えています。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/米ドル 日足)
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/円 日足)
もっとも、英国の消費者物価指数が高いことから、同時に公表されるインフレレポートが注目され、その中に今後も利上げをしていく可能性が示されているようであれば、英ポンドは底堅い展開となってしまうことになります。
■FRB議長はパウエル氏優勢。ユーロ/米ドルの売りで
次期FRB議長は11月2日(木)に発表される予定と伝わっていますが、現在はパウエル氏が指名されるとの見方が優勢となっています。
ただ、米国の金融政策が大きくは変わらないことを考えると、パウエル氏が選ばれても米ドル売りは短期で終わるのではないかと考えています。
【参考記事】
●次期FRB議長は誰か? パウエル理事ならややドル売り、テイラー教授ならドル高に(10月24日、バカラ村)
●次期FRB議長は誰? そしてドル/円は…!? 雇用の最大化をめざすとなぜ通貨安になる?(10月30日、西原宏一&大橋ひろこ)
●注目集まる「テイラー・ルール」とは? テイラーFRB議長誕生なら米金利は3%に!?
今週(10月30日~)は材料が多いですが、ユーロ/米ドルはテクニカル的に下抜けしていることや、ドラギECB総裁の会見からユーロ高にはしたくないとの姿勢がうかがえ、景況感も米国の方が好調ということもあって、ユーロ/米ドルの売り(ユーロ売り・米ドル買い)がいいのではないかと考えています。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 日足)
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