(「【超初級】 ビットコイン・仮想通貨入門(4)ブロックチェーンって結局、何なの!?」からつづく)
■ブロックを鎖につなぐとビットコインがもらえる!
ところで、ビットコインは中心となって管理している人がいないのに、ブロックを鎖につなぐ作業(取引の承認作業)とか、なんでやってくれる人がいるの? ボランティア?
いえいえ、そうではありません。ナカモト氏の論文には、ちゃんと「Incentive(インセンティブ)」という項目があり、その作業を手伝ってくれた人にはインセンティブが出るしくみになっています。
前回の記事で紹介した、ブロックチェーンのイメージ図を見てみましょう。
【参考記事】
●【超初級】 ビットコイン・仮想通貨入門(4)ブロックチェーンって結局、何なの!?

ブロックの中に、「nonce(ナンス)」という項目がありますよね。この「nonce」は、ザックリ言うと計算の「答え」です。プログラムによって自動的に条件が指定され、取引の承認作業では、その条件を満たす「答え」を計算します。
そして、「答え」が出るとブロックが鎖につながり、そのブロックに含まれる取引情報が承認されてビットコインの移動が完了するというわけです。
この「答え」を一番に見つけると、「インセンティブ」としてビットコインがもらえるんですね。
■マイニングは、ビットコインの唯一の新規発行方法
でも、管理者もいないのに、いったい誰がインセンティブをくれるの?
実は、ナカモト氏が公開したビットコインのアプリケーションプログラムには、ビットコインの唯一の発行方法として、「新しいブロックの生成時に、新規のビットコインが発行される」というしくみが組み込まれています。
「答え」を探し当てると、どこかの誰かがインセンティブとして、ビットコインをくれるというのではなく、元々そういうしくみになっているんですね。
そして、この「答え」を探し当てる作業が、いわゆる「マイニング(採掘)」と呼ばれているものです。報酬として既存のビットコインをもらうのではなく、作業の結果、新たに「生み出す」ところが、マイニングと呼ばれるゆえん。
実際に、ナカモト氏も論文の中で、ビットコインを新規発行するしくみを、以下のように金の採掘にたとえています。
The steady addition of a constant of amount of new coins is analogous to gold miners expending resources to add gold to circulation.
(出所:bitcoin.org 「サトシナカモトの論文「A Peer-to-Peer Electronic Cash System」より抜粋)
■マイニング競争が激し過ぎて、マイナー同士徒党を組む
ちなみに、2017年12月15日現在のインセンティブ額は、1ブロックあたり12.5BTC。1BTC=200万円としたら2500万円ですよ! 2500万円!!
ぜひとも参加したいけれど、早い者勝ちの計算なんて、よっぽど頭がいい人じゃないとムリ? 全世界の辣腕プログラマーがパソコンの前に待機して…なんて絵が浮かんできそうですが…。
実は、その計算というのは、頭の良し悪しで決まるものではなく、答えの候補をいくつもいくつも出して、当てはまるかどうかを試していくというチカラ技系。ですから、マイニング事業社がたくさんの専用コンピュータを使って、自動的に計算させ続けているというのが実情のようです。

中国のBitmain社が運営するマイニング施設内部。この施設は内モンゴル自治区にあるそう。広大な敷地に専用の建物をいくつも建て、その内部で無数のマシンを稼働。日夜マイニングが行なわれているみたい。なんともスゴい規模感…! (C)Bloomberg/Getty Images
そして、この答えを探し出す計算は、10分程度で終わるように難易度が調整されています(実際は、かなり誤差があるようですが…)。一般的に、「ビットコインの取引が承認されるまでに10分くらいかかる」と言われるのは、このためなんですね。
なお、現在は、マイナー(採掘者)の数が多過ぎてインセンティブをもらえる確率がものすごーく低くなっているそう。1人でコツコツ、マイニングするなんていうのは、現実問題として、かなりハードルが高いみたい。
そこで、ビットコインのマイナー同士でグループを組んで「マイニングプール」を作り、同じマイニングプールの誰かが採掘に成功すると、貢献度(出した答えの候補の量など)によってビットコインが分配されるというように、チームでマイニングに臨むスタイルが主流になっているようです。
余談ですが、bitFlyer(ビットフライヤー)が運営する「chainFlyer」というコンテンツでは、マイニングによってブロックチェーンがつながっていく様子がビジュアル化されています。おもしろいコンテンツですので、興味がある人は、ぜひチェックしてみてください。
【参考記事】
●ハードフォーク前倒し!! 新たに誕生したビットコインゴールドがもらえる取引所は?
(出所:bitFlyer)
上の画像は、マイニングによってビットコインが新規発行された瞬間です! 画面下の方にあるカラフルなアイコンが新規発行されたビットコインを表しています。
カラフルなアイコンの横の数字、「16.17032523」は、「マイニングされた12.5BTC+受け取った送金手数料の合計」です。つまり、このマイナーはこのマイニングによって、16.17032523BTC得ることができたということですね。
そのほかの数字がついたアイコンは、ビットコインの承認前の取引(トランザクション)を、直方体の箱はブロックチェーンのブロックを表しています。
■ビットコインは2100万BTCしか発行されないけど?
1ブロックあたり2500万円(1BTC=200万円の時)もの報酬が得られるなら、みんなものすごくがんばってマイニングしそうですが、マイニングは永遠にできるわけではありません。
実は、ビットコインは、約2100万BTCしか発行されないことが、あらかじめ決められています。
さらに、21万BTCごとに、1回あたりの採掘量(インセンティブ量)が半減する(半減期と言ったりする)よう、プログラムされているのです。
最初は、1回のインセンティブが50BTCだったのですが、現在は12.5BTCですから、すでに2回半減されたことがわかりますね。
これは、インフレを防ぐための策だそうです。報酬が減るのはマイナーにとってはイタい話ですが、その分、ビットコインそのものの価値が上がっていればいいわけですから、少なくとも今のところ、このしくみは成功しているのではないでしょうか。
また、ぜーんぶ採掘し終わっちゃったら、インセンティブ目的で採掘してくれる人がいなくなっちゃうのでは?と心配になりますが、その場合は、取引利用者が支払う手数料(任意のため、現在はかなり少額みたい)が上がっていって、それを目的に、取引の承認作業が行なわれ続けるのではないか、と予測されているようです。
【参考コンテンツ】
●ビットコイン・仮想通貨の取引所/販売所を比較。取引コストが安いのはどこ?
(「【超初級】 ビットコイン・仮想通貨入門(6)マウントゴックス事件はどんな事件だった?」へつづく)
(ザイFX!編集部・上岡由布子)
【目次】 【超初級】 ビットコイン・仮想通貨入門
■【第1回】 そもそも、ビットコインとは何なんですか?
■【第2回】 「電子マネー」と「仮想通貨」の違いとは?
■【第3回】 円などの「法定通貨」と「仮想通貨」の違い
■【第4回】 ブロックチェーンって結局、何なの!?
■【第5回】 マイニングとはいったい何をしているのか?
■【第6回】 マウントゴックス事件はどんな事件だった?
■【第7回】 ビットコインアドレスはなぜ匿名性が高い?
■【第8回】 ビットコインはどうやって手に入れるの?
■【第9回】 ビットコインの値動きの要因は何だろう?
■【第10回】 利益に税金はかかる? 詐欺や盗難に注意
株主:株式会社ダイヤモンド社(100%)
加入協会:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)