■黒田砲がビットコインを直撃!?
「(ビットコインは)単なる投機の対象となっている。異常に高騰しているのは事実だ」と日銀の黒田東彦総裁が発言したのは12月21日(木)のこと。その翌日、黒田砲が直撃したわけではないだろうが、ビットコイン(BTC)は一時、130万円近辺まで暴落した。5日前につけた230万円付近の高値から約100万円の急落だ。

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何がこの急落を引き起こしたのか――ここでは3つの可能性を考えてみよう。
■CME上場をターゲットとした「セル・ザ・ファクト」
ビットコイン急落の理由、ひとつめは「セル・ザ・ファクト」だ。
ビットコインが100万円に達したのは11月25日(土)のこと。その後、12月7日(木)には早くも200万円に達するなど、異常としか言えない上昇の背景にあったのは、CBOE(シカゴ・オプション取引所)およびCME(シカゴ・マーカンタイル取引所)へのビットコイン先物上場期待だ。
【参考記事】
●ビットコイン/円が瞬く間に80万円突破! 米CMEがビットコイン先物上場計画を発表
●ビットコインがついに100万円を突破!! CME上場とハードフォーク期待が背景に!?
●ビットコイン/円がついに200万円突破!! CMEビットコイン先物は日本で取引できる!?
12月11日(月)にCBOEへ、18日(月)にはCMEへ上場を果たし、広瀬隆雄さんが言うところの「機関投資家が参戦できる下準備」は完了した。
【参考記事】
●ビットコイン先物上場! ビットコインETF上場なら大量の機関投資家マネーが流れ込む!?(広瀨隆雄)

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とはいえ、CME、CBOEともに出来高は小さいようだ。ビットコイン先物は、先物だから当然、売りから入ることもできるため、それがビットコイン相場の下落要因になっていると考える向きもあるようだが、出来高が小さいことから、そのような影響はあっても限定的ではないだろうか。
ただ、ビットコイン先物上場前から、上場期待で買っていたトレーダーはたくさんいたわけで、それらのトレーダーが実際に上場を果たしたことで利益確定売りに動く、いわゆる「セル・ザ・ファクト」の動きが起こったと考えるのは、FXトレーダーならば飲み込みやすいシナリオだろう。
■ビットコインの神がビットコイン潰しに動く!?
ビットコイン急落の理由、2つめは「ビットコインキャッシュ(BCH)」の存在だ。7月末のハードフォーク(分裂)により発生したビットコインのフォーク通貨であるビットコインキャッシュは、一部に熱烈な信者を抱えている。
【参考記事】
●ビットコインキャッシュの特徴とは? 神様も推奨!? ビットコインを超えるかも!
●ビットコインは、8/1のハードフォーク後に最高値更新! ビットコインキャッシュとは?
日本ではSBIホールディングス社長の北尾吉孝氏がビットコインキャッシュ支持派だし、世界では「ビットコイン・ジーザス」の異名を持つロジャー・バーが支持派の代表格。今回のビットコイン急落の背景にもロジャーの影がチラつく。
「ビットコインに未来はない」、「ビットコインキャッシュに乗り換えた」と発言したのは、ビットコインウォレットの提供などを行なう「Bitcoin.com」のCTO。この発言が伝わったのは、ビットコイン急落が始まった12月19日(火)だ。
「Bitcoin.com」のCEOはロジャー・バー。それを思えば、同じ会社のCTOがビットコインをディスり、ビットコインキャッシュを賛美するのは当然だが、今回の発言は(ロジャーから見れば)タイミングがバツグンだった。
■ビットコインの「取引づまり」がキャッシュ買いを誘発か
同じ時期、ビットコインには大きな問題が持ち上がっていた。「取引づまり」だ。
ビットコインの取引はブロックチェーンに記録されることで承認されるのだが、この承認待ちの取引が12月22日(金)時点で30万件近くに膨れ上がっている。その3日前でも20万件と大量だったのが、さらに増加しているのだ。ビットコインの平均送金手数料を見ても、1取引あたり50ドルを超えるほど高騰している。
ビットコインやイーサリアムなどが盛り上がるほど、実需のほか、投機目的の送金も増える。本来ならば、マイニングの「難易度調整」によってビットコイン取引の承認が遅延しないよう設計されているのだが、取引の増加ペースがあまりに急だと難易度調整が間に合わず、今回のような取引づまりや手数料の高騰が起きてしまう。
こうした問題をマーケットが懸念しているところへ、「ビットコインに未来はない」、「ビットコインキャッシュに乗り換えた」といった発言が出れば、「じゃあビットコインは売っておこう」と考える人も出てきて不思議はないだろう。
実際、ビットコインが急落し始めた12月19日(火)から翌20日(水)にかけてビットコインキャッシュは急上昇している。ただ、12月21日(木)以降はビットコインもビットコインキャッシュもともに大きく下落しているが…。

(出所:GMOコイン)
一方、他ならぬ日本がビットコイン急落の震源地と…
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