■為替市場は要人発言で乱高下!
先週(1月22日~)は、要人発言で為替市場が乱高下する場面が多かったです。
1月24日(水)に、ムニューシン米財務長官は世界経済フォーラム年次総会、ダボス会議の記者会見で、「貿易にとって米ドル安は良い」と発言しました。
それまで米ドル安が進んでいたところに、このムニューシン米財務長官の発言が米ドル安を加速させ、米ドル/円は110.15~111.50円の中段もみ合いを下抜け、110円のサポートも下抜けてきました。
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翌日も、ムニューシン米財務長官は米ドル安を容認する発言を繰り返していましたが、為替操作となるような発言は、G7(先進7カ国)やG20ではルール違反とされています。
【参考記事】
●ファンド勢は米ドル安政策への転換を察知していた!? 今後は神経質な動きに警戒を!(1月25日、今井雅人)
●ムニューシン騒動でドル安は一服!? 米国がドル安を国策にできない理由とは?(1月26日、陳満咲杜)
25日(木)には、ECB(欧州中央銀行)理事会後の記者会見でドラギ総裁が、ムニューシン米財務長官の発言を批判しており、さらに、トランプ大統領は「強い米ドルを望む」と、火消しを行いました。
これにより、米ドル/円やユーロ/米ドルは、乱高下を繰り返しました。
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■海外勢は円買いを仕掛けたがっている!?
1月26日(金)には、黒田日銀総裁が「2%のインフレ目標達成が近い」と発言したことで、海外勢からテーパリング(※)期待が高まり、米ドル/円は108.28円まで下落しました。
(※編集部注:「テーパリング」とは、量的緩和政策により、進められてきた資産買い取りを徐々に減少し、最終的に購入額をゼロにしていこうとすること)
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この発言で円高が進んだため、黒田総裁はすぐに「インフレ見通しを修正したわけではない」と発言しました。しかし、米ドル/円の戻りは弱く、109円台前半止まりの展開です。
日本勢は、日銀がテーパリングを開始するのは、まだまだ先だと理解していますが、この米ドル/円の動きを見ていると、海外勢は日銀の出口論を材料に、円買いを仕掛けたいと考えているように思います。
【参考記事】
●ヘッジファンドの狙いは「日銀トレード」!?ドル/円は戻り売り継続で107円台前半へ…(1月29日、西原宏一&大橋ひろこ)
今後も、日銀からテーパリングの可能性が「少しでも」みられると、円買いの動きが出てくるものと思います。
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■ユーロ/米ドルは長期上昇トレンドが期待できる展開に
1月25日(木)のECB理事会では、フォワードガイダンスの変更はありませんでしたが、3月に変更される可能性は出てきています。
さらに、ユーロ圏の景況感の良さもあって、ユーロは底堅い展開が続いています。
ユーロ/米ドルの週足を見ると、1.03ドル台で大底を打ち、中段もみ合いとなる1.21ドルも越えてきているため、まだ長期の上昇トレンドは期待できそうです。
【参考記事】
●ユーロ/米ドルに1.26ドルまでの上昇余地! 米ドル/円は季節的に上値が重い時期!?(1月16日、バカラ村)
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■今週はトランプ大統領の一般教書演説に注目!
今週(1月29日~)は、日本時間31日(水)の午前中に、トランプ大統領の一般教書演説があります。
ここで、トランプ大統領が何を話すかに注目が集まっていますが、インフラ投資や貿易に関する話が出てくるのではないかと言われています。
日本時間の1月31日(水)にトランプ大統領は一般教書演説を行う予定。インフラ投資や貿易に関する発言が出てくると思われるが… (C) Chip Somodevilla/Getty images
インフラ投資に関しては、10年間で1.7兆ドルもの計画が発表されるのではないかと言われていますが、具体的な内容は出てこないと思われます。
保護主義政策に関して、貿易の不公正に言及する内容が出てくるようであれば、円高・ユーロ高・米ドル安に進む可能性が高くなります。
【参考記事】
●米通商問題が争点となり米ドル安が進む。ドル/円は110円が決壊! 次は105円へ…!?(1月25日、西原宏一)
先週(1月22日~)、トランプ大統領はセーフガード(輸入禁止措置)を発動する大統領令に署名したので、中国との貿易戦争になりつつあります。
その点からも、一般教書演説で貿易に関する発言が出てくる可能性があり、そうであれば、米ドル安に推移する可能性が出てきます。
■米ドル/円は107円台半ばをターゲットにした戻り売り
米ドル/円は、大きなレンジとしては107~115円ですが、黒田総裁の発言もあり、海外勢は円高に仕掛けたいと考えているため、昨年(2017年)9月の安値(=2017年安値)、107.32円を下抜ける可能性があります。
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まずは、110円までの戻りをメドに、107円台半ばをターゲットにした、戻り売りではないかと考えています。
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