■1月相場は円高と米ドル安
2018年1月の為替相場では、日銀のテーパリング(※)期待や、黒田日銀総裁がダボス会議(世界経済フォーラム年次総会)で「2%のインフレ目標達成が近い」と発言したこともあって、海外勢は円買いを仕掛けていました。
(※編集部注:「テーパリング」とは、量的緩和政策により、進められてきた資産買い取りを徐々に減少し、最終的に購入額をゼロにしていこうとすること)
さらに、ムニューシン米財務長官の米ドル安容認発言や、米国のセーフガード(輸入禁止措置)発動もあって、貿易戦争の可能性から米ドル安が進み、米ドル/円は1月26日(金)に108.28円まで下がりました。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)
■テーパリング期待の後退や米雇用統計で米ドル/円は反発
しかし、ムニューシン米財務長官はその後、「米ドル高を支持する」と、米ドル安を容認した自身の発言を修正しました。
日銀のテーパリング期待に関しても、日銀が1月31日(水)に3年超5年以下の国債の買い入れを300億円増額し、2月2日(金)には無制限の指値オペを実施しました。
これによって、黒田日銀総裁の発言を受けたテーパリング期待もなくなり、円買いは仕掛けづらくなりました。そこから米ドル/円は下がらなくなり、2日(金)の米雇用統計が良かったことも重なって、一時110.48円まで上昇しました。
【参考記事】
●日本勢は日銀のテーパリングはまだ先と思っているのになぜ、円は買われるのか?(1月30日、バカラ村)
米長期金利(米10年物国債の利回り)も上昇し、一時2.88%台まで上がってきました。
(出所:Bloomberg)
■米ドル/円、しばらくは108~112円のレンジ推移か
ここまでの市場の注目は、貿易戦争の可能性や日銀のテーパリング期待でしたが、米長期金利の上昇が急だったこともあり、こちらに注目が移ってきています。
米雇用統計は良い数字が出ましたが、米長期金利が急騰したため、株式市場はネガティブに反応し、日経平均やNYダウは下落が続いています。
(出所:Bloomberg)
(出所:Bloomberg)
米長期金利はゆっくりとした上昇であれば問題ないのですが、急騰が続くようであれば、株価にとってネガティブとなり、リスク回避の動きから、為替市場は円買いに動くことになります。
米ドル/円は、今回も108円台でサポートされて反発したことになり、海外勢による日銀のテーパリング期待や米ドル安の動きが止まったこともあって、しばらくは方向感のない推移となりそうです。
【参考記事】
●米ドル安はやり過ぎだった!? 米ドル/円の108円台が当面の底だと考える理由は…?(2月1日、今井雅人)
●NYダウは665ドル安! 日経平均も大幅安! それでも米ドル/円が下げなかったワケは?(2月5日、西原宏一&大橋ひろこ)
米長期金利が急騰すれば、リスク回避から米ドル/円は下落しますが、ここから米長期金利がさらに急騰するほどの材料はないと思われるので、今後、数週間は108~112円のレンジ内での推移となりそうです。
(出所:Bloomberg)
■ユーロ/米ドルの買いが手仕舞いされやすい!?
米長期金利の上昇から株価が下がり、リスク回避の米ドル高となっていることもあり、ユーロ/米ドルは短期的に下がりそうだと考えています。
株価が急落しているため、利益のあるものを利食いする動きが出てくると思われます。ポジションが偏っているものは手仕舞いされやすいため、ユーロ/米ドルの買いが手仕舞いされやすいのではないかと思い、ユーロ/米ドルの下げが期待できるのではないかと考えています。
(詳しくはこちら → 経済指標/金利:シカゴIMM通貨先物ポジションの推移)
ユーロ/米ドルは、1.2330ドルがサポートとして機能していますが、ここも割れる可能性が高いのではないかと考えています。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 4時間足)
■資源国通貨に対する米ドル高相場へ
ユーロ/英ポンドやユーロ/豪ドルなどのユーロクロス(ユーロと米ドル以外の通貨との通貨ペア)を見ると、ユーロが相対的に強く、さらに、リスク回避となると資源国通貨が売られやすいため、NZドル/米ドルや米ドル/加ドル、豪ドル/米ドルでの米ドル買いが良いように思います。
NZドル/米ドルは、昨年(2017年)9月以降、0.7450ドルで上値を抑えられています。まだ、0.7280~0.7430ドルのレンジですが、ユーロ/米ドルが調整するのであれば、こちらも下げが期待できるように思います。
(※編集部注:本記事の寄稿後、編集作業中にNZドル/米ドルは一時、0.7257ドル付近まで下落した)
(出所:Bloomberg)
また、米ドル/加ドルは、高値と安値を切り下げる動きを、米雇用統計をきっかけに上方へブレイクしており、これは上昇を示唆する形になります。
(出所:Bloomberg)
豪ドル/米ドルは、すでに下がってきていますが、豪ドル/円と同様、以前のサポートがレジスタンスとなっている状況なので、こちらも下げが期待できそうです。
(出所:Bloomberg)
ここまでは米ドル安相場でしたが、市場の注目が米長期金利に移ったため、流れが変わっており、リスク回避の動きがまだ出る可能性もあるため、資源国通貨に対して米ドル高の動きが期待できそうです。
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