■「パウエルが話すと株価が落ちる」法則がまたも…
4月6日(金)のNYダウは、一時700ドル以上の急落となりました。
米雇用統計が予想を下ブレしたこともありましたが、原因は、やはり米中通商問題でしょうか?
(出所:Bloomberg)
株価が下げ始めたタイミングには、ちょうどFRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長の講演が行なわれていました。
冗談半分に言っていた「パウエルが話すと株価が下げる」法則が今回も的中した格好です。
ただ、やはり、主因は米中貿易摩擦。4月6日(金)には、中国商務省が「強力な反撃を」と発言したかと思えば、トランプも「中国は不公正な貿易を終わらせるべきだ」とツイートするなど、報復関税と口撃の連鎖が続いています。
【参考記事】
●パウエル議長が話すと株下落の法則発動!? 株のチャート形状悪化! 米ドル/円は…?(3月26日、西原宏一&大橋ひろこ)
ところが、米国株が崩れている割には為替への影響は小さいようですね。
株と違って、米ドル/円は、2018年1月からずっと下げてきました。マーケットが、すでに円ロングに傾いているのか、下値が堅いですね。
(出所:Bloomberg)
IMM(国際通貨先物市場)も、2016年11月以来の円ロングに転じました。2月までは、10万枚を超える円ショートだったのですが…。
(詳しくはこちら → 経済指標/金利:シカゴIMM通貨先物ポジションの推移)
個人的に気になるのは、多くの為替の専門家がベア(下落)予想に転じていること。
また、外国人は、2001年から17年連続で4月に買い越していることもあって、今月(4月)は、いったん戻すのではないかと思っているのですが、米ドル/円は107.50円にも届いていません。
(出所:Bloomberg)
■安倍首相の訪米直前、為替報告書の発表
通商問題に関連して、4月15日(日)前後には米財務省の為替報告書が発表される見通しです。
前回、10月発表時には日本も監視リストに入っていました。来週(4月16日~)には、安倍首相の訪米も控えている中、先制パンチ的な内容になるかもしれませんね。
警戒する必要がありますね。
今週(4月9日~)、10日(火)には、米PPI(生産者物価指数)、11日(水)には米CPI(消費者物価指数)の発表があります。
強い数字が出ると、6月の利上げ織り込み度が高まりそうですね。6月のFOMC(米連邦公開市場委員会)で利上げできると年4回利上げが見えてくる。ここは重要だと思います。
6月の利上げ織り込み度は、足もとで78%程度。市場は、6月利上げが濃厚だと考えているようです。
アメリカの経済指標が強い数字で、さらに織り込みにいくようだと、金利上昇を嫌気して米国株の下落を誘う可能性もありそうですね。
その可能性もありますが、市場が今、注目しているのはFANG株(※)の動向。
「死角なし」と思われていたFANG株が、このまま調整局面に入るのかどうかが焦点です。
ナスダック総合指数は、7000ポイントを割り込みました。このまま7000ポイントが遠ざかるようだと、まずいかなというイメージです。
(※編集部注:「FANG」とは、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム、ネットフリックス、グーグルの頭文字。アップルを加えて「FAANG」とする場合もある。いずれも読み方は「ファング」)
(出所:Bloomberg)
トランプ大統領は、株価の下落を覚悟しているようですね。「(対中貿易摩擦によって)株価は下がるかもしれないが、最終的に米国は今よりずっと強い国になる」と話していました。それだけ、中国封じ込めに本気だということになります。
トランプ政権の内部も、タカ派的な人が増えています。アメリカの対中政策には、引き続き、警戒が必要ですね。
今年(2018年)は、上下にボラティリティの高い相場となっていますが、米中貿易摩擦などを考えると大きく動く可能性が、より高いのはダウンサイドなのでしょう。
■5月へ向けて売りポジションを構築
今週(4月9日~)末は、日本株のSQ(※)ですね。
(※編集部注:「SQ」とは日経225先物などの株価指数先物や株価指数オプションといった取引の最終決済を行なうための価格のこと)
東証空売り比率が、3月には50%を超えていたため警戒していたのですが、先週(3月26日~)、38.3%まで下落してきました。
まだ油断は禁物で、再び上昇してくるようだと週半ばあたりに仕掛け的な急落があるのかもしれません。
(出所:Bloomberg)
今週(4月9日~)の戦略は、どう考えますか?
基本的に、米ドル/円は、4月は反発して5月に「セル・イン・メイ」で崩れるというシナリオを維持しています。
先週(4月9日~)、米ドル/円は107.50円にも届きませんでしたが、焦らず戻りを待って売っていきたいと思います。きちんと資金管理できる人は、少しずつ売り上がっていくのもいいかもしれません。
【参考記事】
●米ハイテク株急落ほか悪材料は出尽くし!? セル・イン・メイに向けて米ドル/円は調整へ(4月5日、西原宏一)
(構成/ミドルマン・高城泰)
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