■パウエル議長が話せば株が落ちる!?
先週(3月19日~)のFOMC(米連邦公開市場委員会)は、既定路線どおりに0.25%利上げ。「年4回利上げ」への期待もありましたが、通商問題が不透明要因となってきていることもあり、慎重な姿勢に留まりました。
注目だったのが、記者会見。2月末の議会証言に続き、「パウエルさんが話すと株価が落ちる」という法則が今回も繰り返され、NYダウが下落しています。
(出所:Bloombergのデータを基にザイFX!編集部が作成)
(出所:Bloomberg)
ちょうどトランプ米大統領が、中国へ巨額の関税を課す大統領令に署名したことも重なりましたから、不運ではありますけどね。
タイミング的には、パウエルさんの発言がきっかけになって、NYダウが落ちたようにも見えます。
中国は、対抗措置として米国債購入の減額をチラつかせていますし、米中貿易戦争への警戒心が高まっています。
しかし、トランプさんは、優秀なビジネスマンですから、こうなることは織り込んだ上での署名でしょう。
■日米ともに株式市場のチャート形状が悪化
三角保ち合いを下抜けしたNYダウは、ボラティリティも高まっていて、典型的な天井圏のパターン。
先週(3月19日~)、いったんは反発しましたが、三角保ち合いのサポートだったラインまで反発してから再び下げるという、教科書どおりのきれいなチャートになっています。
チャイナショック安値からフィボナッチを引くと、半値押しが2万1000ドル。危ういですね……。
【参考記事】
●海外勢は森友問題を過小評価? ドル/円は下方向だが105円台の突っ込み売りは回避(3月19日、西原宏一&大橋ひろこ)
(出所:Bloomberg)
Facebookの個人情報流出問題も重なっていますからね。NYダウが、そこまで落ちれば、日経平均株価は当然のごとく2万円割れでしょう。
日経平均は、すでに何度も言及している注目の節目だった2万950円をクリアに割ってきており、こちらも、まずいチャートの形に。
【参考記事】
●Facebook株急落で市場に不透明感…。株安・円高継続で、ドル/円は100円の過程(3月22日、西原宏一)
(出所:Blooomberg)
新たな米大統領補佐官に指名されたボルトンさんにも注目ですね。過去の北朝鮮への発言を見ると、「北朝鮮のうそを見分けるのは簡単だ。口を開けば全てうそだからだ」、「米国が先制攻撃で対応するのは完全に正当」と過激な発言ばかりで「超」のつくタカ派です。
北朝鮮にとっては、脅威でしょうね。米朝対話は行うけれども、一方で補佐官に超タカ派の人物を充てる――したたかな戦略だなという印象です。
■東証では空売り比率が初の50%超え
日本株に対する海外勢の売りも続いています。海外投資家は、3月第2週は現物、先物を合わせて3435億円の売り。金額こそ減りましたが、10週連続の売り越しです。
東証の空売り比率も50.3%と、初の50%超えです。売りが膨らんでいるからといって買い戻しが進むかというと、そんなイメージもない。
ヘッジファンドをはじめ、海外勢は、日本株を落とす気が満々のようですから、ちょっとやそっとのことで切れるショートではなさそうです。
今週(3月26日~)は、27日(火)に佐川前国税庁長官の証人喚問がありますし、年度末の最終週。
来週(4月2日~)からは、新年度に入ります。今週(3月26日~)は、安値を深掘りし、来週(4月2日~)からニューマネーが入ってきて反発する、といった可能性にも期待したいところですが……。
■GMOクリック証券は過去最大のロングに
IMM(国際通貨先物市場)での円ショートも減ってきてはいるとはいえ、まだ積み上がったままです。
投機筋らが個人投資家の米ドルロングを崩しにかかる戦略に出れば、円ショートから円ロングに転換する可能性も十分にありますし、今度は、円ロングが積み上がってくるかもしれませんね。
(詳しくはこちら → 経済指標/金利:シカゴIMM通貨先物ポジションの推移)
■ユーロ/円は50%戻しにあたる129円台に注目
米ドル/円は先週(3月19日~)、105円を割りました。100円~105円は、トランプラリー前に、散々もみ合った水準。
「100円は簡単には割れない」という意識も強いので、いずれ100円割れとは思いますが、もう少し時間がかかるのではないでしょうか。
(出所:Bloomberg)
地政学リスクが、きっかけになるかもしれないですね。先週(3月19日~)、サウジアラビアのムハンマド皇太子は、「イランが核爆弾を開発すれば我々も」と発言しましたし、5月には、在イスラエルの米大使館がエルサレムへ移転します。
S&Pにデフォルト認定されたベネズエラも、政府が独自の仮想通貨を発行して資金調達するまでに追い詰められています。
【参考記事】
●住友商事・高井裕之氏に聞く原油相場(3) 驚きのサウジ大改革を進める「MBS」とは?
ムハンマド・ビン・サルマン皇太子は「イランが核爆弾を開発すれば我々も」と発言した (C)Anadolu Agency/Getty Images
先の話かもしれませんが、地政学リスクの高まりによるリスクオフにも警戒ですね。
中東がきな臭くなってきたこと、ベネズエラ経済悪化で原油生産が減少していることなどから、原油価格は三角持ち合いを上放れて上昇。
これまで続いていたNYダウと原油のきれいな相関が切れて、逆相関に入りました。原油高の状態でNYダウ下落のサイクルに入るのは、良くない兆候ですね…。
FOMC直後から、ゴールドも上昇を始めています。
(出所:Bloomberg)
今週(3月26日~)は、米ドル/円の戻り売りをしつこく続けていきたいですし、本格的なリスクオフとなれば、英ポンド/円やユーロ/円の売りもいいでしょう。
特に、ユーロ/円は、2014年高値から引いたフィボナッチの50%戻し水準である129円台が大切な節目。ここをクリアに割れてくると、大きく崩れそうなチャートとなっています。
(出所:Bloomberg)
(構成/ミドルマン・高城泰)
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