■シリア空爆は「Mission Accomplished」(任務完了)
先週(4月9日~)の市場が閉まったあと、トランプ米大統領はシリアに対する空爆を命じたことを発表しました。
週明け(4月16日)のリスクオフを不安視する声もありましたが、これまでのところ、東京市場で大きな反応は見られません。
【参考記事】
●米通商政策に加えて、シリア情勢悪化が懸念材料に…。 米ドル/円は戻り鈍く反落か(4月12日、西原宏一)
(出所:Bloomberg)
4月14日(土)の段階では不安もありましたが、15日(日)の夜、ツイッターでトランプ大統領が「Mission Accomplished」(任務完了)とツイートしたので、週明けを待たず収束したのでしょう。
シリアのアサド政権が化学兵器を使用すれば、再度の空爆もあるかもしれませんが、現時点では、トランプが言うように完了したのでしょう。
ザラ場での発表ではなかったことも、衝撃を和らげましたね。
それから、14日(土)の朝には米財務省の為替報告書も発表されました。
■「円は実効レートより25%割安」の指摘
日本は監視リストに入りましたが、これは前回と同様。「中国が為替操作国に入るのでは」との指摘もありましたが、今回は見送られています。
対北朝鮮で、中国の協力を仰がざるを得ないため、不必要な挑発は避けたのでしょう。
ただ、円に対しては、過去20年の実効レートの平均値と較べて25%も割安との指摘がありました。
4月17日(火)からは、日米首脳会談が予定されていますが、交渉カードに使われるかもしれませんね。
週末に発表された日本テレビの世論調査によると、安倍内閣の支持率は26.7%。この数字に対して、サンプル数が少なすぎるのではとの指摘もありますが、他社の調査でも低下傾向にあるのは事実です。
トランプ政権の支持率が、40%と年初来最高値を記録したのとは対称的…。
安倍首相にとっては、正念場の会談となりそうです。
4月17日(火)、18日(水)の日米首脳会談は、今週(4月16日~)最大のイベントですね。
■武田薬品の大型買収で英ポンド上昇
マーケット全体を俯瞰すると、4月に入り、米中貿易戦争やFANG株(※)の急落、シリア空爆などリスクオフにつながるようなニュースが出たものの、株も為替も、これまでのところ、月足は陽線に。「底堅い」のひと言に尽きます。
(※編集部注:「FANG」とは、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム、ネットフリックス、グーグルの頭文字。アップルを加えて「FAANG」とする場合もある。いずれも読み方は「ファング」)
(出所:Bloomberg)
(出所:Bloomberg)
米ドル/円の日足も、雲に突入してきました。上抜けると三役好転(※)となります。何が背景にあるのでしょうか。
(※編集部注:一目均衡表の買いシグナルとなるパターンのこと。転換線が基準線を上抜け+ローソク足が雲を上抜け+遅行線がローソク足を上抜けた状態)
(出所:Bloomberg)
4月は、外国人投資家が17年連続で日本株を買い越しているアノマリーもあることにl加え、為替市場に影響を与えている可能性があるのが、武田薬品によるM&A。
アイルランドのバイオ医薬品メーカーの買収が報じられており、買収額は6兆円から7兆円規模。事実だとすればインパクトのある金額です。
買収資金を用意するため、英ポンド/円で買いが出るのではないかと言われていますね。
(出所:Bloomberg)
ソフトバンクがスプリントを買収したときは、金額やオーダーの位置まで漏れ伝わることもありましたが、今は情報管理が厳しい。
憶測するしかありませんが、多くの市場参加者が英ポンド/円で玉(オーダー)が出るのではないかと意識していることは事実ですね。
英ポンド/円の動きが、米ドル/円を牽引することがあるというのは、西原さんが以前にも指摘していました。
【参考記事】
●93年以来! 低水準の恐怖指数は何を意味する? 好材料多いユーロ/円が相場牽引!(2017年5月15日、西原宏一&大橋ひろこ)
英ポンド/円が上がるなら、米ドル/円は売りにくくなりますね。
■ブレント原油と英ポンドの相関性が復活
でも、英ポンドは対円だけでなく、全方位的に買われています。武田薬品のニュースもあるのでしょうが、ブレント原油が上がっていることも、英ポンド高を誘っているのかもしれません。
ブレント原油と英ポンドの相関性は、Brexit(英国のEU離脱)後に切れていましたが、今年(2018年)に入って、再び相関し始めています。
(出所:Bloomberg)
Brexitの影響が抜けて、元の相関性を取り戻したのかもしれませんね。
WTI原油は3年ぶりの高値をつけていますし、サウジアラビアの政府関係者は80ドルをめざしているとのニュースも出ています。
(出所:Bloomberg)
今年(2018年)のテーマがインフレだとすれば、原油や金(ゴールド)は強い相場が続くのかもしれません。そうすると、英ポンドも買われやすくなるのかもしれませんね。
今週(4月16日~)の戦略は、どう考えますか?
「4月に調整し、5月にセル・イン・メイで売られる」という見通しは変わりません。
米ドル/円が反発する場面があれば中期ポジションとして売っていきたいですし、積極的に短期でトレードしていくのであれば英ポンド/円などクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)の買いもいいでしょう。
【参考記事】
●米ハイテク株急落ほか悪材料は出尽くし!? セル・イン・メイに向けて米ドル/円は調整へ(4月5日、西原宏一)
(構成/ミドルマン・高城泰)
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