■ユーロ/円は週足一目の雲をはっきり上抜け
5月14日(日)の早朝、北朝鮮がミサイルを発射したことで、15日(月)の米ドル/円は下窓を開けてのスタートとなりました。
FBI(連邦捜査局)長官の更迭など、トランプ政権の人事が混乱しているタイミングを狙ったのかもしれないですね。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 30分足)
先週(5月8日~)の動きを振り返ると、注目したいのがユーロ。
マクロン当選による「セル・ザ・ファクト」で売られるだろうと予測し、ユーロ/円はたしかに123円割れまで急落したのですが反発。半年ほどもみ合っていた、週足一目均衡表の雲をはっきりと上抜けてきました。
(出所:Bloomberg)
【参考記事】
●今週はセル・ザ・ファクトのユーロ安に注意。豪ドルが示すリスクオン相場の盲点とは?(5月8日、西原宏一&大橋ひろこ)
金融政策を見ると米国は利上げを継続中、日本の長期金利は0%付近にピン留めされています。それに対して、ユーロはテーパリングの観測が高まってきました。
金融政策のバイアスから見ると、緩和から引き締めに転じようとしているユーロと、ピン留めされた円の通貨ペアであるユーロ/円は、一番妙味がありそうです。
■ユーロのIMMポジションがとうとう買い越しに転じる!
IMM(国際通貨先物市場)のポジションを見ると、ずっと売り越しだったユーロが先週(5月8日~)、とうとう買い越しに転じましたよね。
このユーロ高が本物なら、米ドルは軟調、米ドル/円も上がりにくくなるのでしょうか?
(詳しくはこちら → 経済指標/金利:シカゴIMM通貨先物ポジションの推移)
メルマガ「FXトレード戦略指令!」でも何度か書いていますが、昨年(2016年)は英ポンド/円の動きが米ドル/円を誘引する場面が何度もありました。
今年(2017年)、その役割を果たしているのがユーロ/円です。
【参考記事】
●Brexitの影響により1年で約67円暴落したポンド/円が反発! 米ドル/円への影響は?(2016年9月8日、西原宏一)
●英国国民投票はなぜ、英ポンドだけでなく、豪ドル/円や米ドル/円にも影響するのか?(2016年6月2日、西原宏一)
ユーロ/円が上昇するのなら、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)全般がジリ高となり、米ドル高というよりは円安によって、米ドル/円も上がっていくのかなと思います。
【参考記事】
●120円が見えてきた! 3月には跳ね返されたドル/円の115円台、今回はブレイク濃厚!(5月11日、西原宏一)
英ポンド/円はいかがですか? 日足を見ると、そろそろ天井を打ったようにも見えますが。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/円 日足)
英ポンド/円については75週移動平均線、それに昨年(2016年)12月15日(木)につけた高値148.46円に注目しています。
この2つを上抜けてくると、円安が加速する可能性があります。
(出所:Bloomberg)
■恐怖指数は1993年以来の低水準まで低下
今週(5月15日~)の材料でいえば、気になるのはコミーFBI長官の解任。
ヘルスケア法案の上院通過には民主党議員8人の賛成が必要となるのですが、民主党の反感を買うと協力を得にくくなりそう。
ポジティブな材料ではありませんよね。なので、今週(5月15日~)は多少、調整があるのかもしれないですが、大きく下げるようなイメージはあまりないですね。
FBI長官の解任が伝わると株価は下がりましたが、DAX(ドイツ株価指数)は最高値を更新しました。
(出所:Bloomberg)
VIX指数(恐怖指数)も1993年以来の低水準と、下がるところまで下がっていて「総楽観」という感じです。その割に米国株は重たいですが…
(出所:Bloomberg)
総楽観というほどの感じはなく、4月に集中していたリスクイベントに備えて買われていたものが巻き戻されているのかなと思います。
DAXについては、フランス大統領選挙に備えて買い控えていた投資家が出てきていることもあるのでしょう。ユーロ/円も同様で、リスクオフに備えて売られていたポジションが、まだ相当、残っているように感じます。
【参考記事】
●仏大統領選を無事通過してリスクオン再開。米ドル/円は115円に向けて反発する公算大(4月27日、西原宏一)
●セル・イン・メイで暴落イメージの5月だが、なぜ、今年は上昇を警戒すべきなのか?(5月1日、西原宏一&大橋ひろこ)
週足一目均衡表の雲の上抜け、IMMポジションが買いに転じたこと、リスクオフで売られていたポジションの巻き戻し ―― 材料の多いユーロ/円はおもしろそうですね。
■「一帯一路サミット」はコモディティ市場の後押しになるか
コモディティ市場の弱さが気になりますが、今週(5月15日~)はどうですか?
注目されているのは、中国で15日(月)まで開催されている「一帯一路サミット」。29カ国の首脳のほか、IMF(国際通貨基金)や世界銀行などのトップが参加しており、習近平・国家主席は「一帯一路」の推進に向けて、1240億ドルの投資を表明しました。
これが材料視されると、原油や銅などのコモディティ市場にはポジティブだと思います。
(出所:Bloomberg)
(出所:Bloomberg)
1240億ドルは大きいですね。コモディティ市場が好調なときなら、セル・ザ・ファクトで反落するのかもしれないですが、今のように軟調なときに出てくると、追い風となる可能性もある。
こうしたことを考えると、今週(5月15日~)の戦略は米ドル/円、それにユーロ/円の押し目買いでいいのではないでしょうか。
(出所:Bloomberg)
(出所:Bloomberg)
(構成/ミドルマン・高城泰)
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