■マネパとビットフライヤーが手を組んで発足させた協会
2018年4月23日(月)、日本仮想通貨交換業協会が記者会見を行いました。
記者会見の会場となった東京・霞が関にあるプレスセンタービル内。写真はフォトセッションの様子。多くの取材陣が詰めかけて会場は結構、熱気ムンムン…。人垣に阻まれてスマホカメラでは太刀打ちできなかったので、後方から熱気ムンムンの様子をそっと撮影(ザイFX!記者撮影)
日本仮想通貨交換業協会とは、3月上旬に設立が発表された業界団体。
これまで、何かと折り合いが悪そう(?)だった日本仮想通貨事業者協会(JCBA)を率いるマネーパートナーズと日本ブロックチェーン協会(JBA)を率いるbitFlyer(ビットフライヤー)が手を組み、改正資金決済法が認める自主規制団体を目指す協会として、2018年3月29日(木)に、新たに発足させたものです。
統合ではありませんので、ひとまず、従来の2つの協会は新協会発足後も存続し続けます。
【参考記事】
●ついに仮想通貨取引所が新団体設立へ!自主規制団体ができると何が変わる?
●噂の仮想通貨勉強会にザイFX!が潜入。ビットコインETFは認可されず一時暴落!
現在、日本仮想通貨交換業協会の加盟業者は、マネーパートナーズ、ビットフライヤーを含め金融庁登録の16社。
coincheck(コインチェック)など登録申請中のみなし業者は含まれていませんが、協会としては、ゆくゆくは、みなし業者についても受け入れる体制を作っていきたいと考えているようです。
この日の記者会見では、仮想通貨取引所Zaifを運営するテックビューロを除く15社の代表が揃いました。
【日本仮想通貨交換業協会 加盟業者一覧】
※登録番号順
・ マネーパートナーズ
・ QUOINE
・ bitFlyer
・ ビットバンク
・ SBIバーチャル・カレンシーズ
・ GMOコイン
・ ビットトレード
・ BTCボックス
・ ビットポイントジャパン
・ DMM Bitcoin
・ ビットアルゴ取引所東京
・ Bitgate
・ BITOCEAN
・ フィスコ仮想通貨取引所
・ テックビューロ
・ Xtheta
■理事に財界の大物、SBI北尾社長の名前が!!
まず、発表された日本仮想通貨交換業協会の理事と会長・副会長を確認しておきましょう。
ここに意外な人物の名前があります。理事にSBIホールディングスの北尾社長が入っている…!
北尾社長といえば、ソフトバンクグループの創業者、孫正義氏の盟友とも謳われる人物で、現SBIホールディングス株式会社の代表取締役社長。歯に衣着せぬ物言いで、強烈な個性とインパクトを放ち続けている財界の大物です。
ちなみに、日本仮想通貨交換業協会理事としての北尾氏の肩書は、「SBIバーチャル・カレンシーズ株式会社 代表取締役執行役員社長」と紹介されていましたが、あれ? 少し前までSBIバーチャル・カレンシーズの社長は、現在、代表取締役副社長となっている若手の齋藤亮氏だったはず…。
どうやら、斎藤氏を副社長に降格して、北尾氏がSBIバーチャル・カレンシーズの社長に就任したようです。
一部では、松本大氏率いるマネックスグループによるコインチェック買収劇が、北尾氏の闘志に火をつけたのではないか? などと報じられていますが、北尾氏の心の内は不明…。
【参考記事】
●コインチェックはマネックスの子会社へ!買収金額は36億円。意外と少ない理由とは?
とはいえ、認定自主規制団体を目指すとして発足した日本仮想通貨交換業協会において、自らが影響力ある理事の席に収まるということは、北尾さん、なんて言うか…ヤル気?
実際、SBIホールディングスは、金融業界の中でも、仮想通貨を始めとするフィンテック分野にかなりの規模で投資してきた企業の1つ。北尾氏自ら表舞台に出てくることで、今後、さらに業界への影響力を強めていこうとしているのかもしれません。
■マネパが会長でビットフライヤーとビットバンクが副会長
順番が逆っぽくなりましたが、会長・副会長についても触れておきましょう。
上述のとおり、会長はマネーパートナーズの奥山社長、副会長にビットフライヤーの加納社長、bitbank(ビットバンク)の廣末社長という体制になっています。
冒頭でも少し触れましたが、もともと仮想通貨業界には、自主規制団体を目指すと宣言している有力団体が、日本仮想通貨事業者協会と日本ブロックチェーン協会の2つありました。
お伝えしたとおり、日本仮想通貨事業者協会の会長は奥山氏、日本ブロックチェーン協会の会長は加納氏です。
両協会統合の道を探る話し合いも行われてはいたようですが、結局、統合とはならず、新協会・日本仮想通貨交換業協会の発足となっています。
統合話がまとまらなかった理由は明らかではありませんが、マネーパートナーズという金融事業者を牽引してきた奥山氏と、どちらかというとテクノロジー寄りの立場からサービスの立ち上げを行ってきた加納氏とでは、同じ仮想通貨関連事業を営むにしても、さまざまな面で考え方の違いがあるのは当然とも思えます。
間違っても奥山氏と加納氏の仲が悪いのが原因…なんてことはないと思いますし、いや、だから副会長にもう1人、仲裁役としてビットバンクの廣末社長を選任したのか…?
いやいや、まさか、そんなことはないでしょう! きっと、いずれも事業規模や社会的影響、各人の経験値などを考慮しての選任のはずです。
【参考記事】
●ビットコインがマネパカードにチャージ可能へ!?認定自主規制団体の件って決着ついたの?
●仮想通貨交換業者11社が金融庁登録!(1) “記者会見合戦”が行われた歴史的瞬間
邪推は横に置いておいて、ともかく、セキュリティや内部管理体制の甘さに端を発したコインチェックのNEM巨額流出事件が起こってしまった今、業界として高いレベルで統一された自主規制ルールを制定することは、待ったなしの最優先課題であることは明らか。
だからこその日本仮想通貨交換業協会の発足だと思いますし、ぜひ、会長・副会長を中心に一致団結して、ユーザーが安心して仮想通貨取引を利用できる環境の整備に取り組んでもらいたいです。
■いつ頃、認定自主規制団体になるの? 自主規制の中身は?
さて、4月23日(月)に行われた記者会見では、会長および副会長2名が、それぞれマイクを持って挨拶。
いずれも、コインチェック事件などを受けての社会的信頼性の回復や自主規制ルールの早期制定などに努め、業界の健全な発展に貢献していきたいなどと抱負を語っていました。
その後、40分間に渡って行われた質疑応答は、記者から出された質問に対して奥山氏が中心となって回答していましたが、セキュリティなどの、やや込み入った技術的な質問については、副会長の加納氏にマイクを託すというスタイルがとられており、なんだかいいバランス感が発揮されていたように思います。
時間中、さまざまな角度から多くの質問が出ましたが、その中で特に注目しておきたいものについて、ここで少し紹介しておきましょう。
・ 自主規制ルールの内容は?
たとえば、特に質問が集中したのが、肝心要の自主規制ルールに関するものです。
自主規制ルールといっても、いったいどこまでを規定するものなのか? と記者自身、その全貌がぼんやりとしていたワケですが、どうやら協会としては、セキュリティや内部管理体制はもちろん、口座数などの統計情報から財務状況、システム障害や広告に関する取り決めにいたるまで、これまで各業者や協会間でバラバラだったルールを一本化していく方針だそう。
FX会社が加盟する金融先物取引業協会や証券会社が加盟する日本証券業協会など、全体的に既存の自主規制団体のルールに近づいていくのかな? という印象を受けました。
ルールだけではなく、協会としての罰則規定や不服申し立てみたいな制度も整備するつもりみたいですし。
なお、自主規制ルールのベースには、既存の協会(日本仮想通貨事業者協会やブロックチェーン協会)の自主規制ルールが使われるようです。
・ いつ頃、法律上認められた自主規制団体になるの?
既存の協会で作成したベースがあるとはいえ、これから日本仮想通貨交換業協会の自主規制ルールとしてまとめ上げていくということで、そんなに短期間で対応できるものではないとの認識を示していました。
いったいいつ頃、改正資金決済法上の認定自主規制団体になるのか? というのは気になるところですが、会長の奥山氏は、認定自主規制団体としての申請が行える体制を整えるには、1カ月や2カ月という期間では難しいと発言していましたので、少なくとも2018年夏以降ということになりそうです。
・ レバレッジ取引も自主規制ルールで規定を?
また、現行の改正資金決済法上で規定されているのは、仮想通貨の現物取引についてのみであるということから、レバレッジ取引のルールについても、自主規制ルールの中でまかなえるようにしていきたいとの方針を示していました。
仮想通貨のレバレッジ取引って、なんとなくFXに近いルールで提供している業者が多いような気がしますが、実は法律で定められた明確な規定はありません。
法律で規定がない以上、業界全体に統一ルールを敷くには自主規制でまかなう以外になさそう…。レバレッジ取引に関するルール作りというのも、自主規制団体が担う重要な役割になってきそうです。
【参考コンテンツ】
●ビットコイン・仮想通貨の取引所/販売所を比較。取引コストが安いのはどこ?
●「ビットコイン・仮想通貨のFX」ができる取引所を比較。上昇も下落も収益チャンスに
・ ICOのことは金融庁の仮想通貨研究会でフォロー
このほか、何かと話題のICO(Inicial Coin Offering)に関する規定については、2018年4月から会合が行われるようになった金融庁の仮想通貨研究会に委ねたいとのことでした。
こちらについては、協会が主導して何かしらのルール化をするという流れには、ならないのかもしれません。
株式市場におけるIPO(Inicial Public Offering)の仮想通貨版のようなしくみで実施されるICO。奥山氏は、インサイダーに関する規定なんかも必要になってくるかもしれないと話していました。
ICOについては、金融庁の仮想通貨研究会の動向に注目しておいた方が良さそうです。
【参考記事】
●「ICO」とは? 「IPO」と何がどう違うの? テックビューロ発、「COMSA」のしくみは?
今回の記者会見は、日本仮想通貨交換業協会が発足し、こういう体制でやっていきますよ! という発表に留まりましたので、具体的なことは、すべてこれからということになります。
市場規模としては急成長した仮想通貨業界ですが、ご存知のとおり、制度面では、まだまだ未成熟な面も多々あります。
日本仮想通貨交換業協会には、ぜひ、自主規制団体として早期に認定を受け、各種ルールの作成などを通じて、業界の健全な発展に取り組んでいってもらいたいですね。
(ザイFX!編集部・向井友代)
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