■大型M&A相次ぎ、米ドル/円を押し上げ
この米ドル/円の高止まりは、相次ぐ大型買収の報道が影響しています。
まず、先月(4月)から話題となっていた、武田薬品とアイルランドの製薬大手シャイアーの買収による資金フロー。
買収は、新株発行と現金によって行われるようですが、注目は、現金部分の約3兆円。報道によれば、武田薬品は必要な資金を調達するため、308.5億ドルのブリッジローン(※)契約を結んだようです。
(※編集部注:「ブリッジローン」とは、一時的に資金をつなぐための短期融資のこと。つなぎ融資と呼ばれることもある)
加えて、今週(5月7日~)、いきなり報道されたリクルートによる買収報道も、米ドル/円相場を押し上げています。
武田薬品に続いて、リクルートが買収発表。相手は、米オンライン求人サービス大手のGlass Doorです。
買収金額は12億ドル。
「IN CASH」、つまり現預金で買うとの事。
この買収は、武田薬品のケースと違って「現預金で」との記載があるため、米ドル/円相場へ直接、影響があると想定されます。
この2つの買収報道が米ドル/円を底堅くし、109円台まで押し上げてきました。
(出所:Bloomberg)
ただ、既報のように、武田薬品のシャイアー買収は308.5億ドルのブリッジローン契約なので、短期的に見れば、米ドル/円相場への影響はありません。
次に、リクルートの買収はサプライズではありますが、金額が12億ドルであり、マーケットを下支えするだけの規模ではありません。
■新興国の混乱が続き、主要国の株価に影響が及ぶと…
一方、米国がイランの核合意を破棄したという報道で、米国株は不安定な状況となり、乱高下が続いています。
加えて、前述の新興国から資金が流出しており、バーナンキショックを懸念する声も上がっています。
結果、米金利の上昇により、米ドルの上昇は変わらず。
短期的には、ユーロ/米ドルや英ポンド/米ドルは、売られ過ぎです。調整はあるのでしょうが、上値が重い展開となっています。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 日足)
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/米ドル 日足)
さらに、新興国の混乱が続き、主要国の株価に影響が及ぶと米ドル/円の下落要因となります。
上述のような大型買収案件の報道があっても、米ドル/円は110.00円レベルを攻めあぐねている展開です。
こうした背景から、注目したいのがユーロ/円。
ユーロ/円の上値は限定的であり、下値余地は拡大しているのではないでしょうか?
(出所:Bloomberg)
5月に入り、ユーロ/円の動向に注目です。
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