■貿易戦争がテーマになるのはもう少し先か
先週(4月30日~)は、米中間で貿易に関する協議がありましたが、進展が見られませんでした。
進展が見られないというより、米国はこれまで中国に対して、対米貿易黒字を1000億ドル削減するように求めていましたが、今回の協議では2020年までに、2000億ドルを削減するよう、さらに要求しています。
貿易不均衡の是正に関しては、まだまだ長期化しそうです。
【参考記事】
●米中貿易戦争は緩和どころか激化している! なぜ、それでドル全面高になっているのか?(5月2日、陳満咲杜)
目先は、貿易戦争が市場のテーマになっていませんが、11月の米中間選挙が近くなってくると、再度、貿易戦争がテーマになってくるのではないでしょうか。
そのときには、株式市場は弱くなり、米ドルも弱くなるのではないかと考えています。
(出所:Bloomberg)
■新興国発のリスク回避を警戒。でも株式市場はまだ楽観的?
先週(4月30日~)、話題になったのは、アルゼンチンの連続緊急利上げです。
FRB(米連邦準備制度理事会)の金融政策が引き締めに向かっていることもあり、新興国市場の資金が米ドルへ還流し、アルゼンチンペソが下落していることから、それを止めるために、アルゼンチン中銀が利上げを行っています。
【参考記事】
●アルゼンチンが政策金利を40%に引き上げ! 新興国通貨にバーナンキショック再来も!?(5月7日、西原宏一&大橋ひろこ)
(出所:Bloomberg)
※アルゼンチン中央銀行のデータを基にザイFX!が作成
米ドルへの資金還流の影響から、リスク回避の動きが出て、NYダウなども崩れました。
ただ、NYダウは、VIXショックからのテクニカル的なトレンドラインに支えられて反発してきており、いまだにもみ合いの中での推移です。
(出所:Bloomberg)
今後も、新興国発のリスク回避の動きが懸念されるところですが、NYダウはテクニカル的には、まだしばらくもみ合いが続く可能性が高く、上昇方向を示唆している形も崩れていないことから、株式市場はまだ楽観的だといえます。
■米雇用統計は株式市場にとってポジティブな結果だった
5月4日(金)には米雇用統計があり、失業率は3.9%と、2000年12月以来の低水準まで回復してきています。
※米労働省のデータを基にザイFX!が作成
ここからも、株式市場はまだ、楽観視してもいいように思います。
【参考記事】
●米ドル/円は雇用統計が良くても悪くても下落!? 予想に近い結果が望ましい理由は?(5月1日、バカラ村)
平均時給は前月比で+0.1%、前年比で+2.6%と、やや予想よりも弱い結果となり、FRBが利上げを急ぐ必要性もないため、米長期金利も緩やかな上昇になると思われることから、株式市場にとっては良いということになります。
(出所:Bloomberg)
新興国発のリスク回避は気になるところですが、しばらくは問題なさそうに思います。
■今週は武田薬品の買収案件に注目!
今週(5月7日~)の注目すべきイベントは、武田薬品工業の買収案件になります。
日本時間で5月9日(水)午前1時までに、アイルランドの製薬会社シャイアー買収の成否が発表される予定となっていますが、この内容によって、為替市場が全体的に影響を受けることになるのではないかと考えています。
現在は、武田薬品工業とシャイアーの株主の同意が整えば、買収が成立する段階まで来ているようです。
これが成立するのか、不成立となるのか、もしくは日本時間9日(水)午前1時までとされている期限が延期となるのか、まだ、不確かな状態が続いています。
今夜(5月8日)は、英ポンド/円を筆頭に、米ドル/円や他のクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)が振らされることになりそうです。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 日足)
目先に関しては、米ドル/円は、武田薬品工業の買収案件に振らされることになりますが、米長期金利が緩やかに上昇していることや、株式市場も楽観的なため、米ドル/円も底堅い展開となり、110円をトライする動きが出てくるのではないかと考えています。
(出所:Bloomberg)
ただ、中長期に関しては、貿易戦争懸念から、売り方向という考えのままです。
■ユーロ/米ドルは手仕舞いのタイミングを計るとき
ユーロ/米ドルは、1月につけたこれまでの年初来安値を下抜け、一時的に1.19ドル台も下抜けました。
【参考記事】
●米ドル/円はレンジ上限をトライする動きか。ユーロ/米ドルはもみ合い抜けて1.20割れも!?(4月24日、バカラ村)
(出所:Bloomberg)
ドルインディックスも上昇が続いていることから、ユーロ/米ドルもいったんは調整するのではないかと考えていますが、まだ底打ちというには早いように思います。
(出所:Bloomberg)
ユーロ/米ドルは、かなり下がってきていることもあり、突っ込んで売るにはリスクが高いときで、反対に、売りポジションを手仕舞いするタイミングを計るときではないかと考えています。
縦軸(値段)としては、2017年1月安値から2018年2月高値の38.2%押しにあたる1.17ドル付近が重要な水準で、横軸(時間)としては5月中旬が1つの目安となり、間もなく、下げ止まってもいいようなタイミングとなります。
(出所:Bloomberg)
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