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西原宏一・大橋ひろこの「FX&コモディティ(商品) 今週の作戦会議」

米ドル/円は3年来のレジスタンスに週足雲も
突破! 円売り材料多く、押し目買いで臨む

2018年07月16日(月)12:18公開 (2018年07月16日(月)12:18更新)
西原宏一&大橋ひろこ

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■3年来のレジスタンスも週足雲も突破!

米ドル/円が上がりましたね。5月末から形成されていたアセンディング・トライアングル(上昇三角形)を上抜けして、高値は112.52円まで。


7月13日(金)の終盤は少し垂れましたが、それでも112.30円台を維持して引けています。

週足終値が111.50円以下だと上昇がダマシだった可能性も出てくるのですが、112円台を保ったことの意義は大きいですね。

 

米ドル/円は2015年6月から3年間、続いていたレジスタンスラインを上抜けし、週足の雲も上抜け


月足の雲さえも明確に上抜けようかというところまできており、テクニカル的にも大きく改善しています。

米ドル/円 週足
米ドル/円 週足

(出所:Bloomberg)

米ドル/円 月足
米ドル/円 月足

(出所:Bloomberg)

これだけ米ドルが強いと逆相関にあるコモディティ(商品)市場は軟調です。WTI原油は一時70ドル割れとなりました。

WTI原油 日足
WTI原油 日足

(出所:Bloomberg)

■日銀介入に匹敵するM&Aと中国人民元のプロキシー

米ドル/円上昇の要因は何なのでしょうか?

ひとつは日本企業によるM&A。今年(2018年)上期の日本企業による海外企業のM&Aは過去最大となる13兆円と、東日本大震災後の日銀介入に匹敵する規模


アイルランドの製薬大手買収に約7兆円を投じた武田薬品の影響が大きいのですが、それを除いても非常に大きな金額です。

【参考記事】
米ドル/円は円高圧力跳ね返し112円台! 重要レジスタンス突破で流れ変わるか?(7月12日、西原宏一)

M&A関連では先々週(7月2日~)、三菱ケミカルホールディングス傘下の大陽日酸によるアメリカ企業買収のニュースも出ていましたね。

逆に、米小売大手ウォルマートが傘下に収めていた西友を手放すのではとの報道も出ました。ウォルマートは否定しましたが、もし実現すればウォルマートは円資金を米ドル転する可能性が高いことになりますから米ドル/円の買い材料


ウォルマートはアマゾンなどに押され厳しいですから、手放したい思いがあっても不思議はありません。

米ドル/円 日足
米ドル/円 日足

(出所:Bloomberg)

マクロでいうと米中貿易摩擦が熾烈化しリスクを取りづらい環境かと思われていたのですが、日本企業は裏でしっかり動いていたんですね。

■トランプ政権の通商政策は米ドル高政策か

貿易摩擦は、春先にはリスクオフの円高材料とされましたが、足もとでは中国人民元安とともに円安が進んでいます。


中国人民元の「プロキシー」(代替)として円が売られている、という背景も米ドル/円を押し上げているようです。

【参考記事】
騒がれている中国人民元安の真の原因は? 米ドル/中国人民元が取引できるFX会社は?

米ドル/中国人民元 日足
米ドル/中国人民元 日足

(出所:Bloomberg)

中国人民元は流動性が低いですから売りたくても売りづらい。その代わりに流動性のある円を売ろう、ということですか。少し不思議な感じもしますが……。


ただ、トランプ政権の高関税政策は米ドル安を招くと見られていましたし、ムニューシン財務長官も1月に「ドル安が好ましい」と発言していました。


でも、この発言はある意味、ダマシだったのかもしれません。高関税政策はむしろ、アメリカの貿易赤字を縮小させ米ドル高を招く政策であると市場が理解しつつあるようにも思えます。

米中貿易摩擦はアメリカの勝利で終わるのでしょうし、そうなれば米国関連の資産は買い、中国関連の資産は売りとなり中国人民元のプロキシーとして円が売られる。


米ドル/円は上昇し、日本株にはポジティブな影響が出るのかもしれません。

米ドル/円 日足
米ドル/円 日足

(出所:Bloomberg)

日経平均 日足
日経平均 日足

(出所:Bloomberg)

今期の米ドル/円の為替レートを105円程度で想定している企業が多いようです。このままの水準で今期が進むようなら為替分だけでも上方修正を行なう会社が増えそうですね。


ただ、中国の景気はトップアウトしていますし、トランプ政権は中国、それにドイツを本気で潰そうとしているように見えます。来年(2019年)の世界景気を考えるとブル(強気)ブルではいられないのも事実ですよね。

日本に対する自動車関税の話が持ち上がると市場に不安が広がるかもしれません。とはいえ、自動車関税の話はすでにテーブルに載っている材料。


米ドルを買いたいならそれで落ちたところを拾えばいいのに、先週(7月9日~)、高値が買われていたのは買い遅れて焦っている人も多いのでしょう。

■円は「セーフ・ヘブン」の地位を失いつつあるのか

欧米では、円は「セーフ・ヘブン」(避難通貨)としての位置付けを失いつつあり、「セル・ジャパン」(日本売り)が始まるのではと指摘する記事も出ているようですね。

そうした論調はたしかにこの数週間、目立ってきています。そこまで大きなゲームチェンジが起きているのかどうか、結論づけるのはまだ早計ですが、テクニカルの改善や日本企業のM&A、中国人民元のプロキシーとしての円売りといった材料を考えると、今週(7月16日~)は米ドル/円の押し目買いでいいのでしょう。

米ドル/円 4時間足
米ドル/円 4時間足

(出所:Bloomberg)

7月17日(火)にはFRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長の議会証言がありますね。ここでもし崩れるようなことがあれば押し目買いのチャンスとなるかもしれませんね。

(構成/ミドルマン・高城泰)

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