■素人と専門家の思惑が合致すると相場に裏切られる!?
「相場は理外の理」と言われるが、本質的には「巷の理」は相場の理ではない。また、「巷の理」が蔓延していた時こそ、相場の理が違うところにある、ということではないかと思う。最近の市況は、またその好例を提供してくれている。
米中対立が一段と激化している中で、「巷の理」はわかりやすかった。それは他ならぬ、リスクオフの動きが想定され、安全資産とされる金、円やスイスフランが買われるだろうというロジックだ。そして、新興勢力であるビットコインを始めとする仮想通貨の出番だといった発想も、基本的には同じく「巷の理」の範疇にあった。
注意していただきたいのは、巷のロジックがわかりやすかった上、一般市場参加者に広く受け入れやすかったというだけでなく、いわゆる市場の専門家の多くも同じロジックを展開し、いかにも「市場は間違っている」といった論調を展開していたところも大きかったということだ。
だいぶ前だが、本コラムでも指摘していたように、ファンダメンタルズ由来のロジックは、素人と専門家の意見や思惑が合致すればするほど、また、ロジックが単純化すればするほど、裏切られるリスクが大きいから、気をつけないといけない。
【参考記事】
●過大評価されるユーロと過小評価される円、是正する道はユーロ/円の大逆転のみ!(2018年2月16日、陳満咲杜)
案の定、そういった「巷の理」が浸透している中、伝統的な安全資産とされる金や円、そして、スイスフランは売られ、ビットコインはバブル崩壊後の最安値を更新していく勢いを示している。今回も「巷の理」が完全に裏切られたわけだ。

(出所:Bloomgerg)

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■特に日本の個人投資家が裏切られた!?
先週末(7月6日)の本コラムにて「米ドル/円と日本株をいつ買うか、今でしょ」と判断したのも、前述の「巷の理」が裏切られることを予想していたからだ。
【参考記事】
●米ドル/円は3年続いたレジスタンスラインをブレイクする準備完了! 買うなら今でしょ!?(2018年7月6日、陳満咲杜)
米ドル/円は一気に112円の節目をブレイクし、113円の節目に接近、日経平均が一時、2万2650円超えまで上昇したのも、この前に「巷の理」があったからこそである。

(出所:IG証券)

(出所:Bloomberg)
要するに、「巷の理」が理解しやすかった上、専門家たちも同じ見方を示してくれるから、一般個人投資家たちにとって米ドル/円、日経平均などには「売り安心感」があった。
一概には言えないが、少なくとも米ドル/円のショートスタンス、金やビットコインのロングスタンス自体が個人投資家(特に日本の個人投資家)に好まれる逆張りのスタイルだったので、より仕掛けやすかったのではないかと推測される。
だからこそ、米ドル/円と日経平均はいったん上放れ、また、金とビットコインはいったん下方突破すれば、その後、損失覚悟の投げが続出するわけだ。
米ドル/円の上昇は、負けたショート筋の踏み上げなしではスピード感が出ない。足元、ロング筋にとっては「押し目待ちに押し目なし」のような展開であるだけに、その裏で実は円の投げ売りが多かったに違いない。
■専門家たちの「君子豹変」ぶりもトレンド加速の一因
もう1つの要因は、これまで「巷の理」に合致していた専門家たちの見方が変わったことだ。
もちろん、市況に追随して一転して米ドル高継続のほうにシフトしてきたことは容易に想像できるが、こういった「君子豹変」ぶりに動揺する個人投資家たちの手仕舞いがトレンドを加速する一因であった。
わかりやすく、また、納得されやすいことが「売り」である「巷の理」は、往々にして「裏付け」として「理論」が必要なので(特に逆張りの場合)、その理論の語り手がいなくなると、一気に崩れやすいことも容易に想像できる。
もっとも、米中貿易戦争が一段と激化しているなか、なぜ、リスクオフにならず、金、円などの安全資産がなぜ売られたのかに関して、目先多くの解釈が行われている。
その正誤について、正直読んでもよくわからないが、間違いなく言えることが1つだけある。それは、こういった解釈の多くは「事後解釈」であるだけに、正しいかどうか、また、ロジック的に成り立つかどうかについて検証する必要はないということだ。
■次は日経平均の番、いつ買うの? 今でしょ!
先週末(7月6日)に買えなくても、またショートスタンスを維持する余裕があったとしても、米ドル/円について、一番遅くとも7月11日(水)までにはスタンスを改めなければいけなかっただろう。その根拠を、同日のレポートをもって開示し、また、これからのターゲットを提示しておきたい。本文は以下のとおり。
(出所:FXブロードネット)
ドル/円は日足においてアセンディングトライアングルを形成している。同フォーメーションの上放れがあれば、大幅に上値余地を拓ける。しかし、昨日一旦5月高値に接近したものの、ブレイクにならず、「ダマシ」ならここにてダブルトップを形成、却って反落してくるリスクを増強するでは、といった懸念もある。
結論から申すと、このような可能性を完全に排除できないものの、整合的な判断としてアセンディングトライアングルが上放れされる公算が高いとみる。GMMAのサインがフォーメーションの上放れを支持しているほか、PAの視点でも上方突破の可能性が示唆される。
1と表示する高値、スパイクハイとしてまたフォールス・ブレイクアウトのサインと解釈できる上、2の弱気リバーサルのサインで強化され、その後の押しをもたらしたが、3のところで一旦ブレイクを果たし、また3自体が弱気リバーサルのサインを点灯したものの、深押しをせずにしてまた切り返し、昨日の高値につながったわけだから、トライアング内の地合いの堅調を示した。この視点では、昨日5月高値をブレイクできずにいたものの、総じてここから頭を打って反落するよりも、煮詰まりあるトライアングル型保ち合いの構造に沿って上方突破の公算が高く、また近々果たすことでより強いトレンドをもたらすでしょう。
フォーメーションの示唆なら、まずトライアングルの値幅で測った「倍返し」だが、すくなくとも115関門の打診が視野に入る。近々ブレイクのサインがあれば、上値ターゲットの上方修正もあり得るから、丁寧にフォローしていきたい。
ちなみに、米ドル/円はすでに5月高値を更新しているから、次は日経平均の番だ。出遅れたロング筋はいつ買うのか、今でしょ!?
市況はいかに。
(14:00執筆)
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