■トランプ政権の通商政策は米ドル高政策か
貿易摩擦は、春先にはリスクオフの円高材料とされましたが、足もとでは中国人民元安とともに円安が進んでいます。
中国人民元の「プロキシー」(代替)として円が売られている、という背景も米ドル/円を押し上げているようです。
【参考記事】
●騒がれている中国人民元安の真の原因は? 米ドル/中国人民元が取引できるFX会社は?

(出所:Bloomberg)
中国人民元は流動性が低いですから売りたくても売りづらい。その代わりに流動性のある円を売ろう、ということですか。少し不思議な感じもしますが……。
ただ、トランプ政権の高関税政策は米ドル安を招くと見られていましたし、ムニューシン財務長官も1月に「ドル安が好ましい」と発言していました。
でも、この発言はある意味、ダマシだったのかもしれません。高関税政策はむしろ、アメリカの貿易赤字を縮小させ米ドル高を招く政策であると市場が理解しつつあるようにも思えます。
米中貿易摩擦はアメリカの勝利で終わるのでしょうし、そうなれば米国関連の資産は買い、中国関連の資産は売りとなり中国人民元のプロキシーとして円が売られる。
米ドル/円は上昇し、日本株にはポジティブな影響が出るのかもしれません。

(出所:Bloomberg)

(出所:Bloomberg)
今期の米ドル/円の為替レートを105円程度で想定している企業が多いようです。このままの水準で今期が進むようなら為替分だけでも上方修正を行なう会社が増えそうですね。
ただ、中国の景気はトップアウトしていますし、トランプ政権は中国、それにドイツを本気で潰そうとしているように見えます。来年(2019年)の世界景気を考えるとブル(強気)ブルではいられないのも事実ですよね。
日本に対する自動車関税の話が持ち上がると市場に不安が広がるかもしれません。とはいえ、自動車関税の話はすでにテーブルに載っている材料。
米ドルを買いたいならそれで落ちたところを拾えばいいのに、先週(7月9日~)、高値が買われていたのは買い遅れて焦っている人も多いのでしょう。
■円は「セーフ・ヘブン」の地位を失いつつあるのか
欧米では、円は「セーフ・ヘブン」(避難通貨)としての位置付けを失いつつあり、「セル・ジャパン」(日本売り)が始まるのではと指摘する記事も出ているようですね。
そうした論調はたしかにこの数週間、目立ってきています。そこまで大きなゲームチェンジが起きているのかどうか、結論づけるのはまだ早計ですが、テクニカルの改善や日本企業のM&A、中国人民元のプロキシーとしての円売りといった材料を考えると、今週(7月16日~)は米ドル/円の押し目買いでいいのでしょう。

(出所:Bloomberg)
7月17日(火)にはFRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長の議会証言がありますね。ここでもし崩れるようなことがあれば押し目買いのチャンスとなるかもしれませんね。
(構成/ミドルマン・高城泰)
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