■原因は金融市場の常識を否定する大統領?
しかし、事態はそれほど単純ではありません。
前述のとおり、トルコは経常赤字と高インフレという、根源的な問題を抱えています。
その解決のためには、まずは、利上げが必要というのが、現在の金融市場の常識です。
しかし、7月24日(火)にトルコ中銀は、エルドアン大統領が利上げに強く反対していたことに配慮して、市場の期待感が高まっていた政策金利の引き上げを見送ってしまいました。
金利の引き上げに強く反対するトルコのエルドアン大統領。先日は「私が生きている限りは金利の罠には落ちない」と述べ、改めて利上げに否定的な姿勢を示した (C)Anadolu Agency/Getty Images
この消極的な判断によって、トルコリラは、さらに下落することとなりました。
【参考記事】
●トルコリラ/円が一時、16円台まで暴落! トルコリラ急落の震源地はユーロか!?
●トルコリラ/円は一時15円台まで大幅続落! 原因はトランプとエルドアンの両大統領!?
■危機脱出には政策の総動員が必要だが…
経常赤字の改善についても、急務であることは自明の理でありますが、エルドアン大統領がこうした問題に、本格的に取り組む様子はありません。
トルコ向け貸し出しに占める欧州銀行の比率は、なんと75%もあります。今後、トルコ問題が欧州に影響を与える可能性もあります。
トルコ銀行調整監視機構は、8月13日(月)、国内銀行による海外銀行とのスワップ、スポット、フォワード取引を、銀行資本の50%以内に制限すると発表しました。トルコリラの急落に対する対応です。15日(水)には、これをさらに25%にまで半減させています。
しかし、これは付け焼刃に過ぎません。
利上げなどのあらゆる政策を総動員しなければ、なかなか現在の危機的状態から抜け出すことは難しいでしょう。
【参考記事】
●ドル買い方針。ユーロ/ドルの売りに妙味!? 過去最安値更新のトルコリラは底が見えず?(8月10日、今井雅人)
■ユーロ/米ドル、英ポンド/米ドルのショート戦略で
トランプ大統領は、先週(8月6日~)、トルコから輸入するアルミニウムと鉄鋼に対して関税を倍増させると発表しましたが、それに対して、トルコは乗用車やアルコール、たばこなどといった一部のアメリカ製品に対して、従来の2倍の関税を課すという報復措置を発表しました。
トランプ大統領はトルコから輸入する鉄鋼とアルミニウムへの関税を倍増させると発表。トルコを取り巻く環境はさらに厳しくなっている… (C)Chip Somodevilla/Getty Images
トルコを取り巻く環境は、益々厳しくなっています。
今週(8月13日~)の急落で、市場には達成感が出てきているため、トルコリラも当面は上昇するかもしれませんが、エルドアン大統領の姿勢が変わらない限り、先行きは不透明です。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:トルコリラ/円 日足)
総合的に考えると、欧州通貨に対しての米ドル高を予想して、ユーロ/米ドル、英ポンド/米ドルなどのショート(=売り)が有効ではないでしょうか。
【参考記事】
●ドル買い方針。ユーロ/ドルの売りに妙味!? 過去最安値更新のトルコリラは底が見えず?(8月10日、今井雅人)
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 日足)
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/米ドル 日足)
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