■米ドル上昇一段落をエリオット波動論で確認
この見方を説明するにはエリオット波動論の視点が必要なので、9月4日(火)に作成したドルインデックスのチャートをもって解説したい。
エリオット波動論では、メインラリーが往々にして5波構造をもって構成され、また完成されると説明されているから、今年(2018年)2月安値を起点とした、ドルインデックスの全上昇幅を見てみると、チャート上に記したように、8月高値をもって5波構造をすでに完成させた可能性が大きい。
(出所:Bloomberg)
この見方を証左する要点として、以下の2つの特徴がみられることも大きいかと思う。
まず、メインラリーにおける子波2と子波4は調整子波(メインラリーの方向と逆)とされるが、両子波自体に「交代の法則」があるとされる。つまり、子波2がシンプル(ジグザグ変動)な特徴を示すなら、子波4は複雑な値動きを見せるのが法則どおりの展開である。反対の場合も然り。
今年(2018年)3月1日(木)~27日(火)までの下落(子波2)をジグザグ変動と見なした場合、6月14日(木)前後~7月26日(木)前後の値動き(子波4)は明らかに複雑で、「アセンディング・トライアングル」(上昇三角形)を形成したから、前述の「交代の法則」が証左されたわけだ。
ゆえにその後、「アセンディング・トライアングル」の上放れもあって、最終子波である第5子波が確認されたので、3月安値を起点とした強気ラリーが最終段階に入ったことも示唆されたわけだ。
次に、8月高値からの反落は、前述の「アセンディング・トライアングル」の中に当たる水準まで、深く押してきたから、第5子波はまだ続くというよりも、すでに完成された公算が大きい。
■8月高値を起点とした反落は比較的大きくなる可能性がある
したがって、2月安値を起点とした全上昇波は、エリオット波動論の視点では、いったん完成した公算も大きく、8月高値を起点とした反落は、調整的な値動きとはいえ、比較的大きな値幅を達成する余地がある。
(出所:Bloomberg)
なぜなら、今回の調整は2月安値を起点とした全上昇幅に対する調整となるからだ。足もとのレベルに留まらない公算も大きいだろう。全上昇に対する38.2%~50%押しといった計算では、おおむね92半ば~93半ばまでの反落もあり得るから、要注意だ。
■ユーロ/米ドルは1.19ドル台前半まで切り返す余地あり
ドルインデックスでみる足元の市場の構造は上述のとおりだが、仮にこの見方が正しければ、一番「恩恵」を受けるのはユーロ/米ドルであろう。
なにしろ、ユーロ/米ドルはドルインデックスとの逆相関が一番強いから、ユーロ/米ドルはこれからいったん1.17ドル台後半~1.19ドル台前半まで切り返す余地を有するのでは…と推測される。
(出所:IG証券)
逆相関性においてユーロ/米ドルに劣る英ポンドや豪ドルといった円以外のメイン外貨は、結局、ユーロとの関係で測られる。
基本的には米ドル全体の頭の重さが確認される中、英ポンドも豪ドルもいったん反発してくるとみるが、ユーロ/英ポンドの強気変動、そして、ユーロ/豪ドルの2月高値以来の高値更新(これから2月高値のブレイクも必至とみる)に照らして考えると、英ポンドの切り返しがユーロに遅れ、また豪ドル/米ドルはなお下値リスクがくすぶっている状況が理解できる。
■ドル/円は反落があっても押し目買いのスタンスを維持すべき
こういったユーロとの比較は、米ドル/円にも通用するので、ユーロ/円の値動きが重要である。
結論から申し上げると、トランプ米大統領の対日不満が報道され、日米貿易交渉懸念による米ドル/円や日本株の失速が心配されるが、ユーロ/円の値崩れがない限り、同懸念も行きすぎで、いずれ剥落してくるだろうと思う。
今晩(9月7日)の米雇用統計より、日米貿易交渉懸念が近々の米ドル/円の値動きを左右する、といった可能性は排除できないが、反落があっても保ち合いの状況を保ち、また、押し目買いのスタンスを維持するべきであろう。このあたりの考えや検証はまた次回。市況はいかに。
株主:株式会社ダイヤモンド社(100%)
加入協会:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)