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田向宏行
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エミン・ユルマズの「トルコリラ相場の明日は天国か? 地獄か?」

トランプ大統領が米軍のシリア撤退表明!
2019年のトルコリラは地政学リスクが鍵に

2018年12月26日(水)16:08公開 (2018年12月26日(水)16:08更新)
エミン・ユルマズ

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■トランプ大統領がシリアからの米軍撤退を表明

 今週(12月24日~)、トルコで一番大きな話題はトランプ大統領が米軍をシリアから撤退させるというニュースでした。

米軍をシリアから撤退されると表明したトランプ大統領。このニュースを一番喜んでいるのは…!?  (C)Scott Olson/Getty Images

米軍をシリアから撤退されると表明したトランプ大統領。このニュースを一番喜んでいるのは…!?  (C)Scott Olson/Getty Images

 これはサプライズな判断で、12月14日(金)に行われたトランプ大統領とエルドアン大統領の電話会談の際に、突然決まったと米国のメディアが報じています。

 この判断はマティス国防長官の辞任とも関係があると言われていて、マティス長官は、「シリアからの撤退は米国の友人を捨て、地域をイランとロシアにプレゼントするのと一緒だ」と考えているようです。これがトランプ大統領と彼の衝突の理由となっています。

このニュースを一番喜んだのは当然ロシアで、ロシアのプーチン大統領は、シリアに米軍が駐在する必要がないとトランプ大統領の決断を褒めました。マティス長官の気持ちが、わからないでもない気がします。

 米軍のシリア撤退が実現すれば、これはエルドアン政権にとっても大きな外交勝利となるでしょう。米軍の後ろ盾がなければシリア北部のクルド勢力は思うように動けませんし、トルコ軍はシリアに侵入しやすくなります。

【参考記事】
原油続落でトルコリラ/円は22円台も視野。シリア情勢悪化でトルコが恐れることとは?(12月19日、エミン・ユルマズ)

■2018年はトルコリラ投資家にとって難しい年だった…

 今年(2018年)は、トルコリラ投資家にとって極めて難しい年でした。8月のトルコショックでトルコリラは急落し、その後、安値から3割近く反発したものの、年初来では、まだ28%安となっています。

トルコリラ/米ドル 週足
トルコリラ/米ドル 週足

※通常は「米ドル/トルコリラ」ですが、トルコリラの上昇と下落をわかりやすくするため「トルコリラ/米ドル」のチャートを掲載しています。

(出所:Bloomberg)

 9月以降はトルコリラを取り巻く環境が改善したのか、トルコリラの反発につながりました。原油価格の下落によって、トルコの経常赤字は縮小しました。

【参考記事】
経常収支の大幅改善はトルコリラに追い風! でも、22円超えが難しいと見るワケは…!?(12月12日、エミン・ユルマズ)

 また、サマーシーズンの観光収入が回復したことも経常赤字を縮小させました。マクロ環境は、今後もトルコリラに追い風だと考えています。原油価格は足元で50ドルを割っていて、すぐに上昇に転じる可能性は低いと考えます。

WTI原油先物 週足
WTI原油先物 週足

(出所:Bloomberg)

トルコ経常収支
トルコ経常収支

(出所:Bloomberg)

 外交面でもトルコの状況は、8月に比べて大きく変わりました。

 ブランソン牧師の釈放、カショギ氏殺害事件での米国とサウジの連携の崩壊、直近の米軍のシリアからの撤退は、すべてエルドアン政権にとって大きな外交的勝利となりました。

【参考記事】
ブランソン牧師釈放。経済制裁解除も近い!? トルコリラ/円は20円超えに向けて上昇中!(10月17日、エミン・ユルマズ)
エミン氏が緊急生出演! サウジ殺害疑惑をワールドビジネスサテライト(WBS)で解説

ホワイトハウスで会談するトランプ大統領とブランソン牧師 (C)Mark Wilson/Getty Images

ホワイトハウスで会談するトランプ大統領とブランソン牧師。牧師釈放もエルドアン政権にとって外交的勝利に  (C)Mark Wilson/Getty Images

 8月のトルコリラショックで窮地に追い込まれた政権にとって、起死回生になったと言えます。

■2019年3月に実施される地方選挙がカギを握る

 しかし、すべてはトルコ政府の思惑どおりにはいきませんでした。

 もっとも大きな課題は、インフレ率の上昇です。今年(2018年)のトルコのインフレ率は20%を超えました。

トルコCPI
トルコCPI

(出所:Bloomberg)

 エルドアン政権のレガシーは、長年続いたトルコのハイパーインフレを一桁台に抑えたことでしたので、インフレ上昇は、そのレガシーを破壊しようとしています。

 この出来事が、国民の選択にどこまで影響を与えるかは、3月の地方選挙で明らかになります。

 来年(2019年)のトルコリラの見通しは、3月まで基本的に堅調であると予想していますが、その後の見通しについて選挙の結果を見てからの判断となります。

【参考記事】
トルコリラは、2019年3月まで堅調と予想。だけど…2つのリスク要因には警戒を!(11月21日、エミン・ユルマズ)

トルコリラ/円 週足
トルコリラ/円 週足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:トルコリラ/円 週足

 選挙で現政権の支持率が大きく下がるようだと、トルコの政権運営はスムーズにできなくなる恐れがあるからです。

■地政学的な要因で為替が大きく動く可能性あり

 もう1つのリスク要因はやはり、トルコ軍がユーフラテス川の東海岸にあるクルド勢力に対して軍事作戦を実行することです。

【参考記事】
原油続落でトルコリラ/円は22円台も視野。シリア情勢悪化でトルコが恐れることとは?(12月19日、エミン・ユルマズ)

 トルコの民族主義者の票を獲得する狙いもあるので、政府は選挙前に軍事作戦に踏み切る可能性があります。この軍事作戦はトルコと欧米諸国の関係を再び悪化させる可能性が大きいと考えます。

 米軍がシリアから撤退するにしても、残るにしても一緒です。せっかく改善したトルコの外交的ポジションが弱体化し、トルコリラの売りにつながる可能性があります。

トルコリラ/円 週足
トルコリラ/円 週足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:トルコリラ/円 週足

トルコは新冷戦の東西地政学断層のど真ん中に位置する国です。やはり、来年(2019年)も地政学的な要因で為替が大きく動く可能性があります。

【参考記事】
トルコ人エミン氏がズバリ直言。シリアよ、落ち着け!その時トルコリラは逆に動き出す

 地政学リスクについては、できる限りこのコラムで伝えていこうと思いますので、来年(2019年)もかかさず、このコラムを読んでいただければと思います。

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※来週1月2日(水)の「トルコリラ相場の明日は天国か? 地獄か?」は休載とさせていただき、2019年は1月9日(水)から配信いたします。

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