(「伝説のディーラー・藤巻健史氏に聞く(2) 日銀破綻を経て日本の財政は再建される!」からつづく)
■藤巻健史氏が仮想通貨に注目した理由とは?
そして、藤巻健史氏が推奨するもう1つの避難先が仮想通貨だ。
「僕が仮想通貨に注目したのは、実際に危機が起きた国で、資産を避難させるときに1番利用されていたのが仮想通貨だったからです。キプロス危機のときは、キプロスをタックスヘイブンとしていたロシア人や、キプロス国民がみな、仮想通貨に逃げていました。それ以外にも、資本規制で海外に送金できない可能性が出た国では、どこも仮想通貨が資産の避難先になっています。
日本でも、日銀が破綻するような最悪の場合はそういうことが考えられますから、仮想通貨を取引できる口座を持っておいた方が良いと思ったんです」
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藤巻氏は資産の逃避先として世界中で1番利用されているのが仮想通貨だという。写真はビットコインのイメージ画像 (C) yuruphoto / PIXTA(ピクスタ)
「僕は理系の人間ではないので、どの仮想通貨が値上がりしそうなのかはわかりません。重要なのは、避難通貨としての役割ですから、取引ボリュームのある仮想通貨をいくつか分散保有しておいて、そのうち通貨として本当に価値のあるものが出てくれば、その通貨に集中すれば良いのかなと思っています。
だから、僕は今、仮想通貨を取引できる口座を開いておいて、1回や2回、練習をしておいた方が良いということを、みなさんに勧めています。危機が来たときに、簡単に口座は開けませんし、練習をしておかないと、いざというときに取引できませんから」
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■明日、Xデーが来てもおかしくない
藤巻氏の著書『日銀破綻』には、
火災保険をかけて万が一、火事が起こらなくても「あ~、良かった」と思うのが普通で、「火災保険料を損した」と思う人はいないと思います。国の財政状況、日銀の財務内容を考えると、火事(=Xデー)の確率は高まっているのだと思います
という記述がある。
藤巻氏だって、Xデーが来てほしいと願っているわけではないと思うが、自分の資産を守る方法を真剣に考えてもらいたいと、警鐘を鳴らし続けているのだろう。
万が一、Xデーが来たときのための保険の意味で、仮想通貨や米ドルを保有すべきと主張する藤巻氏。自分の資産を守る方法を真剣に考えてほしいという気持ちがこもっているのだろう
「ロバの背中に藁(わら)を乗っけていくと、どれだけ軽い藁でも、どこかの時点でたったの1本を乗せただけで、ロバの背骨が耐えきれずにグシャっと折れるんです。そよ風がちょっと吹いただけでも、そういう状態になりえます。もう日本の財政は、そういう状況にきている。明日、Xデーがきてもおかしくないんです」
万が一の事態に備えて、あらかじめ準備をしておけば、いざというときに役立つだろう。
■仮想通貨市場はまだ未熟。完璧な環境になるための条件とは?
最後に、仮想通貨市場の将来像についても藤巻氏に聞いてみた。資産の避難先として仮想通貨に注目するうちに、仮想通貨と表と裏の関係にあるブロックチェーンにも夢を感じたという藤巻氏。しかし、資産運用手段としての仮想通貨市場には、まだまだ未熟な部分が多いと指摘する。
「ブロックチェーンの技術は非常に有望ですし、仮想通貨自身にも魅力があるとは思っています。しかし、今の仮想通貨はボラティリティーが大きすぎて、トレーディングのツールにはまだなりません。
ボラティリティーが低下するためには、やはり機関投資家の参入が必要です。そのためには、デリバティブ、オプション、先物の市場ができて、カストディサービス(※)がきちんと確立されることが重要でしょう。元が良いものであれば、市場は成長します。僕は、仮想通貨はこれに値するものだと思っていますから、しっかりした環境ができあがれば、完璧な良いマーケットになると思っています」
(※編集部注:「カストディサービス」とは、投資家に代わって有価証券の管理や決済、配当金の受領などを行うサービスのこと)
資産運用手段としての仮想通貨市場には、まだまだ未熟な部分が多いと語る藤巻氏。完璧なマーケットができあがるためには、機関投資家の参入が欠かせないと指摘する
■税制が仮想通貨やブロックチェーンの未来を潰してはならない
また、藤巻氏は現在、仮想通貨税制をあるべき形に変えていくための取組みにも力を入れている。昨年(2018年)12月に発足した、自身が会長を務める「仮想通貨税制を変える会」には、趣旨に賛同するサポーターが7000人近くも集まっている。
現在の税制では、仮想通貨の取引で得た利益は雑所得に分類される。課税方式には、所得の種類に関係なく合算して課税する「総合課税」が適用されており、税率は最大で55%(※)だ。
(※所得税と住民税を合算した税率。2013年~2037年は、所得税に対して、さらに2.1%の復興特別所得税が課される)
藤巻氏は「税制が仮想通貨やブロックチェーンの未来を潰してはならない」として、主に以下の4つの税制変更を提起している。
1.最高税率55%の総合課税から20%の分離課税へ
2.損失の繰越控除を可能に
3.仮想通貨間の売買を非課税に
4.少額決済を非課税に
ざっくり言えば、今の制度では最高税率が55%とあまりにも大きく、取引で生じた損失も翌年以降に繰り越すことができない。仮想通貨を使った実店舗での支払い時や、仮想通貨間の売買まで課税の対象になっているのはおかしいから、変えていこうというのが主題だ。
ちなみに、FXの取引で生じた利益も仮想通貨と同じ雑所得だが、FXは特例として「先物取引に係る雑所得等」に分類され、他の所得と分離して申告できる分離課税が適用されている。税率は一律で20%(※)。損失を3年間繰り越して、翌年以降の利益と相殺できる「繰越控除」や、CFDや日経225先物、商品先物などのデリバティブ系商品との「損益通算」も可能だ。
(※所得税と住民税を合算した税率。2013年~2037年は、所得税に対して、さらに2.1%の復興特別所得税が課される)
【参考記事】
●【2019年版】FXの税金/確定申告まとめ。20万円で申告が必要って、どういうこと?
残念ながら、仮想通貨にはこうした特例が認められていない。これまでにFXや先物取引などで利益が出て確定申告をしたことがある人ならわかると思うが、FXの税金って、今の仮想通貨と比べると、かなり優遇されていると言えるのだ。
藤巻氏は、最終的にはFXと同じ、一律20%の分離課税が適用されるように税制を改正しようと、国会などでも働きかけている。実現すれば、仮想通貨市場の厚みが増し、今以上に取引しやすい環境になることが予想できる。今後の取組みに注目したい。
【参考コンテンツ】
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(取材・文/ザイFX!編集部・堀之内智 撮影/和田佳久)
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