■メイ英首相の離脱協定案、3度目の正直で可決の可能性も
先週(3月11日~)は、「英ポンドの運命を握る3日間」がコンセンサスどおりに通過。
3月20日(水)までにメイ英首相のEU(欧州連合)離脱協定案について3度目の採決を行うことになりました。
「今回も私の案が否決されるならEUへブレグジット(BREXIT)の延期を申し入れる」ということなのでしょう。ハモンド英財務相によると、前回否決に票を投じた議員の多くが賛成へ回る可能性があるようです。
【参考記事】
●英ポンドの運命を握る3日間! 採決次第で方向性が決まる!? 米ドル/円は当面底堅そう(3月11日、西原宏一&大橋ひろこ)
●英・合意なき離脱の可能性は、ほぼ消滅。円売り需要を背景に米ドル/円は115円へ!(3月14日、西原宏一)
●EU離脱期限の延期が可決されない可能性!? 基本戦略は対円・対ユーロでの米ドル買い(3月14日、今井雅人)
英国議会では3月20日(水)までにメイ英首相のEU離脱協定案について3度目の採決を行うことに。ハモンド英財務相によると、前回否決に票を投じた議員の多くが賛成へ回る可能性もあるようだ (C)Matt Cardy/Getty Images News
今度こそ可決される可能性が出てきたということですか?
その可能性も充分あるようです。
■3度目の採決はどちらに転んでもポジティブ!? 市場で楽観論も
トゥスクEU大統領からは、3月21日(木)のEUサミットで最低1年の延期を要請するとの発言も出ていますね。
延期期間が長くなるほど2回目の国民投票の可能性も高まり、ブレグジットそのものがなくなるかもしれない。ブレグジット強行派からすれば最悪の選択です。
「ブレグジットがなくなるよりはメイ英首相の案でいい」と考える議員が今回は賛成に回る可能性が出てきた、ということですね。
3度目の採決が可決されればポジティブ、延期となってもブレグジット取りやめの可能性がありポジティブ――どちらに転んでもポジティブだということになりますね。
ロジックで言うとそうなりますし、市場では楽観論が広がっています。
ただ、まったく別の材料が出てくるかもしれないですし、トレードの観点からは広まりすぎた楽観もリスク。決め打ちせず、慎重に考えていきましょう。
■「構造転換」して「リスクオフ=円高」ではなくなっている?
先週(3月11日~)は米中、米朝でも動きがありましたね。ムニューシン米財務長官は「米中首脳会談を今月(3月)に行うことはない」と発言しました。
「難航しているから延期」とする見方と、「合意が近いから細部を詰めるために延期」とする見方に割れていますね。個人的には後者だろうと思います。
市場の大勢も同じ見方なのか、株式市場は堅調ですね。
ただ、北朝鮮が米朝協議の中止を示唆すると瞬間的に米ドル/円が売られました。すぐ買い戻されましたので、一昨年(2017年)によく見られた北朝鮮によるミサイル発射実験への反応と同じでしたね。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 1時間足)
北朝鮮関連のヘッドラインで瞬間的に反応することはあっても、市場の流れを変えるようなことはないのでしょう。
米ドル/円が下がっても、期末が近づいている本邦勢の買い注文が待ち構えていますし、先週(3月11日~)も話したように「構造転換」が起きており、「リスクオフ=円高」ということではなくなっているのかもしれません。
【参考記事】
●英ポンドの運命を握る3日間! 採決次第で方向性が決まる!? 米ドル/円は当面底堅そう(3月11日、西原宏一&大橋ひろこ)
北朝鮮が脅しではなく実際にミサイルを発射するようなことがあれば、トランプ米大統領も黙ってはいないでしょう。
もし、一戦を交えることになれば地政学的に「リスクオフの円高」ではなく、日本株売り・円売りの「セル・ジャパン」的な動きになる可能性も否定できませんね。
考えたくないシナリオですが、そのときはセル・ジャパンとなるかもしれないですね。
短期的な話に戻すと、ノーディール・ブレグジット(合意なき離脱※)が否決されて英ポンドが上昇し、一方で米金利が低下して対円以外では米ドル安が進み、結果としてクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)が上昇。
米金利低下で株式市場も強く、いわゆる「ゴルディロックス(適温相場)」ですね。
(※編集部注:「合意なき離脱」とは、2年間の交渉で合意に至らず、何の取り決めもないまま、英国がEUを離脱すること)
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 4時間足)
■米株は高値更新、VIX指数が下がり過ぎると逆に不安
4月のNYダウを見ると1990年以降、72%の確率で上昇しています。ナスダック総合指数やS&P500も昨年(2018年)末の急落前の高値を更新してきました。
そのためか、VIX指数も低下していますね。VIX指数が下がり過ぎると、逆に不安ですが……。
(出所:Bloomberg)
(出所:Bloomberg)
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運行停止問題でボーイング株が急落したこともありNYダウは弱いですが、前回高値を超えてからセル・イン・メイの5月を迎えるという展開も想定できますね。
(出所:Bloomberg)
■米ドル/円と英ポンド/米ドルの押し目買いで!
今週(3月18日~)は3月19日(火)、3月20日(水)にFOMC(米連邦公開市場委員会)が控えています。現状維持の見通しですが、パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長の発言に注目ですね。
あとは3月21日(木)に豪雇用統計とニュージーランドのGDP(国内総生産)。日本が祝日ですし、早朝の急変に注意ですね。
豪ドルは、豪ウェストパック銀行が年内2回の利下げ予想を出しており、年末までの利下げ織り込み度も72%。市場は利下げへの動きを警戒しています。
現状、マーケットが利下げ予想ですので、豪雇用統計が強い数字になると見直し買いが入る可能性もありそうですね。
今週の戦略はどう考えますか?
米ドル/円の押し目買いを継続しつつ、明日(3月19日)にも行われる英議会の採決を見ながら英ポンド/米ドルも押し目を買っていきたいと思います。
(構成/ミドルマン・高城泰)
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