■MV3でメイ首相勝利!? ダメなら期限ギリギリにMV4も…?
3月12日(火)に実施されたMV2は、賛成242 vs 反対391の149票差で、メイ首相の大敗となった。MV1のときの230票差と比較すれば、かなり縮まったとも言えるが、まだまだ可決のハードルは高い。
ただし、MV1で反対票を入れた、ブレグジット強硬派のデービス元ブレグジット担当相が、MV2では賛成票を投じたことを考えると、コックス法務長官の法的見解が好ましい内容に変更されれば、与党・保守党の強硬派議員のうち最大75人と、DUPの10人が賛成に回る可能性が出てきたと、週末には報じられている。
MV2の149票差のうち、強硬派議員の75人とDUPの10人が賛成に回ったと仮定した場合、可決には残り64票が必要となる。
確認は取れないが、野党・労働党には、党の基本方針である2度目の国民投票を支持しない議員が、約70人いると言われている。それとは別に、ブレグジット問題で、これ以上の時間を割くのは無駄だと考える議員が、超党派で30人程度いるとも言われている。
もし、これらの議員すべてがMV3で賛成票を投じれば、メイ首相は楽々と勝てる公算だ。
そして、一部の報道では、メイ首相はMV3が否決されたら、3月29日(金)の離脱期限ギリギリに、MV4を想定しているという話まで出ている。
■労働党が2度目の国民投票修正案を提出か?
週末に、労働党の動きが活発になってきた。とうとう、党として2度目の国民投票実施の修正案を提出するようだ。今まで、何度も2度目の国民投票に関する修正案の採決を行なってきたが、これらはすべて労働党議員の修正案であり、党としてのものではなかった。
しかし、週末に開催されたコービン党首をはじめとする労働党トップレベルの話し合いでは、もし、メイ首相がMV3を実施するのであれば、今こそが2度目の国民投票修正案を提出すべきタイミングであると、意見が一致したと報道されている。
彼らが急いだ背景には、これ以上、提出が遅れれば、国民投票を支持する労働党議員の離党者が増えることを意味しており、幹部たちも止むに止まれずの決定とも言えよう。
英ガーディアン紙によると、労働党はこの国民投票を「confirmatory referendum(確認のための国民投票)」と呼んでおり、質問内容は「メイ首相のブレグジット案、あるいは残留」の2択になるという、観測記事を載せている。
※筆者作成
■2度目の国民投票修正案は可決されるか?
3月14日(木)に「修正案H」が採決された。これは、元労働党のワラストン議員が提出した、「2度目の国民投票実施」の修正案である。結果は「賛成85 vs 反対334」と、249票差で否決されている。
この時の、労働党議員の投票配分は、18人が反対、25人が賛成、残りの202人が棄権だった。
党として修正案を提出し、棄権した202人全員が賛成票を入れたと仮定した場合でも、もともとの賛成の85人に202人が追加されて賛成票は合計287人。これでは過半数に達しない計算となる。
■EUサミット、交渉期間延長は全会一致となるか?
3月21日(木)~22日(金)に開催される、EUサミット(首脳会議)。ここで、英国は交渉期間の延長を要請する。延長の長さによっては、5月の欧州議会選挙に、英国も参加することになるかもしれない。事実、英国選挙管理委員会は、先週末にあわてて準備を始めたと伝えられている。
欧州議会選挙については、ここでは掘り下げないが、今回のEUサミットでの一番の焦点は、EU27カ国すべてが、英国の交渉期間延長を承認してくれるかである。全会一致が必要であるため、1カ国でも反対国があれば、英国は3月29日(金)に合意なき離脱となる。
数々の報道を読んで集めた情報を元に、表を作成してみた。
※筆者作成
この中でも、特にリトアニアは、ブレグジットで時間を取られることに、苛立ちを隠していない。そして、欧州議会のフェルホフスタット・ブレグジット交渉責任官は、英議会で過半数以上の賛成が得られた明確な目的がない限り、24時間の延長も許さないと、強気な発言をしている。そのため、EUサミットでの決定には注意したい。
■6月30日まで延長の場合のタイムラインは?
EUサミットで、6月30日(日)までの延長が承認されたと仮定した場合のタイムラインは、以下のとおりとなる。
※欧州議会のデータを基に筆者作成
■ここからの英ポンドはどう動く?
大手通信社ロイターによる年初の調査では、年末(2019年末)の英ポンド/米ドルの予想は、1.38ドル台となっていた。先週(3月11日~)は、議会採決で乱高下したが、1.3380ドル台の高値をつけている。
※筆者作成
ここからの英ポンド相場について考えるため、まず最初に、BOE(イングランド銀行[英国の中央銀行])が毎日発表している、英ポンドの実効レートをチェックしてみよう。
※BOEのデータと筆者の情報を基にザイFX!が作成
3月14日(木)は80.6819で終了し、ずっとレジスタンスとなっていた80.30~50台を、上に抜けて終了した。そして、2016年6月に実施された、英国民投票以降の高値と安値の半値レベルである80.9023まで、あともう少しに迫った。ここを抜けると、2018年高値81.2074や、61.8%レベルの82.5640が上値メドとして続く。
次は、英ポンド/米ドルの週足チャートを見てみよう。チャートには、200週SMA(単純移動平均線)と、そこからの乖離率を赤いラインで入れている。現在、あと少しで、200週SMAに到着しそうに見える。
※筆者作成
つまり、3月29日(金)に合意なき離脱とならない限り、200週SMAが通る1.3580ドル台を目指す動きとなることが考えられる。
ただし、ユーロ/英ポンドの週足のローソク足が、0.8500ポンドを下抜けて終了することが、その条件となるかもしれない。

(出所:Bloomberg)
(編集担当/ザイFX!編集部・堀之内智)
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