■逆イールド相場は一時的。米ドル/円は111円台
先週(3月25日~)の金融市場は、米国の逆イールド(短期金利が長期金利を上回る状態)からの、景気後退を懸念した相場展開となっていました。
【参考記事】
●超ハト派FOMCでも株価頭打ち。景気後退? 円高傾向だが、特にユーロ/円は戻り売りか(3月26日、バカラ村)
●ドイツ発の世界景気減速懸念から株価急落! 米国債は「逆イールド」で景気後退の前兆か(3月25日、西原宏一&大橋ひろこ)
ただ、通常の逆イールドは、2年物と10年物の国債利回り逆転ですが、今回は3月物と10年物の国債利回りでの逆イールドであったこと、そして、FRB(米連邦準備制度理事会)がハト派になったことへの過剰反応ということもあって、米長期金利(10年物国債利回り)の行き過ぎた低下は、2.34%あたりで止まりました。
(出所:Bloomberg)
米ドル/円は、期末の買いが出たことや、米長期金利がそこから2.50%付近まで反発していることもあり、4月1日(月)は、111.43円(※)まで上昇してきています。
(※編集部注:本記事の寄稿後、4月2日(火)の東京時間に米ドル/円は一時、111.46円付近まで上昇した)
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 1時間足)
■合意なき離脱なら英ポンド長い下降トレンドへ
3月29日(金)は、英国で離脱協定案の3回目の採決もありましたが、これも否決されています。
市場参加者も、ブレグジット(英国のEU離脱)問題は、早く終わってほしいと考えている人が多いですが、まだ決着がつかず、次は4月12日(金)の離脱期限が注目となります。
ここでは、長期の離脱延期か、合意なき離脱(※)か、という状態になってきています。
(※編集部注:「合意なき離脱」とは、2年間の交渉で合意に至らず、何の取り決めもないまま、英国がEUを離脱すること)
可能性として高いのは、長期の離脱延期になります。
現在は、合意なき離脱の可能性が以前より高まっているため、長期の離脱延期となれば、それが低下するので、英ポンド高になると考えています。
可能性は低いですが、もし、合意なき離脱となると、英ポンドは急落します。そして、他の金融市場もリスク回避の動きになると考えています。
(出所:Bloomberg)
この場合は、トレンドがしばらく続くことになるため、遅れて英ポンドを売ったとしても、十分、間に合うほどの下げになると考えています。
【参考記事】
●メイ首相最後の賭け! 3月19~20日も山場、21~22日も山場。混乱の英国から直送レポ!(3月18日、松崎美子)
●EU離脱案の採決中止! ますます混乱する英国で、メイ首相降ろしのクーデター勃発!?(3月25日、松崎美子)
●ブレグジット混迷で英議会は崩壊寸前!? メイ首相は条件付きで辞任表明するも…(4月1日、松崎美子)
■今はリスクオンになりやすい環境
昨日(4月1日)から、日本は新年度入りしており、さらに新元号の発表もあって、ご祝儀相場となり、日経平均も上昇してきています。
(出所:Bloomberg)
例年、4月は株式市場が堅調になりやすく、さらに各国中銀が緩和方向に向かっていることもあって、リスク選好になりやすい環境です。
FRBは超ハト派で、ECB(欧州中央銀行)もハト派となっており、RBNZ(ニュージーランド準備銀行[ニュージーランドの中央銀行])もハト派に変わっています。各国がハト派となると、リスク資産は株式市場に行きやすいことになります。
【参考記事】
●ハト派は米国だけじゃない! 米ドル安より円高を警戒。ユーロ/円の売り戦略を検討へ(3月28日、今井雅人)
リスク材料としては、ブレグジット問題ですが、これも合意なき離脱になる可能性は低く、米中通商協議に関しては、4月3日(水)からワシントンに場所を変えて、閣僚級会議が再開されます。
ただこれも、今はリスク回避となる内容は出てきていないため、リスクオンになりやすいと考えるべきかと思います。
■米ドル/円はまだ強くなりそう
米ドル/円は逆イールドでのリスク回避で、109.70円まで下がりましたが、目先の底をつけた状態となっており、期末の買いや、株式市場が今月(4月)は堅調になりやすいこともあって、まだ強くなると考えています。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)
今月(4月)下旬から10連休となるため、ここでの円高が市場では懸念されていますが、新元号へ変わるときに日経平均などが急落するわけにもいかないため、買い支えも出てくると思います。
また、市場参加者から連休前にポジションを落とす動きも出てくるため、フラッシュ・クラッシュのような動きは考えにくいと思います。
【参考記事】
●ゴールデンウィークは円高になるって本当? 過去20年を徹底検証。10連休はどうなる…
連休までに円売りに偏るようなことになれば、10連休での円高も考えられますが、そうでなければ大丈夫ではないかと考えています。
■ユーロ/米ドルの上昇はショートカバー頼み!?
ユーロ/米ドルは、3月のFOMC(米連邦公開市場委員会)のときを高値にして、軟調な展開となっています。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 日足)
FOMCはハト派な内容でしたが、ユーロ圏の方が景況感が悪いため、相対的には米ドルの方が強く、ユーロ/米ドルが上がるとすれば、ショートカバーぐらいしかないのではないかと思います。
【参考記事】
●超ハト派FOMCでも株価頭打ち。景気後退? 円高傾向だが、特にユーロ/円は戻り売りか(3月26日、バカラ村)
週足も、上値が徐々に切り下がってきており、1.14ドル台を超えることは、難しいように見えます。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 週足)
■ユーロ/米ドルは市場参加者の予想に警戒!?
ユーロ/米ドルは、基本的に売り方向で考えており、3月のECB理事会のときの1.1175ドルも、下抜ける可能性の方が高いと考えています。
(出所:Bloomberg)
まだ下がると考えていますが、気をつけたいのは、ユーロ/米ドルは市場参加者の予想する方向が偏ると、反対方向へ行くことが非常に多いイメージがあります。
たとえば2018年も、その年のユーロ/米ドルの予想は、1.30ドルや1.35ドルなどへの上昇といったものばかりで、私も上昇するのではないかと考えていましたが、実際には下がりました。市場参加者の予想に偏りが多くなってくると、反対に推移することも考えなければいけないかと思います。
今回も、市場参加者の目線が下ばかりになっていることは、気になるところです。
今は下降トレンドのため、まだ売り目線ですが、もし下げ止まるようなことになると、その点を気をつけなければいけないかと思います。
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