■米国の年内利下げ観測は後退
10連休も終わり、本日(5月7日)から、日本勢が本格的に復帰してきます。
10連休中のイベントを振り返ると、まずは4月30日(火)~5月1日(水)に、FOMC(米連邦公開市場委員会)がありました。
超過準備預金の金利を5bp(0.05%)引き下げたことで、瞬間、米ドル安となりましたが、その後のパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長の会見では、雇用と経済は好調、低インフレも一時的だとの発言があり、米ドル高となりました。
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FRBがインフレ指標として注視している、コアPCE(個人消費支出)デフレーターが1.6%と低く(4月29日発表分)、米雇用統計での平均時給も前月比0.2%と伸びてこないため(5月3日発表分)、低インフレが続いていますが、パウエルFRB議長が、この推移は一時的であって、今後のインフレは上昇してくるとの見解を示したこともあって、年内の利下げ観測が後退しました。
【参考記事】
●利下げ期待を吹き飛ばしたFOMC、ドル急速に買い戻し(5月2日、持田有紀子)
●引き続き製造業は弱く、米雇用は強い。FRB年内利下げ観測後退ドル買い戻し。(5月2日、ZERO)
■株式市場は水準的にも季節的にも調整しやすい状況
米国株は、高値圏で推移していることに加え、5月はセル・イン・メイ(※)の時期でもあるため、株式市場は水準的にも季節的にも、調整しやすい状況です。
(※編集部注:「セル・イン・メイ(Sell in May)」とは、元々は米国株に関する相場格言で「5月に株を売れ」という意味。5月に株が下がりやすい傾向があるためできた言葉。そこから少し意味が転じて、「5月にリスク資産が急落すること自体」を指して使われることがある)
もし、パウエルFRB議長がタカ派な発言をすると、米国株が急落する可能性もあったため、ハト派な発言が続くのではないかと思いましたが、実際は、中立的な内容となりました。
その影響もあって、米国株は下がり始めます。
(出所:Bloomberg)
■トランプ大統領のツイートでギャップダウン
5月5日(日)には、トランプ大統領がツイッターで、2000億ドル相当の中国製品への関税を、5月10日(金)に、10%から25%へ引き上げると表明。さらに、3250億ドル相当の中国製品にも、25%の関税を発動すると発言しました。
これは、米中通商協議の進展が遅すぎるために、中国への圧力をかける発言になります。
【参考記事】
●トランプ砲で米ドル/円は窓開けスタート! 米中交渉決裂なら米国株は総崩れに…!?(5月6日、西原宏一&大橋ひろこ)
最近の報道は、米中の貿易協議は合意が近いという内容が多く、それを覆す内容でもあったため、今週(5月6日~)の米ドル/円やクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)は、ギャップダウンで始まりました。
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ただ、昨年(2018年)のトランプ大統領は、中国に対し、強硬姿勢をとっていたものの、株式市場が下がっていたこともあって、この強硬姿勢が緩和されていました。
今回はセル・イン・メイの季節で、調整しやすい時期でもあり、さらに大統領選もあるため、強硬姿勢を長く続けるのは、難しいと思います。
■株式市場は緩やかな調整局面か?
今回のトランプ大統領の発言は、中国への一時的な圧力だと思いますが、目先は、株式市場は調整しやすい状況ではないかと思います。
昨年(2018年)後半のときのように、米国株が急落するような動きは想定していませんが、上がれば手仕舞いが出やすい季節性のため、緩やかに調整する動きを想定しています。
(出所:Bloomberg)
昨年(2018年)後半は、FRBは引き締め路線だったこともあって、米国株は下落しましたが、今の金融政策は現状維持ということもあって、大きな下げにはつながらないと思います。
■英統一地方選はEU残留を掲げる自由民主党が躍進
5月23日(木)に欧州議会選挙がありますが、英ポンドはその前に、大きく動き出しています。
5月3日(金)の英統一地方選で、保守党と労働党の二大政党が議席を大幅に減らし、自由民主党が躍進しました。
自由民主党は、EU(欧州連合)残留を政策に挙げていることもあって、国民がそれを望んでいるということになります。
【参考記事】
●6カ月間延長で、EU離脱日は10月31日に。2度目の国民投票実施はあり得るのか!?(4月15日、松崎美子)
ブレグジット(英国のEU離脱)協議に進展がない中で、EU残留を支持する声が多かったこともあって、英ポンドは急騰しました。
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■今週はRBAやRBNZなどが注目材料に!
今週(5月6日~)の注目としては、7日(火)のRBA(オーストラリア準備銀行[豪州の中央銀行])理事会、8日(水)のRBNZ(ニュージーランド準備銀行[ニュージーランドの中央銀行])理事会と米中閣僚級通商協議、そして、米国のインフレ指標(※)になります。
(※編集部注:9日(木)に米生産者物価指数、10日(金)に米消費者物価指数の発表が予定されている)
RBAとRBNZは、ともに利下げ観測がありますが、オーストラリアでは5月18日(土)に、総選挙があります。
総選挙前ということもあって、本来は金融政策を変更しにくいタイミングになりますが、ここでRBAが利下げに踏み込むようであれば、RBNZも引き下げに追随してくるのではないかと思います。
■クロス円の上値が重くなりそう
また、米中閣僚級通商協議は、開催されるのか不透明な状況になってきていますが、開催されたとしても、すぐに合意されるような状況でもないです。
セル・イン・メイの季節性、そして、パウエルFRB議長が中立になっていること、米中通商協議の進展が望めないこと、米国株が高値圏で推移していることから、しばらくは調整(緩やかな下降)になるのではないかと考えています。
そのため、為替市場も、クロス円の上値が重くなるのではないかと考えています。
NZドル/円や豪ドル/円、ユーロ/円などは、しばらくは戻り売りで良いのではないかと考えています。
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