■関税とは実に美しい言葉だ!
トランプ米大統領には、いつも驚かされますね。中国に向かっていた矛先は先週(5月27日~)、突如メキシコへ。移民対策を強化しなければ、6月10日(月)から関税を課すと表明しました。
【参考記事】
●トランプの対メキシコ関税ツイートで株もドル/円も下落。でも、これならかわいい方!?(5月31日、陳満咲杜)
トランプ米大統領は5月30日(木)、メキシコに対し、移民対策を強化しなければ6月10日(月)から関税を課すと表明した (C) Chip Somodevilla/Getty Images
移民対策と貿易は別問題ではあるのですが、国境の壁がうまくいかず、不法移民の流入が止められないため、「メキシコよ、どうにかしろ!」ということなのでしょう。
関税による圧力ですね。
トランプ米大統領は、“TARIFF is a beautiful word indeed!”(関税とは実に美しい言葉だ!)とも話しており、このままでは収まらないでしょう。
グローバル企業は中国の生産拠点をメキシコに移転するのではとの推測もありましたが、この様子だとメキシコもだめだし、カナダでも安心とは言えなくなってきました。
そうすると、米国へ投資するしかなくなってしまう。トランプ米大統領の思惑どおりですね。
■米利下げは年内2回、来年中ごろまでに3回との声も
今月末には大阪でG20(20か国・地域首脳会合)が控えています。
米中首脳が会談して合意に達するのではとの期待もありますが、会ったところで何かが変わるとは思えません。
トランプ砲でメキシコペソ/円は急落しましたが、くりっく365では買いポジションが増加。積み上がったロングポジションの行方が気になります。
WTI原油も1月以来の安値水準へと低下しました。メキシコは産油国であり、米国へ原油を輸出しています。原油も課税対象に含まれるかどうか、まだはっきりしませんが、メキシコ産原油の供給リスクや世界のエネルギー需要減退の思惑が働いたのかもしれません。
米金利も低下し、米10年国債利回りは2.1%台まで下げました。
(出所:Bloomberg)
(出所:Bloomberg)
(出所:Bloomberg)
中国との交渉が、まとまらないうちにメキシコの話が出てきて、株に好影響なわけはありません。先週(5月27日~)は下げましたし、まだ下がるのでしょう。米金利の低下がどうにか株を支えている、という状況です。
米政策金利は来年(2020年)中ごろまでに3回程度の利下げがあるのではとされていますが、「年内2回」との声も出てきています。
(出所:Bloomberg)
■米金利が低下…米ドル高は終わったのか?
米金利低下の影響なのか、ドルストレート(米ドルが絡んだ通貨ペア)は米ドル安傾向ですね。米ドル高が終わったのでしょうか?
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 4時間足)
上昇基調が続いていたドルインデックスですが、チャート的に反転の兆しが出ており、ファンダメンタルズが追いついてきた格好です。
米ドル安が進むようだと、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)は売りにくくなりますね。
(出所:Bloomberg)
ゴールドも200日指数平滑移動平均線で、きれいに支えられて反転。このままゴールドが上昇していくなら、米ドル安の進行を示すものとなります。
今週(6月3日~)は、ECB(欧州中央銀行)理事会もありますが、ユーロが下げ止まる可能性もありそうですね。
(出所:Bloomberg)
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■米ドル/円のターゲットは107.75円、さらに下げれば104円台
明日はRBA(オーストラリア準備銀行[豪州の中央銀行])が開催され、利下げはほぼ確実。
利下げを控え、米中交渉の進展がなく、リスクアセットが売られているにもかかわらず、豪ドルは強い。
豪ドル/米ドルは0.70ドル以下では下げ渋る感じがあり、そのため、豪ドル/円も下げ渋っています。
大阪G20での米中首脳会談実現への期待は根強いようですし、米中貿易戦争の早期終結を見込んだ逆張り的な買いが入っているのかもしれませんね。
豪ドルでは、トランプ政権が豪州に対しての関税を検討したが見送った、との報道も出ていました。
今週の戦略はどう考えますか?
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:豪ドル/米ドル 日足)
来年(2020年)に向けて3回の米利下げが予想され、通商問題の拡大で株価も重い。
米10年債利回りは2.1%台へ低下し、米3カ月物との間で逆イールドにもなっている――米ドル/円を買う理由はありません。戻り売りでいいのでしょう。
【参考記事】
●米国債の逆イールドはリセッションを警告! 米ドル/円は中期的に100円目指す展開も(5月30日、西原宏一)
(出所:Bloomberg)
どこまで下がると見ていますか?
1月安値と4月高値で引いたフィボナッチの61.8%が107.75円。ここで一部を利益確定するつもりですが、さらに下げるようだと1月のフラッシュクラッシュ安値、104円台が視野に入ってくることになります。
(出所:Bloomberg)
(構成/ミドルマン・高城泰)
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