■サプライズだった米中貿易戦争「休戦」と米朝首脳会談
G20(20か国・地域首脳会合)では米中貿易戦争が「休戦」に。
5月から中断していた貿易交渉を再開し、追加関税は見送り、ファーウェイへの制裁も緩和ということで、G20前に、香港紙「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」がすっぱ抜いたとおりの結果でした。
最大のサプライズはG20直後の米朝首脳会談でしたね。トランプ米大統領がツイッターで呼びかけて実現した、という筋書きです。
2019年6月29日(土)、大阪市内でトランプ米大統領と習近平中国国家主席が会談した。5月から中断していた米中貿易交渉が再開し、米国による対中追加関税は見送りに。中国通信機器大手ファーウェイへの制裁も緩和された。写真は2017年11月の米中首脳会談時のもの (C)Bloomberg/Getty Images
トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は2019年6月30日(日)、韓国と北朝鮮の軍事境界線上がある板門店で会談した。写真は2018年6月の米朝首脳会談時のもの (C)Mustafa Kirazlig/Getty Images
ツイッター云々は演出であり、もちろん周到に準備していたのでしょう。ただし、何が決まったかというと、「また話そうね」ということくらいですよね。
四面楚歌だった金正恩氏のメンツをトランプさんが立ててあげた、という見方もできますね。肝心の非核化交渉はこれからです。
交渉の席を蹴ってからサプライズを演出して再交渉へ――米朝、米中ともにいつものトランプさんのやり方とも言えますね。
■G20でリスクオンも、米利下げ織り込み剥落なら株安へ
市場の反応はどうでしょうか。
週明けの東京市場では米ドル/円が上窓を開けて始まりました。日経平均株価も前場で383円の大幅高です。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 1時間足)
(出所:Bloomberg)
好材料であることは間違いないですが、長続きする感じはしません。ひとまずはニューヨーク勢がどう反応するか、確認したいですね。
2018年度末の海外勢による日本株保有比率は29%。アベノミクスが始まる直前、2012年度末以来の低水準だそうです。
また、2019年6月第3週には裁定取引の売り残が買い残を上回るまでになっており、日本株は需給的に下がりにくい環境にはあります。
日本に注目が集まるような材料が出ると、需給が一気に逆転して株高へ、というシナリオもありませんか?
注目したいのは米金利です。
米長期金利が2%を割ったのは、年内3回の米利下げを織り込む動きからでした。これを受けて「債券から株へ」と資金が動いていました。「年3回の米利下げを前提にした株高」です。
ところが、G20で好材料が出ましたから、年内3回の米利下げの織り込み度は低下するでしょう。
利下げ前提の株高も逆流するということになり、結果、株安から米ドル/円も下がるのではと思っています。
■NYダウは2万7000ドル台乗せ失敗で大きく下げる形に
今週7月4日(木)には参院選が公示されます。
争点のひとつとなる消費増税ですが、4月に話題となったのは自民党の萩生田幹事長代行による発言。「6月の日銀短観次第で消費増税の延期も」と話していました。
今朝、発表された6月短観は2期連続の悪化です。今さら延期はないというのがコンセンサスですが、もしも日銀短観を受けての延期があれば大きなサプライズ。
日本株は上昇すると思いますが、サプライズでもなければ本格上昇は厳しいのかもしれませんね。
結局は米株次第なのかもしれない。
NYダウは節目に近づいています。ポイントは2万7000ドル台に乗せられるかどうか。失敗するとトリプルトップやダイヤモンドフォーメーションの完成で、大きく下げる形となります。
トランプさんの交渉術は「アメとムチ」であり、グッドニュースとバッドニュースが繰り返すのが特徴。
今回はグッドニュースが出ましたから、次に何かあるとしたらバッドニュースではないでしょうか。
【参考記事】
●ハト派なFOMCで上昇したNYダウは岐路に! G20で米中合意!? ドル/円108円台で戻り売り(6月24日、西原宏一&大橋ひろこ)
(出所:Bloomberg)
コモディティ市場では勢いよく上がっていたゴールドが崩れ、逃避買いの入っていたビットコインも崩れてきました。ともに週足では長い上ヒゲとなっています。
ゴールドはファンド勢の買いポジションもた積み上がってきていましたので、しばらく下げるのかもしれません。そうなるとゴールドと相関しやすいユーロも弱いでしょうか。
(出所:Bloomberg)
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ビットコイン/円 週足)
「米ドルが弱い、ユーロも弱い」ということでユーロ/米ドルは動きにくそうですね。
■RBA利下げも総裁のスタンス転換で豪ドルジリ高か
原油市場では今日(7月1日)OPEC(石油輸出国機構)総会が、明日(7月2日)にはOPECプラス会合が開催されます。
すでに「来年3月まで減産延長」と報道されていますが、減産延長で原油市場は下値が支えられそうです。ただし、原油と米株の相関性は薄れています。
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その他のイベントでは明日(7月2日)がRBA(オーストラリア準備銀行[豪州の中央銀行])会合。
利下げの見込みですが、前回のコラムでも話したようにロウRBA総裁のタカ派発言以降、豪ドルは底堅くなっています。
0.70ドル台にしっかり乗せてきた豪ドル/米ドルはジリ高ではないでしょうか。
【参考記事】
●ハト派なFOMCで上昇したNYダウは岐路に! G20で米中合意!? ドル/円108円台で戻り売り(6月24日、西原宏一&大橋ひろこ)
(出所:TradingView)
■G20を受けたリスクオンは長くない。米ドル/円は戻り売りで
金曜日(7月5日)には米雇用統計もありますね。今週の戦略はどう考えますか?
G20を材料としたリスクオンの持続性はそう長くないと考えています。
今朝の日銀短観によれば2019年度想定レートは109.35円。これを見ても110円を抜くのは難しいでしょう。
米ドル/円の戻りは売っていきたいと思います。
(出所:TradingView)
(構成/ミドルマン・高城泰)
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