■強い米雇用統計で「0.5%利下げ」の可能性は急低下
先週(7月1日~)発表された米雇用統計は、強い数字でした。NFP(非農業部門雇用者数)は16万人増の予想に対して22.4万人の増加です。
強い米雇用統計を受けて、急落したのが「0.5%カット(利下げ)」の織り込み度。
7月31日(水)のFOMC(米連邦公開市場委員会)では0.25%の利下げが既定路線ですが、先週(7月1日~)は0.5%利下げの織り込みも40%くらいまで高まっていました。
それが米雇用統計以後、1.5%まで低下しています。
米雇用統計までは米株も強く、7月3日(水)には3指数(NYダウ、S&P500、ナスダック総合指数)がそろって史上最高値を更新。
しかし、西原さんが注目していたNYダウは2万7000ドルの節目まで、あとわずかなところで届きませんでした。
【参考記事】
●ハト派なFOMCで上昇したNYダウは岐路に! G20で米中合意!? ドル/円108円台で戻り売り(6月24日、西原宏一&大橋ひろこ)
●米中休戦と米朝会談はサプライズだったが、リスクオンは長くない。米ドル/円は戻り売り(7月1日、西原宏一&大橋ひろこ)
(出所:Bloomberg)
■パウエルFRB議長の議会証言が今週最大のイベントに
米株高を支えていたのはFOMCでの利下げ観測ですし、0.5%の利下げ期待から買われていた分が剥落する可能性も高い。
2万7000ドルは、2018年1月からずっと挑戦して届かない節目ですから、今回も終値ベースで2万7000ドルに乗せられないと下げ幅は大きくなりそうです。
7月10日(水)、7月11日(木)にはパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長の議会証言が予定されています。
市場との対話が上手ではない人だけに、不安もありますが……。
今週(7月8日~)最大のイベントとなりますね。
強い米雇用統計を受けて0.5%の利下げ期待が後退するなか、7月10日(水)、7月11日(木)のパウエルFRB議長の議会証言に注目が集まっている (C)Bloomberg/Getty Images News
■緊張する日韓関係の裏にイランの存在も
週末には香港デモが開催されました。今回は中国本土と地続きとなる九龍半島側での初開催。
さらに、イランは核合意違反となるウラン濃縮に着手しました。
これに対して米国がどう出るのか。6月には無人偵察機撃墜を巡って、トランプ米大統領が「攻撃10分前に止めた」とツイートし、緊張が走りました。
【参考記事】
●香港のデモ拡大が新たな不安要素に! 米ドル/円は104円台に向けての下落過程(6月13日、西原宏一)
●ハト派なFOMCで上昇したNYダウは岐路に! G20で米中合意!? ドル/円108円台で戻り売り(6月24日、西原宏一&大橋ひろこ)
軍事攻撃の可能性も指摘されていますが、まだ経済制裁にとどまるのではと想定しています。
イランの経済的な孤立化を促進させるのではないでしょうか。
日本は、韓国を「ホワイト国」から外した措置が話題ですが、背景には軍事利用も可能な素材が韓国経由でイランへ輸出される懸念もあるようです。
また、イランをもっとも警戒するのはイスラエルでしょうし、その動きも注目ですね。
香港やイラン、それに報復を示唆している韓国など、リスクオフの状況は変わりませんね。
■ドイツ銀行の経営不安とハト派色の強いECB総裁人事
ドイツ銀行関連のヘッドラインも目立ちます。第2四半期28億ユーロの損失、1.8万人のリストラ、株式の営業やトレーディング業務からの撤退――。
ドイツ銀行への経営不安はユーロ売りの材料ですが、赤字を埋めるため、海外資産を売却して本国に還流させるレパトリが出ればユーロ買い。
注目しているニュースですが、為替への影響は慎重に判断したいところです。
少なくとも、日本株にはネガティブな材料ですよね。ドイツ銀行は日本株も大量に保有していますし、株式業務からの撤退で売却されるとインパクトも大きそう。
今週(7月8日~)はETFからの分配金売りも7月8日(月)、7月10日(水)に集中して出るようで、これも日本株の需給を悪化させる要因です。
ユーロ圏では10月で任期満了となるドラギECB(欧州中央銀行)総裁の後任人事がほぼ固まりました。
指名されたのは、有力視されたバイトマン・ドイツ連銀総裁ではなくIMF(国際通貨基金)専務理事のラガルドさんです。
ハト派色の強い人選となったことで、市場はユーロ売りで反応しています。
【参考記事】
●G20サミット後のリスクオン相場は一時的! ECB総裁にラガルド氏指名でユーロ/円は?(7月4日、西原宏一)
ドラギECB総裁の後任としてバイトマン・ドイツ連銀総裁が有力視されていたが、7月2日(火)の欧州連合(EU)臨時首脳会議でラガルドIMF(国際通貨基金)専務理事が指名された。ハト派色の強い人選となったことで市場はユーロ売りで反応した (C)Visual China Group/Getty Images
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロVS世界の通貨 4時間足)
ユーロと相関しやすいゴールドも反落。1400ドル台が天井となり、このまま反落していくならユーロ/米ドルも下げやすい、ということでしょうか。
(出所:Bloomberg)
【CFD取引なら原油にも直接投資できる!】
●NYダウや金にも直接投資できるCFD取引会社を徹底比較!
欧州金利も低下していますが、米金利も基本的には下落傾向。コントラストが出やすいのはユーロ/円になりそうです。
■エルドアン大統領が中銀総裁を更迭。トルコリラは急落
今週(7月8日~)のイベントを見ると、パウエルさんの議会証言のほか、7月10日(水)にはカナダの政策金利発表が控えています。
今回は据え置きですし、年内の利下げは織り込まれていませんが、先週(7月1日~)のカナダ雇用統計が悪かったこともあり、政策スタンスの変更には要注意ですね。
驚いたのは、トルコ。エルドアン大統領が中銀総裁を更迭し、副総裁を昇格させました。任期途中での異例の交代。
利下げを求めるエルドアンさんと、それを拒否する中銀総裁という構図が続いていましたから、不満がたまっていたのでしょう。
週明けのトルコリラは2%以上の急落、18円台で始まっています。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:トルコリラ/円 30分足)
イランや香港などリスクオフの状況は変わりませんが、ユーロ売り材料が顕在化してきたこともあり、今週(7月8日~)はユーロ/円の下落に注目して、戻りを売っていきたいと思います。
(出所:TradingView)
(構成/ミドルマン・高城泰)
【ザイFX!編集部からのお知らせ】
ザイFX!で人気の西原宏一さんと、ザイFX!編集部がお届けする有料メルマガ、それが「トレード戦略指令!(月額:6600円・税込)」です。
「トレード戦略指令!」は登録後10日間無料解約可能なので、初心者にもわかりやすいタイムリーな為替予想をはじめ、実践的な売買アドバイスやチャートによる相場分析などを、ぜひ体験してください。
株主:株式会社ダイヤモンド社(100%)
加入協会:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)